14 / 120
慟哭
しおりを挟む
フィーナQ3-Ver.1911がCLS患者の少女と一緒にいる間も次々と他のCLS患者が現れたが、そのどれもが見ていることさえ心苦しくなる痛ましい姿をしており、だから彼女も躊躇うことなく処置出来た。安らかな死を与える為に。
そんな毎日を送るうちに、彼女はまるで自分に懐いているかのような様子を見せるCLS患者の少女のことをこのまま自分の傍に置いておけばいいと思うようになっていた。虫や魚を食料として与えておけば大人しくしているのだから、何も殺すことまでしなくてもいいと考えていたのである。
彼女の判断は、特に問題がある訳ではなかった。この地にはもはや人間はいないのだから新たに感染者を増やす心配もなく、またロボットにとって少女は何一つ驚異たりえないのだから。
彼女がそう結論付けて数日後、近くの川では魚が見当たらなかった為に、彼女は少し遠出して魚を捕まえようと考えた。幸い、今日はCLS患者が現れる気配もない。そこで少女を拠点に残し、川の上流を目指して移動した。
拠点に残された少女が何を考えていたのかは、分からない。彼女の後を追おうとしたのか、自ら何か食料を探しに出たのかは、確認しようもない。とにかく少女は彼女がいない拠点を離れ、川の上流に向かい歩き出したのだった。
そしてしばらく歩いたところで、突然、少女の頭が目に見えない何かで殴られたかのように跳ねてその場に倒れ伏し、動かなくなった。その少女の頭には、明らかに銃で撃たれた痕があった。
その時、少女から三千メートルほど離れたところに、テルキネルFJ3スナイパーライフルを構えたフローリアCS-MD9の姿があった。フローリアCS-MD9が、少女を狙撃したのである。
フローリアCS-MD9の行為にも、何の問題もない。自らの拠点を中心に周囲のCLS患者を処置するのが彼女らの任務であり、それぞれが管轄するエリアを相互にフォローし合うのも任務のうちなのだから。故に責めることは決して出来ない。
それでも、フィーナQ3-Ver.1911は納得がいかなかったのだろう。魚を手にした彼女が拠点に帰る途中で発見した少女の亡骸を狂おしいまでに抱き締める姿があった。
『どうして…どうしてこんな……』
それから数日後、バラバラに解体されたフローリアCS-MD9が、グローネンKS6によって発見されたのだった。その切り口は非常に美しく、明らかに超振動ブレードかそれに類するものによる切断だということが推測された。
ちなみに、フィーナQ3-Ver.1911には、非常に強力な超振動ワイヤーが標準装備として内蔵されていたことも、明記しておきたい。
そんな毎日を送るうちに、彼女はまるで自分に懐いているかのような様子を見せるCLS患者の少女のことをこのまま自分の傍に置いておけばいいと思うようになっていた。虫や魚を食料として与えておけば大人しくしているのだから、何も殺すことまでしなくてもいいと考えていたのである。
彼女の判断は、特に問題がある訳ではなかった。この地にはもはや人間はいないのだから新たに感染者を増やす心配もなく、またロボットにとって少女は何一つ驚異たりえないのだから。
彼女がそう結論付けて数日後、近くの川では魚が見当たらなかった為に、彼女は少し遠出して魚を捕まえようと考えた。幸い、今日はCLS患者が現れる気配もない。そこで少女を拠点に残し、川の上流を目指して移動した。
拠点に残された少女が何を考えていたのかは、分からない。彼女の後を追おうとしたのか、自ら何か食料を探しに出たのかは、確認しようもない。とにかく少女は彼女がいない拠点を離れ、川の上流に向かい歩き出したのだった。
そしてしばらく歩いたところで、突然、少女の頭が目に見えない何かで殴られたかのように跳ねてその場に倒れ伏し、動かなくなった。その少女の頭には、明らかに銃で撃たれた痕があった。
その時、少女から三千メートルほど離れたところに、テルキネルFJ3スナイパーライフルを構えたフローリアCS-MD9の姿があった。フローリアCS-MD9が、少女を狙撃したのである。
フローリアCS-MD9の行為にも、何の問題もない。自らの拠点を中心に周囲のCLS患者を処置するのが彼女らの任務であり、それぞれが管轄するエリアを相互にフォローし合うのも任務のうちなのだから。故に責めることは決して出来ない。
それでも、フィーナQ3-Ver.1911は納得がいかなかったのだろう。魚を手にした彼女が拠点に帰る途中で発見した少女の亡骸を狂おしいまでに抱き締める姿があった。
『どうして…どうしてこんな……』
それから数日後、バラバラに解体されたフローリアCS-MD9が、グローネンKS6によって発見されたのだった。その切り口は非常に美しく、明らかに超振動ブレードかそれに類するものによる切断だということが推測された。
ちなみに、フィーナQ3-Ver.1911には、非常に強力な超振動ワイヤーが標準装備として内蔵されていたことも、明記しておきたい。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる