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試し行動
ようやくゼロに
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蓮華は決して、当てずっぽうでそのようなことをしていたのではない。
それと同時に、こうすれば確実に上手くいくと決めてかかっていたのでもない。
彼女はただ見ていただけだ。泰心の様子を。目を、態度を、仕草を、それらすべてを感じ取る努力をした。
その結果が、こうなったというだけに過ぎない。
彼をただ人間として見て、接していただけだ。蓮華自身がただ人間として振る舞い、彼に頭ごなしに押し付けなかっただけだ。だから泰心も蓮華を真似て人間として振る舞うようになった。
たったそれだけの話でしかない。
そしてさらに一週間。蓮華は泰心と共にその部屋で暮らした。淡々と、ただただ淡々と。そこに一緒にいるただの人間として。
風呂に入れてもらって体を洗ってもらったその日から、泰心は蓮華と同じベッドで寝るようになった。
露骨に甘えるように振る舞うわけじゃないものの、子犬同士が寄り添って寝るかのように。
なお、最初に風呂に入った時、頭は四回、体も三回、洗った。耳の後ろ、あごの下、脇の下、尻の谷間、ちんちん、膝の裏、足の指の間。すべてを丁寧に労わるように蓮華は洗った。
泰心も、おとなしくされるがままになっていた。彼にとっても心地好かったのかもしれない。
それはたぶん、彼にとっては生まれて初めての心地好さだっただろう。実の母親にさえ、そこまで丁寧に接してもらっていなかったのだから。
だからもうすでに、蓮華との関係は成立しているとも言える可能性はある。あるものの、まだこの時点では<社会性>という部分は十分に獲得できていない。
マイナスだったものがようやくゼロに近付きつつあるだけと表現するのが最も適切だろうか。
とは言え、ここまでくれば後は赤ん坊からやり直すようなものとも言える。そして赤ん坊の世話はそれこそお手の物だ。
まったくもって造作もない。
一緒に寝て、一緒に食事をして、一緒に風呂に入って、赤ん坊相手なら当たり前の接し方をする。
泰心が何か言いたげに視線を送れば、
「どうしたの?」
と穏やかに問い掛ける。すると泰心も、
「抱っこ……」
と応えたりする。
彼の両親はそんなリクエストにも応じてくれなかったが、蓮華は躊躇なく、
「おいで…」
と受け入れてくれる。
彼を膝に抱いて、頭をそっと撫でてくれる。
ちゃんと風呂に入るようになったことで、臭いもほぼなくなり、髪の毛もさらりとした感触と艶を取り戻していた。
見た目にも人間らしくなった。
しかし、だからといってこれで万事上手くいったわけではない。
一ヶ月が過ぎてようやく二人で部屋から出たものの、大人の職員がいるところではまた、廊下などで小便をするようになってしまった。
蓮華以外の人間についてはまだ信用できないということだ。
だが、乳幼児らのお漏らしにも慣れているもえぎ園の職員達は、誰もそれでうろたえることはなかったのだった。
それと同時に、こうすれば確実に上手くいくと決めてかかっていたのでもない。
彼女はただ見ていただけだ。泰心の様子を。目を、態度を、仕草を、それらすべてを感じ取る努力をした。
その結果が、こうなったというだけに過ぎない。
彼をただ人間として見て、接していただけだ。蓮華自身がただ人間として振る舞い、彼に頭ごなしに押し付けなかっただけだ。だから泰心も蓮華を真似て人間として振る舞うようになった。
たったそれだけの話でしかない。
そしてさらに一週間。蓮華は泰心と共にその部屋で暮らした。淡々と、ただただ淡々と。そこに一緒にいるただの人間として。
風呂に入れてもらって体を洗ってもらったその日から、泰心は蓮華と同じベッドで寝るようになった。
露骨に甘えるように振る舞うわけじゃないものの、子犬同士が寄り添って寝るかのように。
なお、最初に風呂に入った時、頭は四回、体も三回、洗った。耳の後ろ、あごの下、脇の下、尻の谷間、ちんちん、膝の裏、足の指の間。すべてを丁寧に労わるように蓮華は洗った。
泰心も、おとなしくされるがままになっていた。彼にとっても心地好かったのかもしれない。
それはたぶん、彼にとっては生まれて初めての心地好さだっただろう。実の母親にさえ、そこまで丁寧に接してもらっていなかったのだから。
だからもうすでに、蓮華との関係は成立しているとも言える可能性はある。あるものの、まだこの時点では<社会性>という部分は十分に獲得できていない。
マイナスだったものがようやくゼロに近付きつつあるだけと表現するのが最も適切だろうか。
とは言え、ここまでくれば後は赤ん坊からやり直すようなものとも言える。そして赤ん坊の世話はそれこそお手の物だ。
まったくもって造作もない。
一緒に寝て、一緒に食事をして、一緒に風呂に入って、赤ん坊相手なら当たり前の接し方をする。
泰心が何か言いたげに視線を送れば、
「どうしたの?」
と穏やかに問い掛ける。すると泰心も、
「抱っこ……」
と応えたりする。
彼の両親はそんなリクエストにも応じてくれなかったが、蓮華は躊躇なく、
「おいで…」
と受け入れてくれる。
彼を膝に抱いて、頭をそっと撫でてくれる。
ちゃんと風呂に入るようになったことで、臭いもほぼなくなり、髪の毛もさらりとした感触と艶を取り戻していた。
見た目にも人間らしくなった。
しかし、だからといってこれで万事上手くいったわけではない。
一ヶ月が過ぎてようやく二人で部屋から出たものの、大人の職員がいるところではまた、廊下などで小便をするようになってしまった。
蓮華以外の人間についてはまだ信用できないということだ。
だが、乳幼児らのお漏らしにも慣れているもえぎ園の職員達は、誰もそれでうろたえることはなかったのだった。
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