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家憑き童子の章
デリバリー
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昼になり、さくらは、片付けは一旦休んで昼食にすることにした。
するとそこに、エンディミオンが自分の部屋から出てくる。
ダンピールである彼にとっては、完全に寝付いてしまう睡眠は、四時間もとれば十分だった。あとは手が空いて時間ができた時に仮眠をとるだけで済む。
「どうする? ピザでも頼む?」
そう尋ねるさくらに、エンディミオンは、
「ああ……好きにしろ……」
と素っ気ない。
でもさくらも洸もまったく気にしていなかった。
ピザのデリバリーを頼むと、二十分ほどで玄関のインターホンが鳴らされた。
「は~い」
さくらがインターホンに出ると、
「スマイルピザで~す」
画面にピザを抱えた女性配達員の姿が映った。
「はい、今行きます」
さくらが玄関に向かうと、洸も一緒についてくる。幼い子供が常に母親のあとをついて回ろうとするあれのようだ。
玄関のドアを開けて、温室部分に出た。すると温室部分の上半分が透明になったドアの前で、配達員が少し戸惑った様子で待っていた。少々変わった造りの新しい家に驚いているようだ。
インターホンは温室のドアの脇についている。しかも温室のドアにも鍵がついていて、来訪者はそこで待つことになる。
リビングがいきなり丸見えにならないようにするための工夫だ。
「ピザ~、ピザ~♡」
ピザを受け取るさくらの横で、洸が嬉しそうに飛び跳ねていた。そんな様子に女性配達員が微笑ましそうに笑顔になる。
見た目以上にあどけない洸の姿は、確かに愛らしいと言ってもいいものだっただろう。
リビングに戻り、半分以上の荷物が片付いたことでそれなりに広くなったそこに三人で座って、ピザを食べた。
その光景は、知らない人間が見れば若い母親とその子供達にも見えるに違いない。
しかしそこにいる者は誰一人血が繋がっておらず、しかも一人はダンピール、一人はウェアウルフである。
不思議な光景だった。
なのに、とても穏やかで、心があたたかくなるものだった。
「よし、じゃあ、残りも片付けますか」
腹ごしらえも済み、さくらがそう声を上げると、
「お~っ!」
洸が笑顔で腕を振り上げた。エンディミオンはもちろん仏頂面のままだったが、決して嫌がっている訳じゃないのが何故か分かる。
そうして昼からは三人で手分けして一気に片付けを終わらせ、日が傾き始めた頃にはリビングはすっきりとなり、さくらが掃除機をかける。
その後、ようやく<住まい>らしくなった家で、さくらはキッチンに立ち、夕食の唐揚げを作っていた。
「さすがに油使ってて危ないから、待っててね」
「は~い♡」
洸が素直に言うことを聞いているのを、エンディミオンは黙って見守っていたのだった。
するとそこに、エンディミオンが自分の部屋から出てくる。
ダンピールである彼にとっては、完全に寝付いてしまう睡眠は、四時間もとれば十分だった。あとは手が空いて時間ができた時に仮眠をとるだけで済む。
「どうする? ピザでも頼む?」
そう尋ねるさくらに、エンディミオンは、
「ああ……好きにしろ……」
と素っ気ない。
でもさくらも洸もまったく気にしていなかった。
ピザのデリバリーを頼むと、二十分ほどで玄関のインターホンが鳴らされた。
「は~い」
さくらがインターホンに出ると、
「スマイルピザで~す」
画面にピザを抱えた女性配達員の姿が映った。
「はい、今行きます」
さくらが玄関に向かうと、洸も一緒についてくる。幼い子供が常に母親のあとをついて回ろうとするあれのようだ。
玄関のドアを開けて、温室部分に出た。すると温室部分の上半分が透明になったドアの前で、配達員が少し戸惑った様子で待っていた。少々変わった造りの新しい家に驚いているようだ。
インターホンは温室のドアの脇についている。しかも温室のドアにも鍵がついていて、来訪者はそこで待つことになる。
リビングがいきなり丸見えにならないようにするための工夫だ。
「ピザ~、ピザ~♡」
ピザを受け取るさくらの横で、洸が嬉しそうに飛び跳ねていた。そんな様子に女性配達員が微笑ましそうに笑顔になる。
見た目以上にあどけない洸の姿は、確かに愛らしいと言ってもいいものだっただろう。
リビングに戻り、半分以上の荷物が片付いたことでそれなりに広くなったそこに三人で座って、ピザを食べた。
その光景は、知らない人間が見れば若い母親とその子供達にも見えるに違いない。
しかしそこにいる者は誰一人血が繋がっておらず、しかも一人はダンピール、一人はウェアウルフである。
不思議な光景だった。
なのに、とても穏やかで、心があたたかくなるものだった。
「よし、じゃあ、残りも片付けますか」
腹ごしらえも済み、さくらがそう声を上げると、
「お~っ!」
洸が笑顔で腕を振り上げた。エンディミオンはもちろん仏頂面のままだったが、決して嫌がっている訳じゃないのが何故か分かる。
そうして昼からは三人で手分けして一気に片付けを終わらせ、日が傾き始めた頃にはリビングはすっきりとなり、さくらが掃除機をかける。
その後、ようやく<住まい>らしくなった家で、さくらはキッチンに立ち、夕食の唐揚げを作っていた。
「さすがに油使ってて危ないから、待っててね」
「は~い♡」
洸が素直に言うことを聞いているのを、エンディミオンは黙って見守っていたのだった。
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