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エンディミオンの章
リラックス
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『別に無差別殺人鬼って訳でもないんだ……』
エンディミオンの言葉でそう納得できたさくらだったが、それでも幼い子供まで何人も殺してきたのが事実なら、決して油断できる相手ではないし、褒められたものでもないだろう。むしろ強い非難を受けるべき存在だと思われる。
でも―――――
「あの……そろそろ上がりますから…」
遠慮がちにそう声を掛けると、
「ああ、すまん」
そう言って彼が脱衣所から出て行ったのが気配で分かった。
それを感じ取って、更に用心しながらそっとドアを開けて様子を窺って、本当にいないのを確認して脱衣所に立った。
緊張感は多少マシになったものの、恐怖は随分とマシになったものの、やっぱり気を許すまではいかない。
『そうだよ。心までは許しちゃいけない…!』
体を拭いて下着をつけつつ、彼女はそう考えていた。
『私が案内しようと思えるようになるまでは先生に会いに行かないっていうのが本当なら、とにかく引き延ばせるだけ引き伸ばさなきゃ……』
とも思った。
その為にも、自分のところに留めておかないといけない。
恐怖が収まった分、素直にそう思えた。
どこまで引き延ばせるかは分からないものの、時間を稼げばその間に何か状況が変わるかもしれない。
『そうだ…! 先生にこのことを伝えて、吸血鬼とかいうのと離れてもらったらいいよね…!』
ということが頭に浮かんだ。
だが、部屋着であるスウェットに着替えて脱衣所から出たさくらに、やはりエンディミオンは冷たい視線を向けながら、
「あれこれ小細工を考えてるかも知れないが、無駄だぞ。オレは決して吸血鬼を逃さない。お前と先生とやらが協力的に振る舞ってくれるなら、乱暴なことはしないがな」
などと釘を刺してきた。
「わ…分かってますよ……」
と応えたさくらだったが、自分でも思いのほか、落ち着けているのが分かる。
だから、明日も仕事があるし、髪を乾かして寝る前の肌のケアを済ませると、今日のところはこれで休むことにした。
「じゃあ、私は寝ますから…」
そう告げて、リビングの一角を占めているベッドに横になる。灯は点けっぱなしだが、彼女は明るくても寝られる性質なので、
「おやすみなさい」
そう言って目を瞑った。
正直、部屋が明るいのはともかく彼がいる緊張感でとても寝られないだろうと思っていたのに、風呂に入って体がリラックスしたのか、自分でも驚くぐらいにすっと眠れてしまった。
すうすうと寝息を立てる彼女をソファーから眺めながら、
「あれだけビクビクしていたクセに、大したタマだ……」
などと、やや呆れたようにエンディミオンが呟いた。しかしその表情は、ほんのわずかだが、穏やかになったようにも見えたのだった。
エンディミオンの言葉でそう納得できたさくらだったが、それでも幼い子供まで何人も殺してきたのが事実なら、決して油断できる相手ではないし、褒められたものでもないだろう。むしろ強い非難を受けるべき存在だと思われる。
でも―――――
「あの……そろそろ上がりますから…」
遠慮がちにそう声を掛けると、
「ああ、すまん」
そう言って彼が脱衣所から出て行ったのが気配で分かった。
それを感じ取って、更に用心しながらそっとドアを開けて様子を窺って、本当にいないのを確認して脱衣所に立った。
緊張感は多少マシになったものの、恐怖は随分とマシになったものの、やっぱり気を許すまではいかない。
『そうだよ。心までは許しちゃいけない…!』
体を拭いて下着をつけつつ、彼女はそう考えていた。
『私が案内しようと思えるようになるまでは先生に会いに行かないっていうのが本当なら、とにかく引き延ばせるだけ引き伸ばさなきゃ……』
とも思った。
その為にも、自分のところに留めておかないといけない。
恐怖が収まった分、素直にそう思えた。
どこまで引き延ばせるかは分からないものの、時間を稼げばその間に何か状況が変わるかもしれない。
『そうだ…! 先生にこのことを伝えて、吸血鬼とかいうのと離れてもらったらいいよね…!』
ということが頭に浮かんだ。
だが、部屋着であるスウェットに着替えて脱衣所から出たさくらに、やはりエンディミオンは冷たい視線を向けながら、
「あれこれ小細工を考えてるかも知れないが、無駄だぞ。オレは決して吸血鬼を逃さない。お前と先生とやらが協力的に振る舞ってくれるなら、乱暴なことはしないがな」
などと釘を刺してきた。
「わ…分かってますよ……」
と応えたさくらだったが、自分でも思いのほか、落ち着けているのが分かる。
だから、明日も仕事があるし、髪を乾かして寝る前の肌のケアを済ませると、今日のところはこれで休むことにした。
「じゃあ、私は寝ますから…」
そう告げて、リビングの一角を占めているベッドに横になる。灯は点けっぱなしだが、彼女は明るくても寝られる性質なので、
「おやすみなさい」
そう言って目を瞑った。
正直、部屋が明るいのはともかく彼がいる緊張感でとても寝られないだろうと思っていたのに、風呂に入って体がリラックスしたのか、自分でも驚くぐらいにすっと眠れてしまった。
すうすうと寝息を立てる彼女をソファーから眺めながら、
「あれだけビクビクしていたクセに、大したタマだ……」
などと、やや呆れたようにエンディミオンが呟いた。しかしその表情は、ほんのわずかだが、穏やかになったようにも見えたのだった。
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