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約一億六千万秒を全力で駆け抜けたある英雄の記録
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いずれにせよ彼女は、<エンディガ>と呼ばれる<魔物>?から人間を守るために戦うんだ。
数度の戦闘を経て、エンディガとの戦いに従事していた騎士団とも知り合い、それをきっかけにルビアートの<国王>にも謁見し、正式に騎士団の一員に登用されるんだけど、同時に彼女は不審な点にも気付いてしまった。
人間バイタルサインを正確に取得できる彼女は、謁見した際の<国王>のそれに奇妙な点があるのに気付くんだよ。
『この人物は、私という存在を知っている……』
ってさ。
この世界にはロボットどころか自動車すらないのに、国王からは確実に彼女がロボットであることを承知してる反応が見られたんだ。
でも同時に驚いている様子も確かにあったから、知識としては<ロボット>のことを知っているけど、見るのは初めて。
という感じだと。
とは言え、詰問したところで人間をエンディガから守るという彼女の判断が変わるはずもないからまずはそちらを優先するんだよね。もし国王がなんらかの重大な事実を知っていたり隠していたりしたのなら、おいおい分かってくるだろうと考えて。
で、<エンディガ>というのは、トカゲと言うか恐竜と言うかな<猛獣>で、しかも、少なくとも犬やイルカ程度の知能はあって、それなりに互いに連携も取れる、ただの生身の人間が相手をするにはいささか強力な相手だった。実際、戦いでは毎回多大な被害が出てたし。
でも、戦闘用のロボットである彼女にとってはただの<猛獣>でしかなくて、ウェイト差があることで手間取ったりはするけど、<敵>たりえない。
彼女が戦線に加わってからは人間側の被害は減少。彼女は<英雄>として人々から支持されるようになっていくんだよね。
もっとも、ロボットである彼女は人間を守れればそれでいいだけで、名声や賞賛にはまったく興味がない。
ところで、西暦一万二千年の技術で作られた彼女は、有機物をエネルギーに変える<オーガニック・リアクター>を搭載してて、有機物さえあればほぼ無制限に活動できるから、その点では心配ないんだけど、さすがにメンテナンスは受けられない。
一応、自己再生用のナノマシンも搭載してるんだけど、そのナノマシンは無限に機能できるわけじゃなくて、一年毎くらいに補充が必要だった。だけど補充できる当てはない。
「このまま補給もメンテナンスも受けられなければ、約一億六千万秒(約五年)で活動限界を迎えるでしょうね」
と彼女は判断するんだ。
「それまでの間に、<エンディガ>との戦争に目処をつけなければ……」
数度の戦闘を経て、エンディガとの戦いに従事していた騎士団とも知り合い、それをきっかけにルビアートの<国王>にも謁見し、正式に騎士団の一員に登用されるんだけど、同時に彼女は不審な点にも気付いてしまった。
人間バイタルサインを正確に取得できる彼女は、謁見した際の<国王>のそれに奇妙な点があるのに気付くんだよ。
『この人物は、私という存在を知っている……』
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でも同時に驚いている様子も確かにあったから、知識としては<ロボット>のことを知っているけど、見るのは初めて。
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とは言え、詰問したところで人間をエンディガから守るという彼女の判断が変わるはずもないからまずはそちらを優先するんだよね。もし国王がなんらかの重大な事実を知っていたり隠していたりしたのなら、おいおい分かってくるだろうと考えて。
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でも、戦闘用のロボットである彼女にとってはただの<猛獣>でしかなくて、ウェイト差があることで手間取ったりはするけど、<敵>たりえない。
彼女が戦線に加わってからは人間側の被害は減少。彼女は<英雄>として人々から支持されるようになっていくんだよね。
もっとも、ロボットである彼女は人間を守れればそれでいいだけで、名声や賞賛にはまったく興味がない。
ところで、西暦一万二千年の技術で作られた彼女は、有機物をエネルギーに変える<オーガニック・リアクター>を搭載してて、有機物さえあればほぼ無制限に活動できるから、その点では心配ないんだけど、さすがにメンテナンスは受けられない。
一応、自己再生用のナノマシンも搭載してるんだけど、そのナノマシンは無限に機能できるわけじゃなくて、一年毎くらいに補充が必要だった。だけど補充できる当てはない。
「このまま補給もメンテナンスも受けられなければ、約一億六千万秒(約五年)で活動限界を迎えるでしょうね」
と彼女は判断するんだ。
「それまでの間に、<エンディガ>との戦争に目処をつけなければ……」
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