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ミハエルの章
尋常ならざる者
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『ボク…お姉さんがほしい……』
『ななななな、なんですとぉぉおぉっっ!?』
少年のいきなりの言葉に、蒼井霧雨は腰が抜けるほどに驚いた。
『お姉さんが……お姉さんがほしいって、ええぇ!? そういう意味ですか!? そういう意味なのですか!?』
頭が混乱し、あわあわと舌がもつれて言葉が出てこない。
「そそそそそ、それは…!? え? どどど、どういう意味なのかな……!?」
ようやくそれだけを口にするが、狼狽えていて自分でも何を言ってるのかよく分かっていない。
『もしもしもしもし、そういう意味だったら、マズいマズいマズいよ!? 誘拐に加えて淫行までってなったら、強制性交まで上乗せされちゃうよ!? それはダダダダダダメでしょう!?』
けれど、そんな彼女に対して、あどけなくも見える少年は落ち着いていた。
「お姉さん、落ち着いて。たぶん、お姉さんが思ってるのとは違うから」
「…え? あ、そうなの……!?」
恐らく小学生くらいの男の子に冷静に諭されて、蒼井霧雨は耳まで真っ赤になり、全身から汗が噴き出してしまった。
『そうよね! そりゃそうよね……!!』
服の袖で汗をぬぐいながら、自分に言い聞かせる。しかし、思い違いとは言え、自分がそんな風に考えてしまったことが恥ずかしくていたたまれない。
すると少年は、彼女の傍にスッと近付いて、真っ直ぐに瞳を覗き込んできた。
「…え……?」
その瞬間、彼女の全身から力が抜け、腰が抜けてしまったかのようにその場に座り込んでしまう。
『な…なに……? 何かしたの……?』
問い掛けようとしても声が出ない。
体が言うことを聞かない。
そんな自分を、今度は少年が見下ろしてくる。吸い込まれそうな碧い瞳の奥に、何かが揺らめいているような気がした。
『まさか……本当に……?』
ここにきて彼女はようやく、自分が出逢った少年が、何か尋常ならざる者であるということを本当に察したのだった。
さっきまであんなに火照っていた顔からサーっと熱が逃げ去り、代わりにヒヤリとしたものが背筋を奔り抜ける。
「―――――!?」
恐怖だった。得体の知れないモノに対する恐れが、彼女の体を支配したのだ。
なのに、
「ごめんね、お姉さん。いただきます……」
少年の声が耳を撫でると、不思議とその恐怖が和らいでいくのも感じた。
『怖い……でも、なに? ……この感じ……』
それは、仮にも文筆を生業としている彼女でさえ適切な表現を見付けられない感覚だった。怖いのに、恐ろしいのに、なぜかそれに魅せられていく自分がいる。
このまま彼に身を委ねてしまいたいという衝動が、ゾクゾクゾクと湧きあがる。
そんな彼女の首筋に、少年はそっと唇を這わせたのだった。
『ななななな、なんですとぉぉおぉっっ!?』
少年のいきなりの言葉に、蒼井霧雨は腰が抜けるほどに驚いた。
『お姉さんが……お姉さんがほしいって、ええぇ!? そういう意味ですか!? そういう意味なのですか!?』
頭が混乱し、あわあわと舌がもつれて言葉が出てこない。
「そそそそそ、それは…!? え? どどど、どういう意味なのかな……!?」
ようやくそれだけを口にするが、狼狽えていて自分でも何を言ってるのかよく分かっていない。
『もしもしもしもし、そういう意味だったら、マズいマズいマズいよ!? 誘拐に加えて淫行までってなったら、強制性交まで上乗せされちゃうよ!? それはダダダダダダメでしょう!?』
けれど、そんな彼女に対して、あどけなくも見える少年は落ち着いていた。
「お姉さん、落ち着いて。たぶん、お姉さんが思ってるのとは違うから」
「…え? あ、そうなの……!?」
恐らく小学生くらいの男の子に冷静に諭されて、蒼井霧雨は耳まで真っ赤になり、全身から汗が噴き出してしまった。
『そうよね! そりゃそうよね……!!』
服の袖で汗をぬぐいながら、自分に言い聞かせる。しかし、思い違いとは言え、自分がそんな風に考えてしまったことが恥ずかしくていたたまれない。
すると少年は、彼女の傍にスッと近付いて、真っ直ぐに瞳を覗き込んできた。
「…え……?」
その瞬間、彼女の全身から力が抜け、腰が抜けてしまったかのようにその場に座り込んでしまう。
『な…なに……? 何かしたの……?』
問い掛けようとしても声が出ない。
体が言うことを聞かない。
そんな自分を、今度は少年が見下ろしてくる。吸い込まれそうな碧い瞳の奥に、何かが揺らめいているような気がした。
『まさか……本当に……?』
ここにきて彼女はようやく、自分が出逢った少年が、何か尋常ならざる者であるということを本当に察したのだった。
さっきまであんなに火照っていた顔からサーっと熱が逃げ去り、代わりにヒヤリとしたものが背筋を奔り抜ける。
「―――――!?」
恐怖だった。得体の知れないモノに対する恐れが、彼女の体を支配したのだ。
なのに、
「ごめんね、お姉さん。いただきます……」
少年の声が耳を撫でると、不思議とその恐怖が和らいでいくのも感じた。
『怖い……でも、なに? ……この感じ……』
それは、仮にも文筆を生業としている彼女でさえ適切な表現を見付けられない感覚だった。怖いのに、恐ろしいのに、なぜかそれに魅せられていく自分がいる。
このまま彼に身を委ねてしまいたいという衝動が、ゾクゾクゾクと湧きあがる。
そんな彼女の首筋に、少年はそっと唇を這わせたのだった。
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