死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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会談

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「初めまして。まずは、お互いの情報を交換しましょう」

ロボット同士は、通信すれば相手の情報を取得できるので、人間のように自己紹介を行う必要がない。敢えて演出としてそのようなことをする場合もあるが、必須ではなかった。

山間の小さな集落でフィーナQ3-Ver.1911と対面したタリアP55SIは、お互いにこれまでの大まかな経緯を情報として交換した。だが、すべての情報が公開される訳ではないのも事実である。その内容や範囲はそれぞれ任意に選択できる為、フィーナQ3-Ver.1911は、アンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808のいる集落での出来事は伏せていたし、タリアP55SIもメルシュ博士のところにいた頃のことについては詳細を明かさなかった。

その辺りの駆け引きは、相手がどう行動を取るかよって今後変わってくるだろう。フィーナQ3-Ver.1911がそれを伏せたのは自身がなぜ現在のようなコミュニティーを増やそうとしているかのきっかけについて現時点では伝える必要がないと判断したからだし、タリアP55SIの方も、フィーナQ3-Ver.1911が自分にとってどういう存在になるかが分からないので、メルシュ博士についての情報をどこまで出すべきかの見極めをする為に敢えて出さなかったのだ。

こういうところは、人間の姿を長年見てきたロボットとそうでないものとでも変わってくる。この二体はどちらも初期化されることなくそれまでの蓄積がそのまま残っていることで、人間的な駆け引きのようなことをするようになっていたということだった。

「メルシュ博士については私は報道で伝え聞いている程度のことしか分かりませんが、どのような人物なのでしょう?」

フィーナQ3-Ver.1911が、探りを入れるようにそう尋ねてくる。

「天才だという点については疑いようもないと思います。ただやはり、倫理観という点では問題のある人物だというのも確かですね」

それは、タリアP55SI自身の率直な印象だった。

「では、そのメルシュ博士の命に従っているというフィーナQ3-Ver.2002も、危険な存在ということで間違いありませんか?」

「少なくとも現時点ではあなた方にとって危険であることは確かでしょう」

「メルシュ博士は、私達の要望を聞き入れてくれるような人物でしょうか?」

「正直申し上げて難しいと思います。メルシュ博士は他人の意見、ましてやロボットの要望を素直に聞き入れてくれるような人ではありません。彼女の目的に反しないのであれば聞き入れてもらえる場合もあるでしょうが」

「ということは、対策としては?」

「武力による自衛しかないでしょうね」

そう述べたタリアP55SIの顔は、能面のように固く冷たいものになっていたのであった。

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