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第三幕
子供達まで明らかに
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『親しい相手以外の他人とはなるべく関わりたくない』
最近、人間によく見られる傾向だという気がする。
ただ僕は、それを必ずしも悪いことだとは思わない。親しくもない相手に無闇に馴れ馴れしくするのは、むしろトラブルの素だと思う。
椿もそれが分かってるから、挨拶が返ってこなくても気にしない。自分が挨拶をした方がいいと思ってるからするだけで。
すると、
「おはよう、つーちゃん♡」
それが自分に掛けられた挨拶だと察して、椿は振り返って、
「おはよう♡」
と挨拶を返した。
よくうちに遊びに来る、<椿の友達>の一人だった。
その子の姿を見た途端、椿の表情も和らぐ。
確かに、見ず知らずの相手にでも積極的に話し掛けられる方が自分の世界を広げるには有利かもしれないし、それができる人はそうすればいいと思う。でも、世の中にはそれができる人ばかりじゃない。
それができる人が優れてて、できない人は劣ってるという考え方は危険だよ。
あくまで<適性の違い>でしかないから。
加えて、<魅了>の能力を持つ僕達吸血鬼からすれば、人間のコミュニケーション能力の優劣なんて、まったく考慮する必要さえないし。
椿は、馴れ馴れしくされるのを苦痛に感じる相手を気遣うことができる。
その一方で、穏やかにコミュニケーションを取ってくる相手のことを闇雲に拒むこともない。そのあたりの分別をわきまえてる彼女を、僕は父親として誇りに思う。
ただ、この時、一緒に待ってる子供達の中に、酷く顔色の悪い子がいた。
その子の母親も一緒にいたけれど、ずっとスマホをいじっているだけで、自分の子供にはまったく注意を払っていなかった。
すると、椿が、
「大丈夫……?」
って青い顔をしていた子に声を掛けた。瞬間、声を掛けられた子が、突然、
「うえええーっっ!」
と嘔吐する。
「うわっ!?」
「きゃーっ!!」
「吐いた!?」
さすがにこれには、他の子達も声を上げてしまった。こうなるとその場は軽いパニックだ。
なのに、吐いた子の母親は、
「ちょっ! あんた、何したの!?」
自分の子供を気遣うんじゃなくて、椿の肩をいきなり掴んで怒声を浴びせる。椿が何かしたように思ったんだろう。
この態度に、僕の中にも強い感情がよぎる。
けれど、異変を感じて駆けつけた<地域見守り隊>とプリントされたベストを着た年配の女性が、
「あなた! そんなことよりこの子の心配しなさい!!」
椿の肩を掴んだ女性を叱責した。それと同時に、携帯電話を手にして、
「救急をお願いします。場所は……!」
手際よく救急要請を。
にも拘らず、吐いた子の母親は、
「ちょっと! 勝手なことしないでくれます!? 今日はこれから約束があるんです! 病院とか行ってる時間なんかないんです!!」
だって。
その言い草に、他の母親達だけじゃなく、子供達まで明らかに軽蔑の眼差しを向けたんだ。
最近、人間によく見られる傾向だという気がする。
ただ僕は、それを必ずしも悪いことだとは思わない。親しくもない相手に無闇に馴れ馴れしくするのは、むしろトラブルの素だと思う。
椿もそれが分かってるから、挨拶が返ってこなくても気にしない。自分が挨拶をした方がいいと思ってるからするだけで。
すると、
「おはよう、つーちゃん♡」
それが自分に掛けられた挨拶だと察して、椿は振り返って、
「おはよう♡」
と挨拶を返した。
よくうちに遊びに来る、<椿の友達>の一人だった。
その子の姿を見た途端、椿の表情も和らぐ。
確かに、見ず知らずの相手にでも積極的に話し掛けられる方が自分の世界を広げるには有利かもしれないし、それができる人はそうすればいいと思う。でも、世の中にはそれができる人ばかりじゃない。
それができる人が優れてて、できない人は劣ってるという考え方は危険だよ。
あくまで<適性の違い>でしかないから。
加えて、<魅了>の能力を持つ僕達吸血鬼からすれば、人間のコミュニケーション能力の優劣なんて、まったく考慮する必要さえないし。
椿は、馴れ馴れしくされるのを苦痛に感じる相手を気遣うことができる。
その一方で、穏やかにコミュニケーションを取ってくる相手のことを闇雲に拒むこともない。そのあたりの分別をわきまえてる彼女を、僕は父親として誇りに思う。
ただ、この時、一緒に待ってる子供達の中に、酷く顔色の悪い子がいた。
その子の母親も一緒にいたけれど、ずっとスマホをいじっているだけで、自分の子供にはまったく注意を払っていなかった。
すると、椿が、
「大丈夫……?」
って青い顔をしていた子に声を掛けた。瞬間、声を掛けられた子が、突然、
「うえええーっっ!」
と嘔吐する。
「うわっ!?」
「きゃーっ!!」
「吐いた!?」
さすがにこれには、他の子達も声を上げてしまった。こうなるとその場は軽いパニックだ。
なのに、吐いた子の母親は、
「ちょっ! あんた、何したの!?」
自分の子供を気遣うんじゃなくて、椿の肩をいきなり掴んで怒声を浴びせる。椿が何かしたように思ったんだろう。
この態度に、僕の中にも強い感情がよぎる。
けれど、異変を感じて駆けつけた<地域見守り隊>とプリントされたベストを着た年配の女性が、
「あなた! そんなことよりこの子の心配しなさい!!」
椿の肩を掴んだ女性を叱責した。それと同時に、携帯電話を手にして、
「救急をお願いします。場所は……!」
手際よく救急要請を。
にも拘らず、吐いた子の母親は、
「ちょっと! 勝手なことしないでくれます!? 今日はこれから約束があるんです! 病院とか行ってる時間なんかないんです!!」
だって。
その言い草に、他の母親達だけじゃなく、子供達まで明らかに軽蔑の眼差しを向けたんだ。
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