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結びの章
出逢いの妙
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別に、他人を見下して罵って生きていこうとも、それによって生じるすべてを受け止められるのなら好きに生きればいいと思う。
けれど、自分がそうやって招いたことをについて不平不満を口にしたり泣き言を並べるのは違うのではないかと思うだけなのだ。
しかし、兄や両親は今頃きっと、自分達を批判する人間達こそが間違っていて、自分達は世間の無理解に苦しめられている<被害者>だと思っているであろうことが用意に想像できた。
実際、昔からの知人とかから伝わってくる。
「徹底的に争うつもりらしいよ」
と。
彼らにとっては、世間の無理解こそが<敵>なのだ。
確かにアオも、自分を理解する気のない人間に迎合する気は毛頭ない。しかしそれは、
『自分が正しく間違っているのは他人なのだから耳を貸す必要などない』
とか思っているわけでも、
『世間から虐げられている』
と思っているわけでもない。
他人が自分のことをどう思うかは、それはその人の<内心の自由>であってこちらからとやかく言うことではないと思っているだけなのだ。
自分と他人はあくまで別の存在であって、自分とは違う価値観を持って違う考えのもと行動するのも当然だと承知しているにすぎない。
その現実を認めてしまえれば、受け入れてしまえれば、そういうものだと割り切ってしまえれば、きっと今よりずっと楽に生きられるだろうに……
それが残念で仕方ない。
しかし、残念だと思いながらも、しかしそれをもし告げたりすれば兄や両親はそれすら<負け犬の遠吠え>だと嘲笑うに違いないことも分かっていた。
事実、この時、アオの兄と両親は、今回のことをアオが嗤いに来るのではないかと身構えていたりもしたのだけれど。
無論、アオにはそんなつもりはまったくない。彼女はただ、気付いてほしいだけだ。今回の事態を招いた一番の原因に。他人を嘲り見下し人を人とも思わないその考え方がそれを招いたことに。
けれど、アオがいくら言葉を重ねてもあの人達には届かないだろう。
エンディミオンがたとえ一時であってもその生き方を変えようとできたのに対して、あの人達にはどうしてそれができないのだろうか……?
それこそが<出逢いの妙>というものかも知れない。
アオが自らの人生を変えるきっかけとなった小説と、自らの成り立ちとこれからについて考え始める小学生の頃に出逢ったことや、他の誰の言葉にも耳を貸さなかったエンディミオンに届く言葉を発することができるさくらが出逢ったことのように。
おそらく、人生にはそういう出逢いは何度か訪れるものだと思われる。その出逢いを活かすも無駄にするも、自分なのだというのも事実なのだろう。
けれど、自分がそうやって招いたことをについて不平不満を口にしたり泣き言を並べるのは違うのではないかと思うだけなのだ。
しかし、兄や両親は今頃きっと、自分達を批判する人間達こそが間違っていて、自分達は世間の無理解に苦しめられている<被害者>だと思っているであろうことが用意に想像できた。
実際、昔からの知人とかから伝わってくる。
「徹底的に争うつもりらしいよ」
と。
彼らにとっては、世間の無理解こそが<敵>なのだ。
確かにアオも、自分を理解する気のない人間に迎合する気は毛頭ない。しかしそれは、
『自分が正しく間違っているのは他人なのだから耳を貸す必要などない』
とか思っているわけでも、
『世間から虐げられている』
と思っているわけでもない。
他人が自分のことをどう思うかは、それはその人の<内心の自由>であってこちらからとやかく言うことではないと思っているだけなのだ。
自分と他人はあくまで別の存在であって、自分とは違う価値観を持って違う考えのもと行動するのも当然だと承知しているにすぎない。
その現実を認めてしまえれば、受け入れてしまえれば、そういうものだと割り切ってしまえれば、きっと今よりずっと楽に生きられるだろうに……
それが残念で仕方ない。
しかし、残念だと思いながらも、しかしそれをもし告げたりすれば兄や両親はそれすら<負け犬の遠吠え>だと嘲笑うに違いないことも分かっていた。
事実、この時、アオの兄と両親は、今回のことをアオが嗤いに来るのではないかと身構えていたりもしたのだけれど。
無論、アオにはそんなつもりはまったくない。彼女はただ、気付いてほしいだけだ。今回の事態を招いた一番の原因に。他人を嘲り見下し人を人とも思わないその考え方がそれを招いたことに。
けれど、アオがいくら言葉を重ねてもあの人達には届かないだろう。
エンディミオンがたとえ一時であってもその生き方を変えようとできたのに対して、あの人達にはどうしてそれができないのだろうか……?
それこそが<出逢いの妙>というものかも知れない。
アオが自らの人生を変えるきっかけとなった小説と、自らの成り立ちとこれからについて考え始める小学生の頃に出逢ったことや、他の誰の言葉にも耳を貸さなかったエンディミオンに届く言葉を発することができるさくらが出逢ったことのように。
おそらく、人生にはそういう出逢いは何度か訪れるものだと思われる。その出逢いを活かすも無駄にするも、自分なのだというのも事実なのだろう。
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