140 / 255
アスリートじゃない
しおりを挟む
星谷さんを見ると、石生蔵さんっていう女の子がやっぱり抱きついてた。本当に姉妹みたいにも見える。
だけど、石生蔵さんにはお母さんもお姉さんもいるそうなのに、そういう人達の姿はまったくなかった。私の小学校の頃と同じように……。
石生蔵さんのことも、山下さんが説明してくれた。大希くんの家庭教師をしていた星谷さんが、大希くんと石生蔵さんとの間で何かトラブルがあった時に動いたことをきっかけに石生蔵さんに懐かれたらしいって。
それ以来、実のお姉さんみたいに慕ってるんだって。
そんなことを思ってると、沙奈子ちゃん達が袋から何か取り出し始めるのが見えた。そのままそれを羽織る子もいて、青い、法被みたいな衣装だと分かった。普通に法被としてみるとすごく丈が長くて、膝までくらいあるけど。ダンスの為の衣装だってピンときた。
沙奈子ちゃんもその衣装を羽織り、頭にも青い鉢巻をしようとしたけど上手く巻けなかったから私が手伝ってあげた。
「似合ってるよ、沙奈子」
法被を羽織り鉢巻きを締めた彼女に、山下さんがそう声を掛ける。照れくさそうに微笑む沙奈子ちゃんがまた可愛くて、胸がキュンってなってしまった。そんな私の隣で、玲那はパシャパシャと彼女の写真を撮ってる。
担任の先生が呼びに来て、沙奈子ちゃん達は移動を始めた。
「行ってらっしゃい」
私と玲那と山下さんで声を揃えて手を振って見送った。大希くんや石生蔵さんと一緒に駆けていく彼女の後姿を見てると、いよいよダンスなんだなって、私の方が何だかドキドキしてきた。
「沙奈子ちゃん、ぜんぜん緊張してませんでしたね」
思わず彼にそんな風に声を掛けてしまう。そう、私は緊張してきちゃったのに、沙奈子ちゃんにはそんな様子がまるで見られなかったから。
その私に、山下さんは穏やかに応えてくれた。
「うん。きっと運動会なんて、目を吊り上げて必死になってやる必要なんてないんだって思う。こうやってみんなで楽しめたらそれでいいんじゃないかな。だってあの子達は別にアスリートじゃないんだから」
なるほどと思った。
確かに、学校の運動会って、アスリートの競技大会じゃない。目を吊り上げて勝負や記録に拘るようなものじゃない。それなのに変にムキになってたりしたからその反動で、一時期、『手を繋いでみんなで一斉にゴールする』とか訳の分からないやり方をする学校が出てきてしまったりしたのかも。
運動会なんて、学校時代の思い出の一コマになればいいんだよ。その中で勝って喜んで負けて悔しがってでいいと思う。
山下さんってその辺の感性もすごく合うって感じたのだった。
だけど、石生蔵さんにはお母さんもお姉さんもいるそうなのに、そういう人達の姿はまったくなかった。私の小学校の頃と同じように……。
石生蔵さんのことも、山下さんが説明してくれた。大希くんの家庭教師をしていた星谷さんが、大希くんと石生蔵さんとの間で何かトラブルがあった時に動いたことをきっかけに石生蔵さんに懐かれたらしいって。
それ以来、実のお姉さんみたいに慕ってるんだって。
そんなことを思ってると、沙奈子ちゃん達が袋から何か取り出し始めるのが見えた。そのままそれを羽織る子もいて、青い、法被みたいな衣装だと分かった。普通に法被としてみるとすごく丈が長くて、膝までくらいあるけど。ダンスの為の衣装だってピンときた。
沙奈子ちゃんもその衣装を羽織り、頭にも青い鉢巻をしようとしたけど上手く巻けなかったから私が手伝ってあげた。
「似合ってるよ、沙奈子」
法被を羽織り鉢巻きを締めた彼女に、山下さんがそう声を掛ける。照れくさそうに微笑む沙奈子ちゃんがまた可愛くて、胸がキュンってなってしまった。そんな私の隣で、玲那はパシャパシャと彼女の写真を撮ってる。
担任の先生が呼びに来て、沙奈子ちゃん達は移動を始めた。
「行ってらっしゃい」
私と玲那と山下さんで声を揃えて手を振って見送った。大希くんや石生蔵さんと一緒に駆けていく彼女の後姿を見てると、いよいよダンスなんだなって、私の方が何だかドキドキしてきた。
「沙奈子ちゃん、ぜんぜん緊張してませんでしたね」
思わず彼にそんな風に声を掛けてしまう。そう、私は緊張してきちゃったのに、沙奈子ちゃんにはそんな様子がまるで見られなかったから。
その私に、山下さんは穏やかに応えてくれた。
「うん。きっと運動会なんて、目を吊り上げて必死になってやる必要なんてないんだって思う。こうやってみんなで楽しめたらそれでいいんじゃないかな。だってあの子達は別にアスリートじゃないんだから」
なるほどと思った。
確かに、学校の運動会って、アスリートの競技大会じゃない。目を吊り上げて勝負や記録に拘るようなものじゃない。それなのに変にムキになってたりしたからその反動で、一時期、『手を繋いでみんなで一斉にゴールする』とか訳の分からないやり方をする学校が出てきてしまったりしたのかも。
運動会なんて、学校時代の思い出の一コマになればいいんだよ。その中で勝って喜んで負けて悔しがってでいいと思う。
山下さんってその辺の感性もすごく合うって感じたのだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。
けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。
謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、
「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」
謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。
それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね――――
昨日、式を挙げた。
なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。
初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、
「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」
という声が聞こえた。
やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・
「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。
なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。
愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。
シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。
設定はふわっと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる