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ほのぼのの章

プロット

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園児達をバスに避難させ、先に逃がしたヴァーミリオンは、動物的な直感に従ってヴァルシュピニアと戦う為に自分は現場に残った。

両親を亡くした自分の母親代わりになってずっと寄り添ってくれた女性職員の制止を振り切って。

ただ、テーマ―パーク内での戦いを優位に進めたヴァーミリオンだったが、やはり経験不足からくる詰めの甘さが出てしまい、あと一歩というところでヴァルシュピニアを取り逃がしてしまったのだった。



で、ここから先がアオの見た夢そのままの展開になり、寺院や個人の邸宅や学校や工場の敷地を駆け抜けてヴァルシュピニアを追い、そのまま旅に出ることになるのだが……



「……ダメだ~。ありきたりすぎてピンとこない……また何か思いついた時にそれと組み合わせてってとこかな……」

ある程度プロットを書き進めたところで、アオは苦々しく呟いて手を止めた。

自分で書いていて『面白い』と思えればそのまま作品として書き進めたりもするものの、今回はそうはならなかった。

調子が良いとか悪いとかじゃなくて、これ自体がいつものことだった。

だから特に気にすることもなく、保存して終了する。

そうすることで、また何か別のアイデアを思い付いたり夢に見たりした時にピンと来ることがあれば続きを書いたりすることもあるものの、そのまま完全にお蔵入りになることも決して少なくない。

プロットだけで言えば、およそ一生かけても使い切れないほどのストックがあった。

しかし、<作品>として日の目を見ることになるのはそのごく一部に過ぎない。担当編集であるさくらが目にすることになるものですら、その間に思い付いたプロットの十分の一に過ぎなかった。

アオは、とにかく自分の思い付いたものを形にするタイプの作家だった。故に、

<読者の声>

には耳を傾けない。それをしていると何を書いていいのか分からなくなるからだ。

アオは言う。

「読者や視聴者の声に耳を傾けろなどと言うが、それと同時に最近よく目にするのは、『腐女子の意見を取り入れたら作品がダメになる』というやつだ。

おかしいではないか。<腐女子>と言えど読者や視聴者には違いないだろう? その意見を取り入れたら作品がダメになるというのであれば、『読者や視聴者の声に耳を傾けるのは間違いだ』ということになる。

にも拘わらず、『読者や視聴者の声に耳を傾けろ』などと言う。

要するに、<読者>や<視聴者>などといういかにもな言葉に置き換えちゃいるが、結局は『自分の意見を取り入れてほしい』と言いたいだけではないか。

自分個人のことを<読者>だ<視聴者>だなどと、主語を大きくしたがるのも人間の癖だ。それに振り回されてて作品作りなどしてられるか……!」

と。

それをネット上にでも発信すればきっとそれこそ大炎上するだろう。

だがそうやって過剰に反応するのはそれが図星であるからだとアオは思っていた。

人間が感情的になるのは、たいていが痛いところを突かれたからであると知っているが故に。

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