104 / 291
ナイトストーカーの章
曖昧模糊
しおりを挟む
しかし、もし、このストーカー女性の祖父母が彼女の言いなりになって来ただけだったことが問題の原因であったとしても、だからといって祖父母をただ責めれば自体が解決するかとなれば、それもきっと違うのだろう。
なにしろ祖父母がそのような接し方しかできなかったのは、<祖父母の親>が、具体的にどのように対処すればいいのかを教えてくれていなかったことが原因なのだろうから。
ただただ、
『他人に迷惑を掛けるな』
『善行を心掛けろ』
と、実に抽象的で曖昧なことしか言ってこなかったが故に、
『他人に迷惑さえかけなければいい』
『自分が善行だと思うことをただすればいい』
と思い込んできたのだから。
なにが、
『他人に迷惑を掛けないことになるのか?』
教わらなかったし、そもそも、
『他人に一切迷惑を掛けることなく生きることなど本当に可能なのか?』
という大前提からして何も教わってこなかったのである。
また、
『善行とは何か?』
『何をもって善行と言えるのか?』
についても曖昧なままだった。
『その程度のことは常識で考えたら分かる』
とはよく言われることだが、では、
『<常識>とはなんなのか?』
と問われて明確に答えられる者が果たしてどれだけいるのだろうか?
『大人になれば結婚し子供を生むのが常識』
かつてはそう言われてきた筈だが、今ではその常識はもはや通じなくなりつつある。
さらには、<努力>や<根性>がただもてはやされ、それさえあればどんな問題でも解決すると信じられた時代は、スポーツなどでの<科学トレーニング>と<基礎的な身体能力>の前に敗れ去って遠い過去となった。
なにしろ、
『科学的医学的に筋の通ったトレーニングを基に努力する』
ようになったことで、多数のアスリートが世界を相手に互角の勝負をできるようになったのだから。
あくまで、
『具体的に効果のある努力をし、かつその努力を続けられるメンタリティを養う』
ことにより、才能を効果的に伸ばすことができるようになったと言えるのだろう。
かように、<常識>と言われるもの自体が実に曖昧で、主体性に乏しく、所詮は、
『なんとなくそうかな』
というぼんやりとした概念に過ぎないのだ。
そんなものを基に考えて何が分かるというのだろうか。
そういう曖昧で具体性に欠けることを頼りに生きてきたが故に、問題を突き付けられても具体的に対処できなかったのは、むしろ当然なのかもしれない。
これで<親としての責任>を問う方が無理がある。なにしろそれを問おうとすれば、代々の親にそれぞれ責任を問う必要が出てくるのだから。
だからミハエルもアオも、そういう意味での責任を問うつもりはなかった。
それを問うたところで、
「じゃあどうすればよかったの?」
と泣かれるのが目に見えていたからである。
なにしろ祖父母がそのような接し方しかできなかったのは、<祖父母の親>が、具体的にどのように対処すればいいのかを教えてくれていなかったことが原因なのだろうから。
ただただ、
『他人に迷惑を掛けるな』
『善行を心掛けろ』
と、実に抽象的で曖昧なことしか言ってこなかったが故に、
『他人に迷惑さえかけなければいい』
『自分が善行だと思うことをただすればいい』
と思い込んできたのだから。
なにが、
『他人に迷惑を掛けないことになるのか?』
教わらなかったし、そもそも、
『他人に一切迷惑を掛けることなく生きることなど本当に可能なのか?』
という大前提からして何も教わってこなかったのである。
また、
『善行とは何か?』
『何をもって善行と言えるのか?』
についても曖昧なままだった。
『その程度のことは常識で考えたら分かる』
とはよく言われることだが、では、
『<常識>とはなんなのか?』
と問われて明確に答えられる者が果たしてどれだけいるのだろうか?
『大人になれば結婚し子供を生むのが常識』
かつてはそう言われてきた筈だが、今ではその常識はもはや通じなくなりつつある。
さらには、<努力>や<根性>がただもてはやされ、それさえあればどんな問題でも解決すると信じられた時代は、スポーツなどでの<科学トレーニング>と<基礎的な身体能力>の前に敗れ去って遠い過去となった。
なにしろ、
『科学的医学的に筋の通ったトレーニングを基に努力する』
ようになったことで、多数のアスリートが世界を相手に互角の勝負をできるようになったのだから。
あくまで、
『具体的に効果のある努力をし、かつその努力を続けられるメンタリティを養う』
ことにより、才能を効果的に伸ばすことができるようになったと言えるのだろう。
かように、<常識>と言われるもの自体が実に曖昧で、主体性に乏しく、所詮は、
『なんとなくそうかな』
というぼんやりとした概念に過ぎないのだ。
そんなものを基に考えて何が分かるというのだろうか。
そういう曖昧で具体性に欠けることを頼りに生きてきたが故に、問題を突き付けられても具体的に対処できなかったのは、むしろ当然なのかもしれない。
これで<親としての責任>を問う方が無理がある。なにしろそれを問おうとすれば、代々の親にそれぞれ責任を問う必要が出てくるのだから。
だからミハエルもアオも、そういう意味での責任を問うつもりはなかった。
それを問うたところで、
「じゃあどうすればよかったの?」
と泣かれるのが目に見えていたからである。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる