死の惑星に安らぎを

京衛武百十

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スーパーブラックホーク・1903リプロ

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スーパーブラックホーク・1903リプロは、主にハンドガンを製造販売するフライマット社が星歴1903年に発表、販売を開始したハンドガンである。これも、人類がまだ地球上でのみ生活していた頃に普及したハンドガンを再現したもので、当時に製造販売していたスタームルガー社の権利を引き継ぐサリュート社から正式に許可を取ったリプロダクションモデルとして製造販売したものであった。

とは言え、かつての地球で使われていた銃器等のレプリカやリプロダクションモデルというのは、要はマニア向けの、趣味性の高い、いわば娯楽品の域を出ないものでしかなかった。もちろん、性能等は現代でも通用するように再設計はされているものの、やはり最初から現代の基準に合わせて設計されているものに比べればそもそも設計思想自体が古く、実用性が高いとは言い難かった。

その最たるものが、彼女、クラウディアM44が使っている銃身長10.5インチモデルと言えるだろう。全長で四百ミリを超えるそのサイズは、本来、携帯性や取り回しの良さを求められるハンドガンとしての利点を全く蔑ろにした冗談としか思えない大きさであり、加えてオリジナルのそれと同じくシングルアクションを採用し、弾丸の再装填は一発ずつしか行えないという点でも、やはり趣味や娯楽の為のものでしかないと思われた。

しかしなぜか、スーパーブラックホーク・1903リプロが発売された当時はこのモデルが一番人気となり相当数が出回った為、廃棄される数もそれに呼応して多く、彼女が梱包されていたコンテナにも三丁が同梱されていたのだった。

が、CLS患者の処置に使用を限定すればハンドガンとしての実用性の低さはさほど問題にならず、逆に、長銃身による弾道の安定性も相まって、存外、使いやすいものとなっていたのも事実であった。

それにより彼女は、順調にCLS患者への処置をこなしていくこととなった。

ただ、装備については問題がないとはいえ、自身の修理が出来ないというのは今後支障が出てくるかもしれない。さりとて交換出来る部品もない現状ではいかんともしがたいが。

そもそも、彼女らはもう、廃棄品なのだ。修理してまで運用を続けるという発想自体がない。壊れて動かなくなれば、別のロボットがその役目を引き継ぐだけである。そして使えなくなったロボットは捨て置かれるだけだ。そして彼女はもうそれを受け入れている。

この惑星に、その存在を誰かから求められているものは何一つない。この惑星の資源でさえ、ここの封鎖をより強固なものにする為に利用されているだけだ。彼女のいる拠点からも辛うじてその様子が見える、毎日のように打ち上がるロケットは、その為のものであった。
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