上 下
182 / 291
けもけもの章

何か気になること

しおりを挟む
「しかし、さっきのは何だったんだろうな」

アオのマンションに戻ると、寝ているあきらを抱いたまま座ったさくらにそう話しかけた。

「何でしょうね? 洸にとって何か気になることがあったんでしょうか」

戸惑ったようにさくらが応えると、そんな二人にミハエルが言った。

「もしかすると、本当に洸にゆかりがある家だったのかもしれないよ」

と。

「どういう意味?」

問い掛けるアオに、彼は応えた。

「実は、あの家の床下、たぶん基礎の下だと思うけど、何か空間があったんだ」

その言葉に、アオとさくらがハッとなる。

「もしかして、キッチンで床を踏み鳴らしてたのは…?」

「うん。音の反響で地面の下の様子を探ってみたんだよ」

「そんなこともできるんだ…?」

「まあ、音、と言うか振動を感じ取るだけだからね。理屈の上では人間だってできる人はいると思うよ」

サラッと応えるミハエルに、しかしさくらは戸惑っていた。

「でも、それが洸と何の関係があるんでしょう?」

そんなさくらに、彼も、

「さすがにそこまでは今の段階じゃ分からない。だけど明らかに不自然な空洞だった。もしかするとあの家が建つ前にあった家の地下室とかかもしれない。

あの家が建てられてから六十年ということは、その前に建ってた家は先の大戦の時期にあったものかもね。となれば、<防空壕>の跡っていう可能性もあるかな」

「防空壕……!?」

「確かに、家の床下を掘り下げて防空壕を作った家も戦時中にはあったと聞きます。それの名残……?」

「うん。可能性はあるね。実は僕も、アオが仕事に集中して暇だったりした時にいろいろこの国について調べてみたんだ。それで、防空壕のことも知ったんだけど、正直、防空壕とは名ばかりの一時避難場所も多かったみたいだね。

ただ、あの家の地下にある空間は、返ってきた振動の感じからすると割と強固な壁を持った物みたいだ。だから、上の建物は空襲とかで焼け落ちたけどそこだけは残って、でもその土地を再利用した人はそれに気付かなくて、もしくは気付いてた上でそのまま今の家を建てたのかもしれない。

あの家そのものはこれといって特別なものは何もなかった。何かがあるとすれば、たぶん、その地下空間だと思う」

ミハエルの説明を聞いて、アオの頭に浮かんだものがあった。そして彼女はそれを言葉にする。

「もしかして、そこに、洸のご先祖様が眠ってたりする……?

ほら、家が焼け落ちて防空壕だけが残ったりしたら、場合によっては防空壕に避難したまま亡くなってたりってこともありえるじゃん」

「……確かに、その可能性は……!」

ミハエルの発見から得た考えに、アオとさくらは気持ちが高揚するのを感じていたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...