クセの強い喪女作家のショタ吸血鬼育成日記

京衛武百十

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ほのぼのの章

満喫

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シリアスな背景を抱え、他人からは決してほのぼのに見えなくとも、アオもさくらも、<ほのぼのとした日常>を送ることができている。

彼女達にとってそれは、十分、ほのぼのとしてるのだ。他人からどう思われようと関係ない。

そもそも、現実の世界で、

<何一つ嫌なことが起こらないほのぼのとした日常>

など、送れるはずがない。

この事実が受け止められているなら、アニメの出来一つで、アニメの内容一つで、他人を罵るようなことをする必要などなくなるのだろう。

自身の作品がボロクソに貶されているくらいでイライラする必要もなくなるのだろう。

言いたい奴には言わせておけばいい。作品を作る側として必要なのは、

<自分が納得できる出来>

になるかどうかだけが問題なのだとアオは思っている。

ただ、それが難しい。書き上げた時には、

『これ以上のものは自分には書けない』

と思ったりすることもあるのに、しばらくして読み返す機会があると、

『ここはこうすればよかった。あそこはこうするべきだった』

と思ってしまったりする。

だが、そういう想いがあればこそ、

『よし、次こそは!』

とも思える。

それが彼女の創作の原動力だった。

移り気で身勝手な読者や視聴者の言うことなどどうでもいい。それを気にしていては、自身の創作の軸がぶれる。自身が『これだ!』と思えたものを提供して受け入れられなかったら、それはそれで構わない。

そんな風に思える彼女だからこそ、この現実の世界の中で<ほのぼの>できる。

そしてそれはさくらも同じだ。上司に何を言われても、それが具体的に意味を伴ったものであればそれを実行に移し、ただの、

『憂さ晴らしの為の八つ当たりだな』

と感じた時には右から左へと聞き流しておく。

だからエンディミオンが不穏な様子になっても、それを制することができる。

彼が<嫌な上司>を痛めつけたところで、さくらの気が晴れることはない。むしろ、エンディミオンにそんなことをさせてしまった自分自身を責めるだけだ。

これでは<ほのぼの>できない。

彼女は、自分の為にであっても、エンディミオンが誰かを傷付けることは望まない。

そんなことをされたら、すべてが台無しだ。

今はただ、ホットプレートの上で焼けた肉を次々に頬張っていく彼の姿を見ているだけで彼女は<ほのぼの>できた。

『私は今、幸せなんだよ。エンディミオン……』

その想いが、ふわりと顔に出る。あたたかくて柔らかい笑顔だった。

「……なんだその顔は、間抜け面しやがって……!」

肉を口に突っ込みながらそう言った彼に、

「そう? そうかな」

とさくらは応えたのだった。



それと同じころ、アオはアオで、ミハエルと一緒にうどんをすすり、ほのぼのとした時間を満喫していたのである。

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