クセの強い喪女作家のショタ吸血鬼育成日記

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
286 / 291
結びの章

出逢いの妙

しおりを挟む
別に、他人を見下して罵って生きていこうとも、それによって生じるすべてを受け止められるのなら好きに生きればいいと思う。

けれど、自分がそうやって招いたことをについて不平不満を口にしたり泣き言を並べるのは違うのではないかと思うだけなのだ。

しかし、兄や両親は今頃きっと、自分達を批判する人間達こそが間違っていて、自分達は世間の無理解に苦しめられている<被害者>だと思っているであろうことが用意に想像できた。

実際、昔からの知人とかから伝わってくる。

「徹底的に争うつもりらしいよ」

と。

彼らにとっては、世間の無理解こそが<敵>なのだ。

確かにアオも、自分を理解する気のない人間に迎合する気は毛頭ない。しかしそれは、

『自分が正しく間違っているのは他人なのだから耳を貸す必要などない』

とか思っているわけでも、

『世間から虐げられている』

と思っているわけでもない。

他人が自分のことをどう思うかは、それはその人の<内心の自由>であってこちらからとやかく言うことではないと思っているだけなのだ。

自分と他人はあくまで別の存在であって、自分とは違う価値観を持って違う考えのもと行動するのも当然だと承知しているにすぎない。

その現実を認めてしまえれば、受け入れてしまえれば、そういうものだと割り切ってしまえれば、きっと今よりずっと楽に生きられるだろうに……

それが残念で仕方ない。

しかし、残念だと思いながらも、しかしそれをもし告げたりすれば兄や両親はそれすら<負け犬の遠吠え>だと嘲笑うに違いないことも分かっていた。

事実、この時、アオの兄と両親は、今回のことをアオが嗤いに来るのではないかと身構えていたりもしたのだけれど。

無論、アオにはそんなつもりはまったくない。彼女はただ、気付いてほしいだけだ。今回の事態を招いた一番の原因に。他人を嘲り見下し人を人とも思わないその考え方がそれを招いたことに。

けれど、アオがいくら言葉を重ねてもあの人達には届かないだろう。

エンディミオンがたとえ一時いっときであってもその生き方を変えようとできたのに対して、あの人達にはどうしてそれができないのだろうか……?

それこそが<出逢いの妙>というものかも知れない。

アオが自らの人生を変えるきっかけとなった小説と、自らの成り立ちとこれからについて考え始める小学生の頃に出逢ったことや、他の誰の言葉にも耳を貸さなかったエンディミオンに届く言葉を発することができるさくらが出逢ったことのように。

おそらく、人生にはそういう出逢いは何度か訪れるものだと思われる。その出逢いを活かすも無駄にするも、自分なのだというのも事実なのだろう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...