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第三幕

私はさ、『自分はこのくらい平気だけど、相手は違うかもしれない。と考えることこそが気遣いというもの』だと、思ってる

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『私はさ、『自分はこのくらい平気だけど、相手は違うかもしれない。と考えることこそが気遣いというもの』だと、思ってる。

私の両親は、それをまったく教えてくれなかったけどね。親が、『気遣いというのはどういうものか?』というのを、口じゃなく、ちゃんと行動で示してこそ、子供も具体的にどうすれば他人を気遣ってることになるのか学べるんじゃないの?

それを、『そこまでやってられるか!』とか言ってやらないのは、それこそ<甘え>ってもんだよね?

私はね、自分にできることはちゃんと自分の子供に手本として示してあげたいと思う。それが<親の責任>だと思ってる。

その一方で、私は全然完璧じゃない、むしろできないことが多いダメ人間だから、悠里ユーリにも安和アンナにも椿つばきにも完璧を求めないようにしてるんだ。

親の側がいくら必死になって子供を優秀有能な人間に育てようとしても、思ったほどの人間に育たないことの方が多いじゃん。『末は博士か大臣か』ってな感じで期待してても、ほとんどがそこまでいかないじゃん。なんでその現実と向き合おうとしないの?

私はね、悠里や安和や椿が、他人を平気で傷付けたり苦しめられたりするような人じゃなきゃ、それでいいと思ってる。

凡人でいい。世界を動かすような大層な人じゃなくていい。

ただ、身近な誰かを幸せにしてあげられる人でいてくれたらいいんだよ。

その上で、もし、何か才能の片鱗でも見せてくれたら、それを伸ばす後押しをしたいだけ。

それに、『他人を平気で傷付けたり苦しめたりせず、身近な誰かを幸せにできる』っていうこと自体が、<才能>だと思う。

だってそうでしょ? それができてない人って、メチャクチャ多いじゃん。

他人を罵ってるような人って、『他人を平気で傷付けたり苦しめたりしない』ってのがもうその時点でできてないじゃん。

違う?

もちろん、自分ではそんなつもりなくても誰かを傷付けたり苦しめたりしてしまうことは、生きてる限りはあるよ。

誰だって赤ちゃんの時には、おなかが減ったといっては泣いて、おしっこが出たといっては泣いて、ウンチが出たといっては泣いて、気分が悪いといっては泣いて、怖いことがあったといっては泣いて、親とか周りの人を振り回して大変な思いさせたからね。

それに、成長してからだって、同じ人を好きになってしまったり、順位のつくことで誰かを負かしてしまったり、みたいなことで結果的に他人を傷付けたり苦しめたりってことはある。

でもさ、だからってそれを、悪意でもって意図的に誰かを傷付けよう苦しめようとする行為を正当化する言い訳に使うのは、卑怯者のすることじゃないの?

私は、悠里や安和や椿にはわきまえてほしいと思ってる。

それを、『そんなことまでやってられるか!』なんて、甘えたことは言わないよ』

そうだね。面倒臭いからと<人としての在り方>をしっかりと自身の子供に伝えない、他人が教えてくれるのを期待するというのは、僕も<甘え>だと思う。

だから僕は、アオと一緒に悠里達にそれを伝えていこうと思うんだ。

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