絵里奈の独白

京衛武百十

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ヤキモチ

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私が沙奈子さなこちゃんのお母さんみたいになってたのに気付いて思わず玲那れいなの方に振り向いてしまった時、山下やましたさんとなんだかいい雰囲気になってるのが分かってしまった。

その瞬間、私の胸に、ツキッて感じの微かな痛みが…。

…え?。…なんで…?。なんで胸が痛むの……?。嘘…、違う…、違うよ…。そうじゃない…、私は玲那の為に……。玲那に幸せになってほしくて山下さんと……。

でも、戸惑ってるのは私だけじゃなかった。何となく気配を感じで視線を向けると、そこには、顔面蒼白になった沙奈子ちゃんの姿が…。

それで察してしまった。沙奈子ちゃんもショックを受けてるんだって。山下さんと玲那がいい雰囲気になってるのを見てそうなってしまったんだって。

だめ…。だめだよ……。これじゃだめだ。まだ早かった。私達は沙奈子ちゃんから山下さんを取り上げたいんじゃない……!。

玲那には幸せになってほしい。でもだからって沙奈子ちゃんを悲しませたり不安にさせたりっていうのも違う。ちゃんと、沙奈子ちゃんにも認めてもらわなきゃダメなんだ。意味がないんだ…!。

「沙奈子ちゃん、ちょっと…」

って、私は彼女に耳打ちした。

「イチャイチャしてる二人にちょっと言ってやろ、ね」

私がそう言うと、沙奈子ちゃんもハッとした顔になった。私の意図を理解してくれた気がした。私達はあなたからお父さんを取り上げたいんじゃないって。だから一緒にじーっと二人を睨むようにして見た。

するとその時、私と沙奈子ちゃんが睨み付けてるのに気付いたらしい山下さんがこちらを見て目が合った瞬間に、私は言ってた。

「なに二人だけでいい雰囲気出してるんですか~?」

そう言いながら、沙奈子ちゃんと一緒にじと~ってさらに睨み付けた。

「あ、いや、別にそういうのじゃなくて…!」

うろたえる彼の姿が、今度は何だかすごく可笑しく思えてきて、私はつい、クスクスと笑ってしまってた。

「大丈夫、分かってます。どうせ玲那の熱い兵長語りを聞かされたんでしょう?」

私が言うと、玲那はバツが悪そうに頭を掻いてた。やっぱり図星か。だから私はもう睨むのをやめたけど、沙奈子ちゃんはまだ山下さんを睨んでた。玲那じゃなく、山下さんを。

それはたぶん、拗ねてる顔だったと思う。そんな彼女を見た彼が、

「ごめん、沙奈子があんまり山田さんと仲良くしてるからその間にちょっとお話させてもらってんだよ」

と、申し訳なさそうに言った。すると続けて玲那が、付け足すように言ったのだった。

「そうそう、沙奈子ちゃんが絵里奈えりなお姉ちゃんと仲良くしてるからお話してただけだよ。ホントだよ」


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