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第三幕

『他人がやってるから自分もやっていい』なんてのは、<他人の所為>にして自分を正当化しようとしてるだけだからね? そして、子供は親の

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『さっきさ、チャイルドシートを付けた自転車に乗った女性が、スマホを見ながらさらに信号無視して小さな交差点を突っ切ったんだ。

正直私は、それを見てすごく情けなかったよ。

その女性が<母親>かどうかは知らないけど、少なくとも三十は過ぎてる<大人>だったしね。

もし本当に母親だったら、『子供が自分の言うことを聞いてくれない!』みたいな泣き言を口にしてても、まったく同情できないよ。普段から、『スマホを見ながら自転車で歩道を突っ走る』『信号を平然と無視する』みたいなことをしてて子供に言うことを聞かせようとか思ってるんならね。

いわゆる<正義を気取ってやたら攻撃的に他人に絡む人>みたいに、別にその場で面と向かって説教しようとは思わないよ。だってそんなことしたって言われた方が反省することはまずないしさ。

それどころか、『こんな変な奴に絡まれた』って感じで自分を<被害者>にしてネットにアップしたりするだろうな~って思う。

で、そこでもまた、『自業自得』『おまいう』とか言われて叩かれたりしてさらに嫌な思いするんだろうな。

だけどそれでもたぶん、反省なんてしないんじゃないかな。だってその人自身は<普通のこと>をしてたつもりだろうし。『スマホを操作しながら自転車に乗る』のも、『歩道を、徐行もせずに自転車で走る』のも、『自転車で信号を無視する』のも、『誰でもやってる当たり前のこと』だと思ってるからやってたんだろうし。

でもそういう、『他人がやってるから自分もやっていい』なんてのは、<他人の所為>にして自分を正当化しようとしてるだけだからね?

そして、子供は親のそういうところを見倣うんだ。<ルールを無視した自分を棚に上げて、『みんなやってるじゃん!』って他人の所為にして反省もしない親の姿>をさ。

しかも、それを指摘されても反省もしない。聞く耳も持たない。

そんな親の姿勢を見倣った子供が、親が頭ごなしに言ったことなんか、素直に聞くと思う? 自分が他人から、『ルールを守ってないお前が悪い!』とか頭ごなしに言われて素直に反省できるかって言ったら、しないんだよね。自分がしてないことを子供がしてくれると思えるとか、正直、すごい神経してるってむしろ感心するよ。

まあ、そんなこと言ってる私だって、他人に偉そうに言われて素直に反省するようなタマじゃないしさ。だから逆に、悠里ユーリ安和アンナ椿つばきにもそんなことを望まないんだよ。

言うことを聞いてほしかったら、自分が、『この人の言うことだったら聞いてもいい』って思える人間になるべきだと思ってる。

それが先のはずなんだよね』



アオが、散歩を兼ねた買い物に出かけた時に見かけたという事例は、僕も、毎日のように見かけてる。大人が率先してルールを蔑ろにしているんだ。

なのに、子供に対しては自分達が思うルールを押し付け、守らせようとして威圧する。

自身が同じことをされたら反発するのにね。

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