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リリア・ツヴァイの章

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まさかクレーターの斜面にお墓を作ることになるとは思わなかったけど、リリアテレサはパワーショベルとリンクしてアームについてるマニピュレーターを操作。近くに落ちてた破片を墓標代わりに差した。

作業を終えて、私達は再び歩き出す。するとまた、遠くでビルの残骸が崩れるのが見えた。

その光景も、リリアテレサは記録する。それもまた、この惑星リヴィアターネの光景そのものなのだから。



さらに歩き続けて一ヶ月が過ぎた頃、私は流れてくる風に独特の匂いが混ざっていることを感じ取っていた。

「海の匂いだ…」

呟くと、リリアテレサも、

「海の匂いだな……」

と呟いた。

こうして私達は、いよいよこの大陸の東の端へと辿り着こうとしてたのだった。



海の匂いに気付いてからさらに一昼夜。リリアテレサは休むことなく歩き続け、私は彼女が引くリアカーで眠っていた。そして夜が明けて目が覚めるとそこには紛れもない海が広がっていたんだ。

「海か……」

「海だな……」

とうとう辿り着いた東の端を前に、私達は立ち尽くしていた。しばらくそうやって海を眺めた後、改めて周囲を見渡す。

そこも、以前立ち寄った湖のほとりと同じく、リゾート地として開発された場所だった。もっとも、こっちは湖のそれより規模が大きいからか、爆撃を受けて徹底的に破壊されてたけどね。

だから美しい海が広がる光景とは裏腹に、焼き尽くされたリゾートホテルとかの残骸が残された凄惨な光景も広がっていたんだ。

「さて…どっちに行く? 北か、南か……?」

訪ねた私に、リリアテレサは真っ直ぐに海を見詰めながら、

「お前が決めればいい……」

と静かに答えた。そう言われて、私は北と南とを交互に何度も見る。でも、どちらに行けばいいのか、自分はどちらに行きたいのか、まるで分らなかった。

その時、また、何かの気配を感じて私達はそちらに視線を向けた。CLS患者だった。いかにもなアロハシャツを身に付けた、リゾート客の一人という、男性のCLS患者だ。

リリアテレサはハンドガンを手にして歩み寄り、十分に近付いてから二発、発射した。弾丸は二発とも頭に命中し、CLS患者はその場に崩れ落ちる。その遺体にショベルで砂を掛けて埋めて、浜辺に落ちていた木片を立てて墓標とした。

「北だね……」

「北か……」

最初に私達が立っていた位置からするとそのCLS患者が現れたのは北だったから、そのまま北に向かって歩くことにした。まったくでたらめな決め方だけど、それで何も問題ない。

海辺の道を北に向かって歩く。

二時間ほど進むと、リゾート地として開発された辺りから外れたのか、爆撃の跡が見られなくなっていった。

でもまだ海の方を見れば綺麗な砂浜が続いてる。

「暑いし…泳いでいこうか……」

海を見ながら私はそう呟いたのだった。

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