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リリアテレサの章

負荷

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おびただしい数の墓標が立ち並ぶ草原の中を貫く道路を、私は、<かつて都市であったものの残骸>を横目に見ながら、リリア・ツヴァイを乗せたリアカーを引き黙々と歩いた。都市の外周を囲むように作られた<環状道路>だった。

しかしその道路の右も左も、残骸を用いた墓標が埋め尽くしている。この都市で発見された人間の遺体を埋葬した跡だ。

そこを進むだけでも、リリア・ツヴァイに強いストレスが掛かっているのが分かる。既に日も暮れ始めているけど、今はとにかくこの場を離れたいと彼女が望んでいるので、私はやや速足で歩いた。

だが、そんな私の視線の先に、よろよろと歩く人影が。

<動く死体>だった。都市の跡にはどうしても、地下施設の奥深くなどに避難していて爆撃を免れたあいつらが残っていることがあり、爆撃の後で降下したロボットにより比較的集中して対処された筈なのだけれど、今もこうして僅かながらに残っているのだった。

リリア・ツヴァイもそいつに気付いて、目を瞑り耳を塞ぐ。もう、見たくない、聞きたくない、と思っているのだ。博士の研究施設にいた頃にはさんざん見たのに、その頃には別に何とも思っていなかったのに、人間として生きていただあろう頃を垣間見たり、焼き尽くされた都市の有様を見たことで、彼らがどのように地獄を味わったのかが具体的に推測できてしまったんだろう。

人間ならばかなりの確率でPTSDなどを発症する状況だと思われる。

いや、もしかするともう既にそうなのかもしれない。脈が速くなり、汗が噴き出し、呼吸が浅く早くなる。肉体的な反応を伴う心理的な圧迫。確かにPTSDの症状の一例とも合致する。

それを感じながらも、ロボットである私はただ機械として決められた動きを取る。ポケットから拳銃を取り出し、両手でそれを構えて狙いを定め、二回引き金を引く。あくまで護身用でしかない小型拳銃なので威力が小さく一撃では仕留められない可能性があるからだ。

パンパンと、花火のような音が響き、<動く死体>はその場に倒れて動かなくなり、ただの<死体>となった。そうだ。これが本来の姿なのだ。言うならば、ようやく人間に戻れたということだろう。

夕焼けがすべてを真っ赤に染める中、私はリアカーから取り出したシャベルで道端に穴を掘り、そこに死体を埋めた。まだ中等部か高等部くらいの少年と思しき死体だった。

きっと、同じ年頃の子供達に囲まれてただ青春を謳歌していただろうに、その最後がこれなのか……

私達ロボットは、自分がどのような最期を迎えようと何とも思わない。ゴミのように捨てられて朽ち果てようとも、人間の手で破壊されて原形を失おうとも、そんなことは気にもしない。私達はただの<物>だ。心を持たない機械だ。

それなのに……

それなのにどうしてこんなにメインフレームに負荷がかかっているのだろう……

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