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ほのぼのの章

はるうらら

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「あ~、せっかくの陽気だってのに憂鬱極まりないな~」

目薬を差しながらアオはボやいていた。

「大変だね。花粉症」

ミハエルが困ったような表情で話しかける。

「まったくだよ。なんでこうなるのかね」

部屋の外は素晴らしい好天に恵まれて春爛漫という様子にも拘らず、それを部屋の中から見るアオの視線は恨めしい。

とは言っても、アオの花粉症はそれほど重度のものではなかった。市販の抗アレルギー目薬を点眼するだけで、目の痒みだけでなく鼻のむずむずも治まるのだから。

それでも、微妙な違和感にずっと曝されているのは不愉快極まりなかったのだ。

その所為で原稿も捗らない。

さくらに指摘された部分の差し替えを考えているのだが、思い付かないのである。

「ああもう。筆が早いだけが私の取り柄なのに……!」

そうだった。さくらに、

『好き勝手に書いたものの中から<商品>になりそうなものを選んでもらっている』

というほどに、アオは次々と作品を生み出していた。

もっとも、その殆どは<商品>にはならないとしてお蔵入りになるのだが。

しかしその一部については、Web上で無料公開もしている。

が、

『なるほどこれじゃ商品にならないと見做されるわけだ』

とアオ自身が納得してしまうほど、閲覧数は伸びなかった。仮にもプロの作家でもあるにも拘わらず。彼女の作品こそが好きだというコアなファンが見てくれているだけというのがよく分かる。

実はそれも、アンチと呼ばれる人間にとっては格好の攻撃材料だった。

『これが市場の正当な評価wwwwww』

『さすが出版社のゴリ押し作家様wwwwww』

という調子で。

だがアオはそういう罵詈雑言については一切を受け流していた。<エゴサーチ>なるものもほとんどしない。そんなことをすると嫌な気分になるというのももちろんあるが、そもそも他人の評価にさほど興味がないのだ。

商業デビューした当初はさすがに気になったりもしたものの、高評価を上回る悪評に、

『さもありなん』

と納得してしまい、それ以降は基本的に見なくなってしまったのである。

あまりの集中攻撃ぶりに心配になったファンなどが、

『こんなこと言われてます』

と教えてくれるのを見聞きするだけだ。

しかしアオはそんなファンに対して、

『いろんな意見があるのはむしろ健全ですよ。私は自分が面白いと思うものを書いてるだけです。私の感性とは合わない人が『面白くない』と感じるのは当然です。

他人の感性なんて関係ありません。自分が面白いと思ったものを楽しめばいいんです』

と返していた。

アオのファン達は、そういう彼女の人間性こそを好きでいてくれているのかもしれない。

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