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私が生きてる間は見捨てません

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ところで、主人公が転生した先の<母親>は、まあ、一言で言うなら、

<肝っ玉母ちゃん>

でさ。真面目だけど人間関係は得意じゃない父親の尻を叩いて励ますタイプの女性なんだ。

だけど、同時に、相手の話には耳を傾けて、その上で、

『ダメなもんはダメ!!』

ってはっきり言う人なんだよ。

そしてそれは、元の世界での主人公の母親と同じタイプでさ。

とは言え、主人公自身の記憶には前の両親のことはほとんど残ってなくて。

前の両親が亡くなったのが早すぎたことと、養親とその家族の悪印象が強すぎて上書きされちゃってたんだよ。

それでも、無意識の領域には、前の両親、って言うか、父親は印象が薄すぎてそれこそまったく思い出せないけど、母親については、今の母親に対して何とも言えない懐かしさも実は感じてしまってるんだよね。

なのに、主人公に植え付けられた人間不信は、自分自身すら信用することができなくするほどのもので、今の母親に対する<懐かしさ>も、

『気のせいだ! 錯覚だ……!!』

と決め付けて無視するんだ。

自分自身すら信じられないというのは、本当に厄介だよね。だって、今の両親は向こうの養親とはまったく違うタイプの人だって感じ取ってるのに、その自分の直感を信じることができないんだよ。

『人間なんてどいつもこいつもクソだ!!』

っていう<思い込み>こそが正しくて、それにそぐわない認識については無視しちゃう。

そんな主人公のことを、

「あの子はどうしてあんなに人間を憎んでるんだろう……?」

とは思いながらも、両親はやっぱり見捨てない。彼が誰かに迷惑を掛ける度に謝ってさ。

周りの人達も、

「両親はあんなにいい人なのに、上の子もすごくいい子なのに、下の子は本当に悪魔にでも憑かれてるんじゃないのか……?」

って噂するくらいに、両親に対しては同情的で、

「あんたらがいくら気にかけてやっても治らないんじゃ、もう、人買いにでも売るしかないんじゃないかい?」

「そうだよ。人買いの連中なら、売り物にするためにそれこそ厳しく躾けるだろうからさ。それくらいしなきゃあれは治んないよ、きっと」

みたいにも言ってくるんだよね。

だけど両親は、特に母親は言うんだ。

「人買いに売るだなんて、とんでもない。あの子は私の子です。私が育てなきゃ駄目なんです。他人様を傷付けるような人間のままで世の中に放り出すわけにはいかない。

あの子が人を信じられないのなら、私が信じられる人にならなきゃいけない。

信頼を得るってのは、時間が掛かるもんなんです。たとえ二十年かかろうと三十年かかろうと、私はあの子を見捨てません。私が生きてる間は見捨てません。

あの子を生んだのは、他の誰でもない。私なんですから」

ってさ。

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