56 / 115
リリア・ツヴァイの章
潜む者
しおりを挟む
ロボットであるリリアテレサにとっては、人間がこうして海や湖で泳いだりするのが理解できない行動だった。人間がそういうことをするというのはもちろん分かっているし、それに対して異を唱えるなんてことはもちろんしない。でも、だからと言ってそれが理解できるかという話になればそうじゃないっていうことだ。
でも、私は厳密には人間じゃないのに、こうして泳いでみるとそれが気持ち良くて、だから人間は水と戯れたくなるんだなっていうのが実感できてしまった。合理性とかそういう問題じゃなく、感覚的にそうなんだ。
もちろんそれは人間の脳が感じてることなんだろうけど、そう感じるには肉体の感覚が必要なんだなっていうのが分かったってことかな。
う~ん、人間の体って神秘だな。
なんてことを考えてる時、
「ツヴァイ!、早く上がれ!!」
って声を掛けられた。それが何故なのか、私にも分かった。湖面が小さく盛り上がるようにして何かが近付いてきたんだ。
「ヤバいヤバい!」
私も慌てて上がる。するとモーリスも危険を感じたのか自ら離れた。そんな私達の目の前で、ほとんど陸地にまで上がってくるようにして影が見えた。大型犬くらいの大きさの、茶褐色で滑らかな質感の体をした動物だった。
「湖アシカか…」
<湖アシカ>っていうのは、このリヴィアターネに元々生息していた水棲生物だった。もちろん、地球のアシカとは生物的には何の繋がりもないものだけど、姿としては完全にアシカのそれだった。ネズミ以上の大きさの脳を持つ動物には陸棲・水棲を問わず感染するCLSが人間によって再び呼び覚まされるまでの間に動物達もそれなりに大型化し、以前に見た鹿やこの湖アシカくらいの大きさの動物も生息してたんだ。もっとも、人間が入植して餌を与えたりしたことで急速に大型化したというのもあるけどね。
その湖アシカのCLS患畜だ。いや、野生なんだから患獣かな?。まあどっちでもいいけどとにかくそういう感じってこと。CLSは水棲生物でも関係なく感染するから。
ご多聞に漏れずCLSに感染してることで動きが鈍くなってるから逃げ切れた。
ただ、CLSに感染した水棲生物が今日まで残ってたというのは意外だったな。陸上にはCLSに感染して動きが緩慢になった生き物でも捕食できる例の虫みたいのがいるから何とかなるにしても、水中の場合は、脳が小さいことでCLSを発症しない魚は当然動きが速くて捕まえられないし、貝や殆ど動いてるかどうかもよく分からない軟体動物を餌とは認識できない筈だから。
と思ったら、この湖にはいたんだった。動きは遅いけど明らかに動いてるように見える生き物が。
それは、<幽霊クラゲ>って呼ばれてる、クラゲに似た生き物だった。と言っても生き物の成り立ちとしてはむしろナマコとかウミウシに近いものらしいけど、クラゲと同じように水中を漂う姿がクラゲに似てる、でも何となく白くてゆらゆら動く体が幽霊っぽくもあるということで、<幽霊クラゲ>と名付けられたらしい。
でも、私は厳密には人間じゃないのに、こうして泳いでみるとそれが気持ち良くて、だから人間は水と戯れたくなるんだなっていうのが実感できてしまった。合理性とかそういう問題じゃなく、感覚的にそうなんだ。
もちろんそれは人間の脳が感じてることなんだろうけど、そう感じるには肉体の感覚が必要なんだなっていうのが分かったってことかな。
う~ん、人間の体って神秘だな。
なんてことを考えてる時、
「ツヴァイ!、早く上がれ!!」
って声を掛けられた。それが何故なのか、私にも分かった。湖面が小さく盛り上がるようにして何かが近付いてきたんだ。
「ヤバいヤバい!」
私も慌てて上がる。するとモーリスも危険を感じたのか自ら離れた。そんな私達の目の前で、ほとんど陸地にまで上がってくるようにして影が見えた。大型犬くらいの大きさの、茶褐色で滑らかな質感の体をした動物だった。
「湖アシカか…」
<湖アシカ>っていうのは、このリヴィアターネに元々生息していた水棲生物だった。もちろん、地球のアシカとは生物的には何の繋がりもないものだけど、姿としては完全にアシカのそれだった。ネズミ以上の大きさの脳を持つ動物には陸棲・水棲を問わず感染するCLSが人間によって再び呼び覚まされるまでの間に動物達もそれなりに大型化し、以前に見た鹿やこの湖アシカくらいの大きさの動物も生息してたんだ。もっとも、人間が入植して餌を与えたりしたことで急速に大型化したというのもあるけどね。
その湖アシカのCLS患畜だ。いや、野生なんだから患獣かな?。まあどっちでもいいけどとにかくそういう感じってこと。CLSは水棲生物でも関係なく感染するから。
ご多聞に漏れずCLSに感染してることで動きが鈍くなってるから逃げ切れた。
ただ、CLSに感染した水棲生物が今日まで残ってたというのは意外だったな。陸上にはCLSに感染して動きが緩慢になった生き物でも捕食できる例の虫みたいのがいるから何とかなるにしても、水中の場合は、脳が小さいことでCLSを発症しない魚は当然動きが速くて捕まえられないし、貝や殆ど動いてるかどうかもよく分からない軟体動物を餌とは認識できない筈だから。
と思ったら、この湖にはいたんだった。動きは遅いけど明らかに動いてるように見える生き物が。
それは、<幽霊クラゲ>って呼ばれてる、クラゲに似た生き物だった。と言っても生き物の成り立ちとしてはむしろナマコとかウミウシに近いものらしいけど、クラゲと同じように水中を漂う姿がクラゲに似てる、でも何となく白くてゆらゆら動く体が幽霊っぽくもあるということで、<幽霊クラゲ>と名付けられたらしい。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
天使の住まう都から
星ノ雫
ファンタジー
夜勤帰りの朝、いじめで川に落とされた女子中学生を助けるも代わりに命を落としてしまったおっさんが異世界で第二の人生を歩む物語です。高見沢 慶太は異世界へ転生させてもらえる代わりに、女神様から異世界でもとある少女を一人助けて欲しいと頼まれてしまいます。それを了承し転生した場所は、魔王侵攻を阻む天使が興した国の都でした。慶太はその都で冒険者として生きていく事になるのですが、果たして少女と出会う事ができるのでしょうか。初めての小説です。よろしければ読んでみてください。この作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも掲載しています。
※第12回ネット小説大賞(ネトコン12)の一次選考を通過しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる