凶竜の姫様

京衛武百十

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出逢い

錬義と斬竜、コテージに着く

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そうしてようやく、錬義れんぎ斬竜キルは、この先、早くて数週間。場合によっては数年間を過ごすことになる宿泊施設へと辿り着いた。

そこは、フーラという湖の湖畔に建てられたコテージ風の建物だった。事情を知らなければ完全にリゾートとしか思えないだろう。が、実はそんなに気楽なものでは決してなかった。

「相変わらずだなあ」

錬義れんぎはコテージの周囲を見回してそう呟く。というのも、そこかしこにロボットが配置されていて、しかも、錬義れんぎ斬竜キルが寝泊まりすることになるコテージを取り囲むように<指向性地雷クレイモア>が仕掛けられているのが分かるのだ。

さらに、数百メートル離れたビルや展望台には狙撃用のロボットが配されている。<万が一>のことがあった時には容赦なく徹底的に抹殺するためだ。そして、その範囲内に<人間>はいない。アンデルセンの脇に控えた兵士を除いて。

一方的に力で従えようとはしないものの、同時に備えを怠るようなこともないのだ。

『相手がこちらの都合をすぐに受け入れてくれることなどない』

という事実を前提にしているがゆえに。

とは言え、死がそれこそすぐ隣にある朋群ほうむ人の社会では、これすらさほど気にするようなことでもなかった。錬是れんぜの麓の鵺竜こうりゅう亜竜ありゅうの生息域に下りれば、これよりもっと危険が溢れている。

ここは少なくとも、ちゃんと道理が通じる者達が管理しているのだから、朋群ほうむ社会に危険を及ぼすような真似をしなければむしろまったく危険はないし、逆に守ってさえくれるのだ。

それに、ここに来れた時点ですでに斬竜キルは大きな危険がないと判断されてもいる。あくまでその上での用心でしかない。

「まあ、寛いでくれたらいい。彼女もな」

アンデルセンは穏やかに言う。そして錬義れんぎも、

「ああ、ゆっくりさせてもらうよ。彼女にも人間に慣れてもらわないといけないしさ」

笑顔で応えた。本当に親戚とでも話しているかのように。

いや、錬義れんぎにとってアンデルセンは<父親>代わりだったが。彼の母親がここに保護されていた時に錬義れんぎが生まれ、アンデルセンが父親のようにして彼を育てた。残念ながら母親は彼をほとんど育ててくれなかったがゆえに。

警護の兵士らは帰して、錬義れんぎ斬竜キルとアンデルセンだけがコテージの部屋へと入った。斬竜キルはアンデルセンを警戒しているものの、錬義れんぎが傍にいるからかおとなしくはしている。

そして部屋に入るなり、錬義れんぎは食品保管庫を開けて、そこからカップラーメンを三つ、取り出した。すると斬竜キルが、期待に満ちた目でそれを見た。パッケージ越しにかすかに届いてくる匂いだけでラーメンであることに気付いたようだ。

アンデルセンは敢えて部屋の隅に陣取り、二人の様子を見ていたのだった。

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