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生まれきたる者

正しいのは自分の方だ

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『自分こそが正しくて、分かってないのは他の奴らだ』

これを改めさせるのは、

……いや、そういう考えでは自分に不利になるだけだと気付かせてやるのは、容易なことではない。

『他人を罵る人間は疎まれる』という現実がありながら他人を罵らずにいられない、しかもそれを注意されても、

『正しいのは自分の方だ』

と言い張って反省しない人間の多さを見れば分かることだろう。

蓮華はその現実と向き合っているのである。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、

何十年も向き合い続けてきたのだ。

なのにそれでも答が出ない。

しかしその一方で、

『自分に答が見付けられないのだから他人にもそれが見付けられるはずがない』

とは考えない。あくまで、

『たまたま自分には見付けられないだけだ』

と考える。

事実、人間の歴史を見ても分かる。それまで、

『絶対に解き明かせない』

などと言われてきたことが解き明かされてきたりした現実を知るが故に。

『私と健雅には間に合わなくても、いつかその答が見付かるかもしれない』

という希望は捨てない。

が、実際問題として宿角健雅すくすみけんがの釈放は明日に迫ってしまった。

ここで『自分にはどうすることもできないんだから関係ない』と考えて放置してしまっては、十中八九、次の<被害者>が出るだろう。

こいつは、

『他人は力で虐げ、必要なものがあれば力尽くで奪うもの』

『力こそ正義』

と心底信じきっているのだから。

彼の息子の健侍けんじ健臣けんしんが保護された年頃に保護されていれば何とかなったかもしれないとは思うものの、当時はそれこそ、

『力尽くで相手を捻じ伏せれば万事上手くいく』

という考え方が支配的で、だからこそ蓮華の母はもえぎ園の改革に苦心したわけであり、なにより『たられば』をいくら並べたところで過去は変えられない。

厳然たるこの事実の前では、何者も無力であろう。

それでもなお、過去の事例を改めて洗い直し、何か糸口がないかと答を捜し求めた。

健雅の交友関係を改めて徹底的に調べ上げ、彼に届く言葉を発することができる人間がいないかどうかを再度検証する。

彼の実父も実母もすでに鬼籍に入っており、当てにはできない。もとより、健雅がああいう人間に育てたのはこの両親であって、しかもどちらも典型的な、

『力尽くで自分の欲求を押し通せばいい』

タイプの人間なのだった。

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