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新世界の章
主人
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私が、『アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は死んだ』と認識することになった理由の大きなものは、以前にも説明した、
『人工知能に自分の人格と意識と記憶を移し替えた博士は、法律上、人間とは認められない』
が一番だと思う。私はロボットだから、そういう部分はドライに、冷淡に、合理的に、論理的に、判断する。
だけど今では、今の博士がかつての博士とどう違うのかが分からなくなってしまった。知識としては、
『今の博士は人間社会では、法律上、人間としては認められない』
となるのは分かる。
だけど今の惑星リヴィアターネには、他の人間社会の法律は及ばない。人間自身が、
『今の惑星リヴィアターネには、法の支配は及ばない』
という解釈を加えていることも、私は知っている。
だからこそ、ロボット艦隊を派遣して、僅かにでも残っている筈の<生きている人間>ごと爆撃してCLSの封じ込めを行ったのだ。
これはつまり、
『今の博士は、法律上、人間としては認められない。という解釈が無効になった』
という捉え方もできる。
さらに現在、惑星リヴィアターネに生まれつつある、<リヴィアターネの社会>においては、今の博士を明確に『人間である』と規定する根拠はない代わりに、『人間じゃない』と断定できる根拠となる規定も今はまだ存在しない。
だから博士が人間のように振る舞えばそれは生きている人間として扱うしかない。
それが分かるから、今の博士であっても、『これがリヴィアターネ人だ』と言われればそれを認めるしかない。
実際、<リヴィアターネ人>としてここイニティウムに暮らす人達には、私とリリア・ツヴァイと同じ存在がいて、彼女らも人間として生きている。
しかもここには、CLS患者から採取されたDNAを基にして生み出されたクローン達もいる。クローンも、他の惑星では人間とは見做されないけど、ここではちゃんと人間として扱われる。
博士は、ちゃんと、<リヴィアターネ人>として生きているんだ。
それが、私の中に、しっかりと論理として定着するのを感じていた。
そんな私を見透かすかのように、博士は笑顔で私を見詰めてる。
だけど私は思う。
『そうか……もう、私と博士はそれぞれが<リヴィアターネ人>になったんだ。それまでの人間社会での主従関係が失われたことには変わりないんだ』
これもまた事実なんだな。博士はもう、私の主人じゃない。
博士は言った。
「君は自由だ。何でも君自身が決めるといい。君と私はもはや対等な<人間同士>だ」
『博士は何でもお見通しなんだな』
なんてことを思いつつ。私はまた、苦笑いを浮かべてしまったのだった。
『人工知能に自分の人格と意識と記憶を移し替えた博士は、法律上、人間とは認められない』
が一番だと思う。私はロボットだから、そういう部分はドライに、冷淡に、合理的に、論理的に、判断する。
だけど今では、今の博士がかつての博士とどう違うのかが分からなくなってしまった。知識としては、
『今の博士は人間社会では、法律上、人間としては認められない』
となるのは分かる。
だけど今の惑星リヴィアターネには、他の人間社会の法律は及ばない。人間自身が、
『今の惑星リヴィアターネには、法の支配は及ばない』
という解釈を加えていることも、私は知っている。
だからこそ、ロボット艦隊を派遣して、僅かにでも残っている筈の<生きている人間>ごと爆撃してCLSの封じ込めを行ったのだ。
これはつまり、
『今の博士は、法律上、人間としては認められない。という解釈が無効になった』
という捉え方もできる。
さらに現在、惑星リヴィアターネに生まれつつある、<リヴィアターネの社会>においては、今の博士を明確に『人間である』と規定する根拠はない代わりに、『人間じゃない』と断定できる根拠となる規定も今はまだ存在しない。
だから博士が人間のように振る舞えばそれは生きている人間として扱うしかない。
それが分かるから、今の博士であっても、『これがリヴィアターネ人だ』と言われればそれを認めるしかない。
実際、<リヴィアターネ人>としてここイニティウムに暮らす人達には、私とリリア・ツヴァイと同じ存在がいて、彼女らも人間として生きている。
しかもここには、CLS患者から採取されたDNAを基にして生み出されたクローン達もいる。クローンも、他の惑星では人間とは見做されないけど、ここではちゃんと人間として扱われる。
博士は、ちゃんと、<リヴィアターネ人>として生きているんだ。
それが、私の中に、しっかりと論理として定着するのを感じていた。
そんな私を見透かすかのように、博士は笑顔で私を見詰めてる。
だけど私は思う。
『そうか……もう、私と博士はそれぞれが<リヴィアターネ人>になったんだ。それまでの人間社会での主従関係が失われたことには変わりないんだ』
これもまた事実なんだな。博士はもう、私の主人じゃない。
博士は言った。
「君は自由だ。何でも君自身が決めるといい。君と私はもはや対等な<人間同士>だ」
『博士は何でもお見通しなんだな』
なんてことを思いつつ。私はまた、苦笑いを浮かべてしまったのだった。
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