117 / 283
斉藤敬三
ズルく醜い部分
しおりを挟む
『子供は殴らないと分からない』などと言ってる人間に、この職員と同じようなことをしている者はいないだろうか? 『子供は殴らないと分からない』と言って殴りつけて従わせようとしつつ、自分はルールを、決まり事を、法律を蔑ろにしていないだろうか? 『信号を守れ!』と頭ごなしに命じながら、自分は信号を無視したりしていないだろうか。
子供に対してはマナーを解きながら、自分は他人の悪口を並べ、陰口をたたいたりしていないだろうか? 『悪口はよくない』と、大人が子供に当たり前のように説く道徳を、大人が蔑ろにしていないだろうか?
自分はそうやって、ルールを、決まり事を、法律を蔑ろにしておきながら、子供に対してはガミガミと煩く言ってないだろうか?
自分はそんな大人に偉そうにされて、素直に従えるのだろうか?
己の振る舞いを省みることができない大人の姿を見た子供は、それを見倣ったりしないだろうか?
この時の敬三は、まさに、大人のそういうズルく醜い部分をしっかりと学び取ってしまったのである。
だから、『ルールも決まり事も法律も知ったことではない』と考えたのだ。自分をコインロッカーの中に捨てた、憎い<大人>に報復する為ならば。
『親に捨てられた人間が皆、そんな風に考える訳じゃない。それは甘えてるだけだ!』
と言う人間もいるだろう。しかし、大人がルールを、決め事を、法律を守らないのも『甘え』ではないのか? 自分にとって少しばかり都合が悪いからと、このくらいならいいだろうと、酒を飲んで自動車や自転車を運転したり、信号を無視したり、違法駐車をしたり、ゴミのポイ捨てをしたり、エスカレーターを歩いたり走ったり、夜間に無灯火で自転車に乗ったり、通行区分を無視したり、傘さし運転をしたり、ながら運転をしたり、歩きスマホをしたり、優先座席を占領したり、ネットで誹謗中傷や罵詈雑言をコメントしたりと、ルールやマナーを無視したりしてないだろうか?
それは、すべからく『甘え』の筈である。
大人がそのように甘えているのに、子供には『甘えるな』とは、果たしてどの口が言うのだろう?
『自分は厳しく育てられたから甘えたりしない』
と言う者もいるかもしれないが、果たしてそれは本当なのだろうか? 間違ったことをした場合にそれを指摘されて、逆ギレしないだろうか? 間違っているのだからそれを指摘されて逆ギレするのは紛れもなく『甘え』の筈である。
敬三は、子供ながらそれに気付いてしまっただけなのだ。大人こそが『甘えている』という事実に。
子供に対してはマナーを解きながら、自分は他人の悪口を並べ、陰口をたたいたりしていないだろうか? 『悪口はよくない』と、大人が子供に当たり前のように説く道徳を、大人が蔑ろにしていないだろうか?
自分はそうやって、ルールを、決まり事を、法律を蔑ろにしておきながら、子供に対してはガミガミと煩く言ってないだろうか?
自分はそんな大人に偉そうにされて、素直に従えるのだろうか?
己の振る舞いを省みることができない大人の姿を見た子供は、それを見倣ったりしないだろうか?
この時の敬三は、まさに、大人のそういうズルく醜い部分をしっかりと学び取ってしまったのである。
だから、『ルールも決まり事も法律も知ったことではない』と考えたのだ。自分をコインロッカーの中に捨てた、憎い<大人>に報復する為ならば。
『親に捨てられた人間が皆、そんな風に考える訳じゃない。それは甘えてるだけだ!』
と言う人間もいるだろう。しかし、大人がルールを、決め事を、法律を守らないのも『甘え』ではないのか? 自分にとって少しばかり都合が悪いからと、このくらいならいいだろうと、酒を飲んで自動車や自転車を運転したり、信号を無視したり、違法駐車をしたり、ゴミのポイ捨てをしたり、エスカレーターを歩いたり走ったり、夜間に無灯火で自転車に乗ったり、通行区分を無視したり、傘さし運転をしたり、ながら運転をしたり、歩きスマホをしたり、優先座席を占領したり、ネットで誹謗中傷や罵詈雑言をコメントしたりと、ルールやマナーを無視したりしてないだろうか?
