絵里奈の独白

京衛武百十

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星谷さん

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「あの石生蔵いそくらさんっていう女の子が受け取ったのって、お弁当みたいでしたね。星谷ひかりたにさんって親戚でもないんでしょう?。そういう人にお弁当を用意してもらってるって…」

私はつい、山下さんにそんな風に尋ねてた。すると玲那が、

「まあ、沙奈子ちゃんのお弁当だって結局は絵里奈が作ったものだし、いろいろあるんでしょうね」

って彼に話しかける。彼も「そうだね…」と応えてた。少し悲しそうな表情で。それだけで何となく察せてしまった。

そうか…、あの石生蔵さんっていう子もそうなんだって……。

本当に、どうしてそんなことが起こるんだろう……。どうしてすんなり幸せになれないんだろう……。

だけど、それで沈んだ気分になった私に、彼は笑顔を浮かべて言った。

「でも明日、石生蔵さんが沙奈子と一緒にホットケーキを作るために、うちに来る予定なんですよ。仲良くなってもらえたらきっとそれが支えになるんじゃないかな」

…え?、そうなんですか?。

「え~っ!?」って玲那が声を上げる。それにつられるように私も、

「どうしてそういうこと言ってくれないんですか~!?」

と思わず口にしてしまった。

そして玲那と声を揃えて、

「私たちも参加した~い!」 

正直、自分でも何故そういう話になるのか分からない部分はあった。沙奈子ちゃんにどういう友達がいて、その子と何をするのかなんて私達が首を突っ込むことじゃないとも思う。だけど、沙奈子ちゃんと、彼女と同じように辛い思いをしてきた子とがそうやって仲良くなる為に行うイベントだっていうのなら、私達もできれば立ち会いたい。

それにそれに、料理とかのことだったら、私も力になれるかもしれないし…!。

にじり寄るみたいに食いつく私達に、山下さんは戸惑いつつ、

「あ、うん。ごめん。二人には今回の運動会でお世話になるからそれ以上は大変かな~って思って…」

だって。それには私も玲那も、

「そんなことないですよ~!」

ってまた声を揃えてしまった。

と、その時、

「山下さん」

っていう声が耳に届いて、私達は三人ともそちらに振り返っていた。

星谷さんっていうあの子だった。彼女は山下さんを真っ直ぐに見詰めて、

「明日、千早ちはやさんが沙奈子さんと一緒にホットケーキを作るそうですね。ご迷惑をおかけするかも知れませんが、よろしくお願いいたします」

と丁寧に言った上で、深々と頭を下げた。

その様子に山下さんは恐縮した感じで、

「あ、いえ、こちらこそ。上手にできるかどうか不安ですけど、よろしくお願いします」

なんて慌てて頭を下げてた。するとさらに星谷さんが、

「明日は私もご一緒させていただきますので、重ねてよろしくお願いいたします」

だって。

え…、ええ~っっ!?。

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