生まれきたる者 ~要らない赤ちゃん引き取ります~

京衛武百十

文字の大きさ
180 / 283
灯安良と阿礼

抗議

しおりを挟む
地元に戻って斉藤敬三さいとうけいぞうに迎えられた灯安良てぃあら阿礼あれいは、言われた通り、そのまま両親の下に帰されることはなかった。

地元警察の指示により児童相談所が二人を預かる形となり、かつ実際には、この種の対処の難しい事例にこそ真価を発揮すると目されている<もえき園>で仮に保護することとされた。

「どう?。世の中ってのはあなた達の思う通りにはいかないでしょ?」

園長の宿角蓮華すくすみれんげが園長室に通された二人に話し掛ける。

「……」

灯安良てぃあらは顔を背けて憮然とした様子で応えようとはしなかった。そこで彼女に代わり、阿礼あれいが、

「僕が全部悪いんです…! 灯安良__てぃあら__#のお腹の赤ちゃんは僕の子供だから……っ!」

そう声を上げると、灯安良__てぃあら__#も慌てて、

「違うよ! 阿礼あれいの所為じゃない! 元々は私が<家族>を作ろうって言いだしたから……!」

身を乗り出し声を上げる。

そんな二人の様子を見て、宿角蓮華はフッと微笑んだ。

「今回のことは、あなた達二人に等しく責任があります。ただ、あなたたちはまだ小学生。責任能力はないと見做されるので、それは問われません。

とは言え、おなかの赤ちゃんにももちろん責任はないので、このまま生んでいただくことになります。

同時に、あなた達には赤ちゃんを養育する能力がないこともまた事実。なので、赤ちゃんについては私達が保護します」

蓮華のその言葉に、灯安良__てぃあら__#がキッと眉を吊り上げ、

「渡さない! この子は私達の<家族>だ! 誰にも渡すもんか……っ!」

噛み付かんばかりに抗議した。

しかし蓮華は欠片ほども動じない。

「ちゃんと話を聞いた方がいいわね。私は<保護>と言ったんです。『私達が引き取る』とは言ってない」

「…え……?」

呆気にとられる二人に、蓮華は淡々と応える。

「私達の仕事は、子供達が自分の力でしっかりと生きていけるようになる手助けをすること。そのはつまり、あなた達の赤ん坊だけでなく、まだ子供であるあなた達自身も含めます。

本来ならまだ親に甘えていたいはずの年頃のあなた達が親を見限らないといけないという判断をするということは、あなた達の親には子供を適切に保護監督し養育する能力がないという何よりの証拠。それがあるなら、あなた達はまだまだ親に甘えていられたはずです。

そしてあなた達の親は、既に、複数の産婦人科の医師に対して妊娠二十二週以降の胎児の堕胎を要求したということで、堕胎罪の教唆犯の疑いがあります。また、あなたが同意していないにも拘らず堕胎させようとしているのなら、親自身が<不同意堕胎罪>に触れる可能性も出てきます。

以上の点から、あなた達の親には遵法精神が欠けており、あなた達を帰すことは不適切と判断し、当園での保護を決定しました」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

異国妃の宮廷漂流記

花雨宮琵
キャラ文芸
唯一の身内である祖母を失った公爵令嬢・ヘレナに持ち上がったのは、元敵国の皇太子・アルフォンスとの縁談。 夫となる人には、愛する女性と皇子がいるという。 いずれ離縁される“お飾りの皇太子妃”――そう冷笑されながら、ヘレナは宮廷という伏魔殿に足を踏み入れる。 冷徹と噂される皇太子とのすれ違い、宮中に渦巻く陰謀、そして胸の奥に残る初恋の記憶。 これは、居場所を持たないお転婆な花嫁が、自ら絆を紡ぎ、愛と仲間を得て”自分の居場所”を創りあげるまでの物語。ときに騒がしく、とびきり愛おしい――笑って泣ける、異国妃のサバイバル宮廷譚。最後はハッピーエンドです。 ※本作は2年前にカクヨム、エブリスタに掲載していた物語『元敵国に嫁いだ皇太子妃は、初恋の彼に想いを馳せる』を大幅に改稿し、別作品として仕上げたものです。 © 花雨宮琵 2025 All Rights Reserved. 無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あなたが残した世界で

天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。 八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

処理中です...