それは、すべからく『甘え』の筈である。
大人がそのように甘えているのに、子供には『甘えるな』とは、果たしてどの口が言うのだろう?
『自分は厳しく育てられたから甘えたりしない』
と言う者もいるかもしれないが、果たしてそれは本当なのだろうか? 間違ったことをした場合にそれを指摘されて、逆ギレしないだろうか? 間違っているのだからそれを指摘されて逆ギレするのは紛れもなく『甘え』の筈である。
敬三は、子供ながらそれに気付いてしまっただけなのだ。大人こそが『甘えている』という事実に。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
妻と浮気と調査と葛藤
pusuga
現代文学
妻の浮気を疑い探偵事務所に調査を依頼した男。
果たして妻は浮気をしているのか?葛藤を繰り返し何を持って自分を納得させるのか?そんな話です。
隔日連載
全15話予定
ちなみに完全フィクションです。
勘違いしないようにして下さい。
【完結】君のために生きる時間
野村にれ
恋愛
カペルル王国、アズライン伯爵家。
そこにはミルシュアとリズファンという仲のいい姉妹がいた。
しかし、伯爵家は酷いものだった。
愛人を邸で平気で囲う父親、こんな人と結婚するのではなかったと泣く母親。
姉妹は互いこそが唯一の理解者で、戦友だった。
姉が笑えば妹が笑い、妹が悲しめば姉も悲しむ。まるで同じように生きて来たのだ。
しかし、あの忌まわしい日が訪れてしまった。
全てだった存在を失って、一体彼女に何が残ったというのだろうか。
日本史
春秋花壇
現代文学
日本史を学ぶメリット
日本史を学ぶことは、私たちに様々なメリットをもたらします。以下、そのメリットをいくつか紹介します。
1. 現代社会への理解を深める
日本史は、現在の日本の政治、経済、文化、社会の基盤となった出来事や人物を学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、現代社会がどのように形成されてきたのかを理解することができます。
2. 思考力・判断力を養う
日本史は、過去の出来事について様々な資料に基づいて考察する学問です。日本史を学ぶことで、資料を読み解く力、多様な視点から物事を考える力、論理的に思考する力、自分の考えをまとめる力などを養うことができます。
3. 人間性を深める
日本史は、過去の偉人たちの功績や失敗、人々の暮らし、文化などを学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、人間としての生き方や価値観について考え、人間性を深めることができます。
4. 国際社会への理解を深める
日本史は、日本と他の国との関係についても学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、国際社会における日本の役割や責任について理解することができます。
5. 教養を身につける
日本史は、日本の伝統文化や歴史的な建造物などに関する知識も学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、教養を身につけることができます。
日本史を学ぶことは、単に過去を知るだけでなく、未来を生き抜くための力となります。
日本史の学び方
日本史を学ぶ方法は、教科書を読んだり、歴史小説を読んだり、歴史映画を見たり、博物館や史跡を訪れたりなど、様々です。自分に合った方法で、楽しみながら日本史を学んでいきましょう。
まとめ
日本史を学ぶことは、私たちに様々なメリットをもたらします。日本史を学んで、自分の視野を広げ、未来を生き抜くための力をつけましょう。
鳳月眠人の声劇シナリオ台本
鳳月 眠人
現代文学
胸を打つあたたかな話から、ハイファンタジー、ホラーギャグ、センシティブまで。
あなたとリスナーのひとときに、心刺さるものがありますように。
基本的に短編~中編 台本。SS短編集としてもお楽しみいただけます。縦書き表示推奨です。
【ご利用にあたって】
OK:
・声劇、演劇、朗読会での上演(投げ銭配信、商用利用含む)。
・YouTubeなどへのアップロード時に、軽微なアドリブを含むセリフの文字起こし。
・上演許可取りや報告は不要。感想コメント等で教えて下されば喜びます。
・挿絵の表紙をダウンロードしてフライヤーや配信背景への使用可。ただし、書かれてある文字を消す・見えなくする加工は✕
禁止:
・転載、ストーリー改変、自作発言、改変しての自作発言、小説実況、無断転載、誹謗中傷。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる