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辻堂緋翔
起訴
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緊急逮捕とは言ったが、実際には三人とも怪我をしていたので、まずは救急搬送して処置を受け、共に入院の必要なしと判断された上で、その場での逮捕ではあったが。
辻堂寧人も杓条甲真もそれぞれ暴行についてはとぼけようとしたものの、刑事二人と探偵二人、しかも公園内に設置されていた防犯カメラにもばっちりとその瞬間が収められているので、そんな言い逃れが通用する筈もない。
更に辻堂の方は探偵が尾行中に目撃した窃盗や暴行の現場を隠し撮りした写真も警察に提供され、そちらの方でも捜査が進められ、杓条も空き巣の現場に残っていた指紋が本人のものと一致。こちらも窃盗の容疑で取り調べが行われることとなった。
辻堂の元々の容疑であった保護責任者遺棄の件については、余罪についての取り調べが終わった後に改めて追起訴という形になるだろう。結局、十を超える触法行為について追及されることになり、どれも物証や証言も上がってきているのでほぼすべての罪において有罪となることが確実視されている。
杓条についても、それまで逮捕歴などがなかったことで犯行現場に指紋があっても照合されてこなかったが、いくつかの現場で採取された指紋が全て一致し、こちらも有罪は確実だろう。初犯とは言えど数年にわたって何度も常習的に犯行を繰り返しているのが確認された為、実刑判決が出る見通しだ。
それについて杓条はこう言ったという。
「やっぱ、らしくないことはするもんじゃねえな……」
辻堂緋翔のことを警察に通報した件についてであった。
こうして事件は裁判の場へと移ることになったが、辻堂寧人は保護責任者遺棄についても『元妻に迎えに来るように依頼したから自分に責任はない』と主張し徹底的に争う姿勢を見せている。とは言え、辻堂がネット上に上げていた、まるで息子のことを案じていない、元妻に連絡を取ったという形跡さえ伺えない数々の投稿についても全て証拠として集められ、彼の主張を信じる要素はまるでなかったが。
なお、辻堂緋翔については、実母の方も養育する能力が皆無と判断され、当初の予定通り<もえぎ園>での保護が改めて決定した。現在はまだ入院中だが近々退院予定である。
「…こいつだって赤ん坊の頃は可愛いもんだったはずなんだけどね……」
戸野上探偵事務所からの調査報告書に目を通しながら、宿角蓮華は苦虫を編みつぶしたような顔をしながら言い放った。
「こいつの親もロクなものじゃなかった。だからこいつはこんな人間になった。途中でそういうのを改めさせてくれる出逢いがなかったのはこいつにとっての不幸だけど、同情には値しないわね……」
「……」
ふと悲し気な表情を見せた蓮華を、千堂京香は言葉を掛けることもできないまま見詰めていたのだった。
辻堂寧人も杓条甲真もそれぞれ暴行についてはとぼけようとしたものの、刑事二人と探偵二人、しかも公園内に設置されていた防犯カメラにもばっちりとその瞬間が収められているので、そんな言い逃れが通用する筈もない。
更に辻堂の方は探偵が尾行中に目撃した窃盗や暴行の現場を隠し撮りした写真も警察に提供され、そちらの方でも捜査が進められ、杓条も空き巣の現場に残っていた指紋が本人のものと一致。こちらも窃盗の容疑で取り調べが行われることとなった。
辻堂の元々の容疑であった保護責任者遺棄の件については、余罪についての取り調べが終わった後に改めて追起訴という形になるだろう。結局、十を超える触法行為について追及されることになり、どれも物証や証言も上がってきているのでほぼすべての罪において有罪となることが確実視されている。
杓条についても、それまで逮捕歴などがなかったことで犯行現場に指紋があっても照合されてこなかったが、いくつかの現場で採取された指紋が全て一致し、こちらも有罪は確実だろう。初犯とは言えど数年にわたって何度も常習的に犯行を繰り返しているのが確認された為、実刑判決が出る見通しだ。
それについて杓条はこう言ったという。
「やっぱ、らしくないことはするもんじゃねえな……」
辻堂緋翔のことを警察に通報した件についてであった。
こうして事件は裁判の場へと移ることになったが、辻堂寧人は保護責任者遺棄についても『元妻に迎えに来るように依頼したから自分に責任はない』と主張し徹底的に争う姿勢を見せている。とは言え、辻堂がネット上に上げていた、まるで息子のことを案じていない、元妻に連絡を取ったという形跡さえ伺えない数々の投稿についても全て証拠として集められ、彼の主張を信じる要素はまるでなかったが。
なお、辻堂緋翔については、実母の方も養育する能力が皆無と判断され、当初の予定通り<もえぎ園>での保護が改めて決定した。現在はまだ入院中だが近々退院予定である。
「…こいつだって赤ん坊の頃は可愛いもんだったはずなんだけどね……」
戸野上探偵事務所からの調査報告書に目を通しながら、宿角蓮華は苦虫を編みつぶしたような顔をしながら言い放った。
「こいつの親もロクなものじゃなかった。だからこいつはこんな人間になった。途中でそういうのを改めさせてくれる出逢いがなかったのはこいつにとっての不幸だけど、同情には値しないわね……」
「……」
ふと悲し気な表情を見せた蓮華を、千堂京香は言葉を掛けることもできないまま見詰めていたのだった。
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