100 / 255
ドリル
しおりを挟む
黙々とドリルで勉強する沙奈子ちゃんを、私と玲那は見守っていた。
彼女がやってるドリルは二年生のものだった。というのも、沙奈子ちゃんがまだ実のお父さんと一緒にいた頃、二年生から四年生になる時まで学校に通わせてもらえてなかったらしい。実のお父さんが女の人の家を転々としてるから、それどころじゃなかったんだとか。
私は、自分が好きで学校に行ってた時期って殆どなかったから絶対に学校に行かなくちゃいけないって思ってる訳じゃないけど、それでも親の勝手で行かせてもらえないっていうのは許せなかった。しかもその間にも、実のお父さんと付き合ってた女性からも次々虐待を受けてたって……。
山下さんからその話を聞いた時には、怒りで体が震えたりもした。
本当に、酷い目に遭ってきたんだね、沙奈子ちゃん……。
確かに、香保理や玲那はそれに加えてもっと酷い目に遭わされてきた。それに比べればまだマシっていう話はあるかもしれない。でも、そういうことじゃないの。どっちがマシとか酷いとか、比較して安心したりするようなことじゃないの。どっちも駄目なんだよ。
そんな沙奈子ちゃんが、今、その辛かった時期の穴埋めをしようとしてるんだと思うと、取り返そうとしようとしてるんだと思うと、素直にその手伝いをしたいと思った。
山下さんは、沙奈子ちゃんに、無理に勉強をさせようとはしてなかった。次々先に進んでいくんじゃなくて、完全に理解できてから次に行く感じだった。彼女が問題を解いていくのを静かに見守って、答合わせをして、全問正解だった時には「すごいぞ!」って声を掛けて、間違ってた時にはそれを丁寧に説明してってしてた。途中からは私と玲那がそれを引き受けて、楽しく勉強できた。
私が母にされたこととは大違いだった。あの人は、とにかく自分が決めたスケジュール通りにただカリキュラムをこなそうとしてただけだった。私が理解してないと感じると、『何でこの程度のことも分からないの!?』と癇癪を起して定規とかで叩いてきた。
私はそれが嫌で、必死に覚えようとしただけだった。勉強が楽しいとか思ったことなんて無かった気がする。
正直な話、私にとっては勉強なんてただの拷問でしかなかった。だから今では中学以降に習ったことで普段思い浮かべることさえない分野のそれなんか、殆ど忘れてしまっていると思う。何の為にやったのか、まるで分らない。
でも、今の沙奈子ちゃんはそうじゃない感じだった。問題を解くのが楽しくて、それを山下さんに見てもらうのが、今は私と玲那に見てもらうのが楽しいみたいだった。
彼女がやってるドリルは二年生のものだった。というのも、沙奈子ちゃんがまだ実のお父さんと一緒にいた頃、二年生から四年生になる時まで学校に通わせてもらえてなかったらしい。実のお父さんが女の人の家を転々としてるから、それどころじゃなかったんだとか。
私は、自分が好きで学校に行ってた時期って殆どなかったから絶対に学校に行かなくちゃいけないって思ってる訳じゃないけど、それでも親の勝手で行かせてもらえないっていうのは許せなかった。しかもその間にも、実のお父さんと付き合ってた女性からも次々虐待を受けてたって……。
山下さんからその話を聞いた時には、怒りで体が震えたりもした。
本当に、酷い目に遭ってきたんだね、沙奈子ちゃん……。
確かに、香保理や玲那はそれに加えてもっと酷い目に遭わされてきた。それに比べればまだマシっていう話はあるかもしれない。でも、そういうことじゃないの。どっちがマシとか酷いとか、比較して安心したりするようなことじゃないの。どっちも駄目なんだよ。
そんな沙奈子ちゃんが、今、その辛かった時期の穴埋めをしようとしてるんだと思うと、取り返そうとしようとしてるんだと思うと、素直にその手伝いをしたいと思った。
山下さんは、沙奈子ちゃんに、無理に勉強をさせようとはしてなかった。次々先に進んでいくんじゃなくて、完全に理解できてから次に行く感じだった。彼女が問題を解いていくのを静かに見守って、答合わせをして、全問正解だった時には「すごいぞ!」って声を掛けて、間違ってた時にはそれを丁寧に説明してってしてた。途中からは私と玲那がそれを引き受けて、楽しく勉強できた。
私が母にされたこととは大違いだった。あの人は、とにかく自分が決めたスケジュール通りにただカリキュラムをこなそうとしてただけだった。私が理解してないと感じると、『何でこの程度のことも分からないの!?』と癇癪を起して定規とかで叩いてきた。
私はそれが嫌で、必死に覚えようとしただけだった。勉強が楽しいとか思ったことなんて無かった気がする。
正直な話、私にとっては勉強なんてただの拷問でしかなかった。だから今では中学以降に習ったことで普段思い浮かべることさえない分野のそれなんか、殆ど忘れてしまっていると思う。何の為にやったのか、まるで分らない。
でも、今の沙奈子ちゃんはそうじゃない感じだった。問題を解くのが楽しくて、それを山下さんに見てもらうのが、今は私と玲那に見てもらうのが楽しいみたいだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる