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第三幕

『人に優しく』という言葉を好んで使う人間にも、すごく攻撃的なのが多いのはなぜだろう? それは結局、『自分を甘やかしてほしい』から?

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『人に優しく』

という言葉を好んで使う人間にも、すごく攻撃的なのが多いのはなぜだろう?

それは結局、

『自分を甘やかしてほしい』

から?

アオは、『優しい』とか『優しさ』という言葉が嫌いだそうだ。

「だってさあ、それって要するに<優柔不断>とか<優しくされたいなら自分にとって都合のいい人間でいろ。という願望の裏返し>としか」思えないんだよね。

しかも、こんな風に言うと、『他人の優しさをそんな風に穿って見るとか、性根が腐ってんな!』みたいに言うのがいるんだよ。仮にも『<人間の優しさ>ってもんを素直に信じろ』とか考えてるのがだよ?

これでもう分かるじゃん。『優しくされたいなら自分にとって都合のいい人間でいろ』って言ってるのと同じじゃん。最初はなっから見返りを求めてるのとかって、ただの<打算>じゃん。それを<優しさ>と言い換える腹黒さがもうきっついよ。

私はね、自分が優しくなんかないから『優しい』って言葉をなるべく使わないようにしてるんだ。ミハエルと出逢った時の対応だって<優しさ>なんかじゃないよ。ミハエルに素で魅了されちゃったから犯罪者ムーブかましちゃっただけで。ミハエルが吸血鬼じゃなかったら完全にアウトだったからね?

そういう点からも、私は<善人>でも、<良識のある人間>でもないってのが分かるじゃん。普段は自分のヤバい部分を何とか制御できてるだけの<ドクズ>なんだってさ。

ただ、自分のドクズな部分を正当化したいとは思わないってだけ。

そして、『性根がドクズでも社会と折り合いを付けて生きることはできる』ってのを実践したいだけ。自分のドクズな性分を理由に他人を傷付けようとするのとか『ただの甘え』って言いたいだけ。

それにさ、<ドクズ>だって『幸せになりたい』っていう欲求はあったりするんだよ。『じゃあ、幸せになるにはどうすればいい?』ってのを考えたりはするんだよ。

で、気付いたんだよね。『自分が他人をわざと傷付けてて幸せになりたいとか、バカも休み休み言え!!』ってさ。

<元イジメの被害者>が、猛烈に他人を攻撃してたりすることあるじゃん。しかも本人が『自分はイジメの被害者だからこういう奴が許せない!』って言ってたりすんの。そういうの見てると、『ああ、この人、今も幸せじゃないんだろうな』って思うんだ。『自分が幸せじゃないから、そのストレスを他人に転嫁することで少しでも癒されようとしてるんだろうな』って。

だけどそれって、まさしく<イジメ加害者の心理>だと思う。その人は<元イジメ被害者>かも知れないけど、同時に、<現在進行形のイジメ加害者>なんだなって実感しかないよ」

アオの言うとおり、被害者が転じて加害者になることは、まったく珍しくもない光景だ。

エンディミオンは、まさにその典型例だったからね。

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