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命の章
嘘
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さくらの実の家庭は、現在も崩壊状態にある。
それと同時に、崩壊した状態で安定しているとも言えるだろうか。
新しい命を迎えるという点においては大変に大らかで鷹揚な人達だったが、半面、自分達が受け入れた命が突然喪われるという点においては、脆い一面があったというだけだなのだ。
いや、命をとても大切に想うがあまりに壊れてしまったとも言えるのかもしれないが。
それでも、さくらがエンディミオンや洸のことを受け止められたのは、間違いなく両親の影響があるだろう。そういう部分については、さくらはすごく感謝している。
その上で、自分は、たとえ万が一のことがあったとしても両親のようにはならないようにしようと思っていた。
同時に、大丈夫だろうとも思っている。
両親は素晴らしい人達だったが、他人に迷惑を掛けまいとして全てを自分達だけで抱え込もうとしてしまうところがあった。そして壊れた。
さくらはそんな両親と違い、頼れる<他人>がいる。ほとんど家族にも等しい関係でありながら、同時にある程度の距離もある相手。
アオのことである。
さくらは、アオに心配させまいとして咄嗟に両親のことについて<嘘>を吐いたのだった。
嘘を吐いてしまったことについては、正直、申し訳ないと思っている。たぶん、本当のことを言っても受け止めてくれただろうとは思っている。けれど、つい、嘘を吐いてしまった。
弟が事故で亡くなったこときっかけに家庭が崩壊したことについても、あまり詳細には語っていない。弟が事故で亡くなったことや、それによって母親が精神を病んだことなどについて簡単に説明しただけだし、アオもあまり踏み込んだことは訊いてこなかった。
そうやって迷惑を掛けたくない。心配させたくないと思ってしまう辺りも、両親の気質を受け継いでいるのだろう。今も病室で延々と<他人からは見えない我が子>との暮らしを続けている母親や、そんな母親を庇うあまりに『さくらなら大丈夫だから』と放置した父親に対しては思うところもあるものの、それを恨んだ時期もあるものの、今はもうそんなに気にしていない。
なにしろ今の自分にはとても大切な<家族>と、限りなく家族に近い<頼りになる人>がいるのだから。
その一方で、すべてが完全に家族のように一体化してしまうと、万が一の時にどうしても影響が強く出て、場合によっては共倒れになってしまうこともあるだろう。それを避けるためにも、客観的に見てくれる人が要るのだと思われる。
さくらにとってはそれがアオであり、アオにとってもさくらがそうだった。
その点からも、アオがさくらのことを<嫁>と言いつつも、『自分がもし男だったらお前と結婚したかったと思う』と言いながらも、実際には同性婚のようなことまで踏み込んでこないのは、双方にとって良い距離感と言えるのかもしれない。
それと同時に、崩壊した状態で安定しているとも言えるだろうか。
新しい命を迎えるという点においては大変に大らかで鷹揚な人達だったが、半面、自分達が受け入れた命が突然喪われるという点においては、脆い一面があったというだけだなのだ。
いや、命をとても大切に想うがあまりに壊れてしまったとも言えるのかもしれないが。
それでも、さくらがエンディミオンや洸のことを受け止められたのは、間違いなく両親の影響があるだろう。そういう部分については、さくらはすごく感謝している。
その上で、自分は、たとえ万が一のことがあったとしても両親のようにはならないようにしようと思っていた。
同時に、大丈夫だろうとも思っている。
両親は素晴らしい人達だったが、他人に迷惑を掛けまいとして全てを自分達だけで抱え込もうとしてしまうところがあった。そして壊れた。
さくらはそんな両親と違い、頼れる<他人>がいる。ほとんど家族にも等しい関係でありながら、同時にある程度の距離もある相手。
アオのことである。
さくらは、アオに心配させまいとして咄嗟に両親のことについて<嘘>を吐いたのだった。
嘘を吐いてしまったことについては、正直、申し訳ないと思っている。たぶん、本当のことを言っても受け止めてくれただろうとは思っている。けれど、つい、嘘を吐いてしまった。
弟が事故で亡くなったこときっかけに家庭が崩壊したことについても、あまり詳細には語っていない。弟が事故で亡くなったことや、それによって母親が精神を病んだことなどについて簡単に説明しただけだし、アオもあまり踏み込んだことは訊いてこなかった。
そうやって迷惑を掛けたくない。心配させたくないと思ってしまう辺りも、両親の気質を受け継いでいるのだろう。今も病室で延々と<他人からは見えない我が子>との暮らしを続けている母親や、そんな母親を庇うあまりに『さくらなら大丈夫だから』と放置した父親に対しては思うところもあるものの、それを恨んだ時期もあるものの、今はもうそんなに気にしていない。
なにしろ今の自分にはとても大切な<家族>と、限りなく家族に近い<頼りになる人>がいるのだから。
その一方で、すべてが完全に家族のように一体化してしまうと、万が一の時にどうしても影響が強く出て、場合によっては共倒れになってしまうこともあるだろう。それを避けるためにも、客観的に見てくれる人が要るのだと思われる。
さくらにとってはそれがアオであり、アオにとってもさくらがそうだった。
その点からも、アオがさくらのことを<嫁>と言いつつも、『自分がもし男だったらお前と結婚したかったと思う』と言いながらも、実際には同性婚のようなことまで踏み込んでこないのは、双方にとって良い距離感と言えるのかもしれない。
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