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リリア・ツヴァイの章

生きた人間

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この惑星リヴィアターネで起こったCLSのアウトブレイク(惑星としてみれば<パンデミック>なんだけど、現在の人間社会全体から見ればごく一部で起こり、かつ完全に封じ込められてる状態なので、敢えて<アウトブレイク>と称する)については、そのあまりの急激な拡大に慌てた、地球に本部を置く総合勢府が、必要な法整備を待たずに緊急的な対処として行った様々な方策が、整合性を持たされずに同時に運用された為、CLS患者を人間として見做すかどうか、そしてロボットにそれを適用するかどうかについても十分な議論もできないまま場当たり的に行われたというのがあった。

で、その所為もあり、CLS患者を人間と見做すかどうかある程度の基本となる判断基準はあるのものの、現場での運用についてはロボットの判断に任されたっていうのもあるんだよね。

あくまで、CLS患者の頭蓋内にあるのは<脳>じゃなくて完全にそれと入れ替わってしまったCLSウイルスが構築した<器官>なので到底人間とは呼べないものなんだけど、外見上だけなら、およそ生物として生存できないレベルの損傷が見られる場合はロボットも『人間とは言えない』と判断も下しやすいものの、体の小さい子供のCLS患者にはそれが当てはまらないことも少なくない為、子供のCLS患者を<生きた人間>と認識してしまったロボットは、当然、処置が行えなくなるんだ。

そんなこんなで、子供のCLS患者を生きた人間として保護し養育しようとするロボット、この場合は主にメイトギアが出てきてしまうのも当然なんだろうな。

今、私達の前にいるのも、そういうメイトギアとそのメイトギアに保護されている子供のCLS患者ということなんだよね。

でも、もちろんそういう判断をせず、たとえ外見上は損傷が酷くなくてもあくまでバイタルサインで確認して<ただのCLS患者>と見做して<処置>しようとするロボットもいるから、子供のCLS患者を人間として保護しようとするロボットと、普通にCLS患者として処置しようとするロボットの間で衝突が起こってしまうっていう事態も数多く発生してしまったらしい。

だから、私達が目的を訊かれたのも、CLS患者を処置しようとするロボットか否かを確かめようとしてのことなんだ。

私達は基本的にメルシュ博士の下で長らくいて、CLS患者というものを徹底的に調べてきた博士のデータがあるから、そういう意味ではCLS患者はCLS患者に過ぎなくても、同時に、問答無用で処置しなきゃいけないものでもないっていうのも知ってるんだ。

要するに、<CLS患者は絶対処置する>なんていう形では動いてないんだよね。

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