だから人間は嫌いなんだ……!

僕は、<神>だ。

人間達は僕を<神>と呼ぶ。

だけど僕は、自分が何なのか知らない。確かに僕が思うだけで空は荒れ狂い地面は激しく揺れ、海が二つに割れることもある。

でも僕は、自分にどうしてそんなことができるのか、その理由を知らない。

僕は死なず、老いず、傷付かず、朽ちることがない。そうやって数万回、季節が巡るのを見守ってきた。

そんな僕を人間達は<神>と呼ぶ。

そう呼ばれることを僕は望んでもないのに、勝手にそう呼ぶんだ。

だから普段は、人間達の前には姿を現さないようにしていた。僕の気配を感じると人間達は勝手に、畏れ、崇め、敬うから。

やめろ…やめてくれ……

お前達がそんなことをするから僕はここから動けないんだ。人間達の<想い>が、僕をここに縛り付ける。

それを引きちぎって行くこともできなくはない。だけど僕はそれを選択できない。何故かって? 彼らが僕に<想い>を寄せることで、彼らは僕の<眷属>となり、彼らの<命>の一部を僕に預ける形になっているからだ。僕が彼らを見捨てていけば、彼らはその命を全うできずに死ぬ。

僕は滅ぶことのない存在だけど、だからこそ死ぬことができる彼らが羨ましい。

彼らが<死>を享受できることが妬ましいんだ。だからこそ僕は彼らに安易な死を与えたくない。不愉快だから。死ねない僕の前で死の安らぎを享受する彼らが許せないから。

生きろ。

人間達よ、生きろ。

生きることこそが、僕がお前達に与える<呪い>だ。

痛み、苦しみ、渇き、妬み、嫉み、悲しみ、憎しみを抱えて生きていけ。どうせお前達は、死ぬことでそれから逃れられるのだから。

けれど、最近、人間達は徐々に僕のことを崇めなくなっていった。僕を崇めなくても、何やら作物を上手く実らせる方法を見付けたらしい。

何かと言えば人間達が用意していた<生贄>もぱったり来なくなった。

おかげで僕は安穏とした時を過ごせていた。人間達に煩わされることなく。

なのにある時、大変な干ばつがあった。雨がまったく降らず作物は育たず、それは、大飢饉をもたらした。

僕は何もしてない。いや、もしかしたら何もしなかったから……かな?

すると人間達はまた、僕の前に一人の女の子を寄越した。生贄だ。

ああ、もう、どうしてこうなるんだ……

こうして、僕と、生贄の少女<ヒャク>との日々が始まったのだった。

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