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灯安良と阿礼

抗議

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地元に戻って斉藤敬三さいとうけいぞうに迎えられた灯安良てぃあら阿礼あれいは、言われた通り、そのまま両親の下に帰されることはなかった。

地元警察の指示により児童相談所が二人を預かる形となり、かつ実際には、この種の対処の難しい事例にこそ真価を発揮すると目されている<もえき園>で仮に保護することとされた。

「どう?。世の中ってのはあなた達の思う通りにはいかないでしょ?」

園長の宿角蓮華すくすみれんげが園長室に通された二人に話し掛ける。

「……」

灯安良てぃあらは顔を背けて憮然とした様子で応えようとはしなかった。そこで彼女に代わり、阿礼あれいが、

「僕が全部悪いんです…! 灯安良__てぃあら__#のお腹の赤ちゃんは僕の子供だから……っ!」

そう声を上げると、灯安良__てぃあら__#も慌てて、

「違うよ! 阿礼あれいの所為じゃない! 元々は私が<家族>を作ろうって言いだしたから……!」

身を乗り出し声を上げる。

そんな二人の様子を見て、宿角蓮華はフッと微笑んだ。

「今回のことは、あなた達二人に等しく責任があります。ただ、あなたたちはまだ小学生。責任能力はないと見做されるので、それは問われません。

とは言え、おなかの赤ちゃんにももちろん責任はないので、このまま生んでいただくことになります。

同時に、あなた達には赤ちゃんを養育する能力がないこともまた事実。なので、赤ちゃんについては私達が保護します」

蓮華のその言葉に、灯安良__てぃあら__#がキッと眉を吊り上げ、

「渡さない! この子は私達の<家族>だ! 誰にも渡すもんか……っ!」

噛み付かんばかりに抗議した。

しかし蓮華は欠片ほども動じない。

「ちゃんと話を聞いた方がいいわね。私は<保護>と言ったんです。『私達が引き取る』とは言ってない」

「…え……?」

呆気にとられる二人に、蓮華は淡々と応える。

「私達の仕事は、子供達が自分の力でしっかりと生きていけるようになる手助けをすること。そのはつまり、あなた達の赤ん坊だけでなく、まだ子供であるあなた達自身も含めます。

本来ならまだ親に甘えていたいはずの年頃のあなた達が親を見限らないといけないという判断をするということは、あなた達の親には子供を適切に保護監督し養育する能力がないという何よりの証拠。それがあるなら、あなた達はまだまだ親に甘えていられたはずです。

そしてあなた達の親は、既に、複数の産婦人科の医師に対して妊娠二十二週以降の胎児の堕胎を要求したということで、堕胎罪の教唆犯の疑いがあります。また、あなたが同意していないにも拘らず堕胎させようとしているのなら、親自身が<不同意堕胎罪>に触れる可能性も出てきます。

以上の点から、あなた達の親には遵法精神が欠けており、あなた達を帰すことは不適切と判断し、当園での保護を決定しました」

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