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ナイトストーカーの章
昇華
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女性はどうやら、自身の欲求を上手く昇華できないタイプのようだ。
人間は普通、自分の欲求が何でもかんでも叶うわけでないことを経験によって学び、それを何らかの形で昇華することで折り合いをつける方法を身に付けていくはずなのだが、この女性はそれを学ぶ機会を得られなかったか、昇華する方法を身に付けることを阻害されてきたかしたのだろう。
エンディミオンが目をつけた女性は、まさにミハエルを探し求める女性だった。
ある商社でOLをしている彼女は、仕事が終わるとミハエルの姿を求めてあちこちを彷徨い歩いていた。
するどい眼光で何一つ見落とすまいと周囲を窺うその姿は、さながら獲物を追い求めるハンターのような風情さえあった。
それこそ、外国人観光客らしい親子連れが金髪の子供を連れていようものなら、射ぬかんとするがの如く視線を向ける様子に、ただならぬものを感じてたまたま通りがかった無関係な人間がギョッとなることさえあった。
もはや人でも殺しかねない雰囲気だ。
むろん、エンディミオンはそこまでは知らないが、しかし凄まじい負のオーラを放ちつつ自身の爪をボロボロに噛み砕いていくその姿からは、十分に異様さが伝わってくる。
「くくく……」
その後しばらくして、打ち合わせを終えたさくらがアオのマンションから出てくると、エンディミオンがいささか邪悪な笑みを浮かべていることに気付き、
「どうしたの…?」
と少々不安げに尋ねる。
すると彼はますます邪悪な笑みを浮かべて言った。
「いや、実は面白い人間を見かけてな」
「面白い人間……?」
「ああ。実に人間らしい人間だよ。己の執着に我を忘れて顔を歪ませる人間だ。あれぞまさに<人間の本性>だな」
「嫌な言い方だね……」
「そうか? しかし事実だと思うが? オレが見てきた人間共はだいたいが似たり寄ったりだったしな」
嬉しそうに語る彼に、さくらは寂しそうに目を伏せる。そして、
「……それは、私もそうってこと……?」
と問い掛けた。
「あ……いや、それは……」
さくらのその言葉に、エンディミオンは口ごもる。
しかしそんな自分に気付いて、キッと眉を吊り上げ、
「ああ、そうだ。お前もどうせそんな人間の一人だ…! いざとなれば醜い本性をさらけ出して他人を攻撃する。
人間とはそういうものだ。オレはそんな人間を腐るほど見てきた。
オレが見かけたあいつも、どうせ近々やらかすに違いない。見ていろ。きっと楽しめるぞ……!」
煽るようにそう言い直した。
「……」
だが、さくらはますます悲しそうな表情をするだけで、彼の煽りにはまったく乗ってこなかったのだった。
人間は普通、自分の欲求が何でもかんでも叶うわけでないことを経験によって学び、それを何らかの形で昇華することで折り合いをつける方法を身に付けていくはずなのだが、この女性はそれを学ぶ機会を得られなかったか、昇華する方法を身に付けることを阻害されてきたかしたのだろう。
エンディミオンが目をつけた女性は、まさにミハエルを探し求める女性だった。
ある商社でOLをしている彼女は、仕事が終わるとミハエルの姿を求めてあちこちを彷徨い歩いていた。
するどい眼光で何一つ見落とすまいと周囲を窺うその姿は、さながら獲物を追い求めるハンターのような風情さえあった。
それこそ、外国人観光客らしい親子連れが金髪の子供を連れていようものなら、射ぬかんとするがの如く視線を向ける様子に、ただならぬものを感じてたまたま通りがかった無関係な人間がギョッとなることさえあった。
もはや人でも殺しかねない雰囲気だ。
むろん、エンディミオンはそこまでは知らないが、しかし凄まじい負のオーラを放ちつつ自身の爪をボロボロに噛み砕いていくその姿からは、十分に異様さが伝わってくる。
「くくく……」
その後しばらくして、打ち合わせを終えたさくらがアオのマンションから出てくると、エンディミオンがいささか邪悪な笑みを浮かべていることに気付き、
「どうしたの…?」
と少々不安げに尋ねる。
すると彼はますます邪悪な笑みを浮かべて言った。
「いや、実は面白い人間を見かけてな」
「面白い人間……?」
「ああ。実に人間らしい人間だよ。己の執着に我を忘れて顔を歪ませる人間だ。あれぞまさに<人間の本性>だな」
「嫌な言い方だね……」
「そうか? しかし事実だと思うが? オレが見てきた人間共はだいたいが似たり寄ったりだったしな」
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「……それは、私もそうってこと……?」
と問い掛けた。
「あ……いや、それは……」
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しかしそんな自分に気付いて、キッと眉を吊り上げ、
「ああ、そうだ。お前もどうせそんな人間の一人だ…! いざとなれば醜い本性をさらけ出して他人を攻撃する。
人間とはそういうものだ。オレはそんな人間を腐るほど見てきた。
オレが見かけたあいつも、どうせ近々やらかすに違いない。見ていろ。きっと楽しめるぞ……!」
煽るようにそう言い直した。
「……」
だが、さくらはますます悲しそうな表情をするだけで、彼の煽りにはまったく乗ってこなかったのだった。
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