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第二幕
そんな世界は存在しない
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この世で生きるというのはとても大変なことだ。決して楽しいことばかりではない。ミハエル達の前ではすごく朗らかな表情をする恵莉花でさえ、学校でやはり少なからず楽しいばかりじゃなかったりもする。
でも、『学校は楽しい』というのも決して嘘ではない。いろいろありつつも楽しい。だけどそれは、
『何一つ不都合なことがない』
という意味じゃない。そんな世界は存在しない。
だけど、
『不都合なことがある』=『不幸だ』
とも限らないのだ。
むしろ、
『不都合なことをいかにうまく乗り越えていけるか?』
が、大切なことなのかもしれない。不都合なことがあるのが普通であるなら、それを上手く乗り越えていける手立てがあれば、それほど大きな問題にもならないのだろう。
実際、椿も恵莉花も秋生も、学校で何があっても家に帰ればしっかりと癒されて、心機一転、学校に臨むことができる。
これは、社会人となった洸も同じ。
仕事で嫌なことがあっても家に帰ればリセットされるから翌日まで引きずることがない。
学校や会社で嫌なことがあって、それで家に帰ってからもまた嫌な思いをして、それで果たして精神はもちこたえられるだろうか?
実際、それで持ち堪えられなくなって事件に至ったり、事件にまでは至らずとも家族関係が破綻したり、そこまででなくても家庭の愚痴をこぼしたり、憂さ晴らしとして他人に八つ当たりしたりという事例は数限りなくあるのではないのか?
だとすれば、家庭が安心し心癒される場所でないというのは、社会的にもリスクになるのではないのか?
ミハエルは実際に数多くの事例を見てきているからこそ、心穏やかに過ごせる場所であることを心掛けている。
他人に理解されるかどうかは関係ない。実際に自分達が幸せを実感できるかどうかが重要なのだから。
そして確かに幸せなのだから、これが蒼井家の<正解>なのである。
しかも、意図的に自分達から誰かを傷付けようともしない。
家族の中に誰かを傷付けようとする者がいれば、この幸せは成立しないだろう。
たとえば、安和が運営するレビューサイトで誰かを罵っていれば、そんな彼女の不幸を願う者がそれだけ増えるに違いない。
今でさえ、彼女を妬んで足を引っ張ろうとする者がいるくらいなのだから、彼女が誰かを罵れば、さらに増えるのは疑う余地もない。
たとえ共感する者が現れたとしても、同時に、疎ましく感じる者も確実に増える。
他人を攻撃するというのは、そういうことだ。
それを何度も何度も確かめる。
だから穏やかでいられるのだ。
でも、『学校は楽しい』というのも決して嘘ではない。いろいろありつつも楽しい。だけどそれは、
『何一つ不都合なことがない』
という意味じゃない。そんな世界は存在しない。
だけど、
『不都合なことがある』=『不幸だ』
とも限らないのだ。
むしろ、
『不都合なことをいかにうまく乗り越えていけるか?』
が、大切なことなのかもしれない。不都合なことがあるのが普通であるなら、それを上手く乗り越えていける手立てがあれば、それほど大きな問題にもならないのだろう。
実際、椿も恵莉花も秋生も、学校で何があっても家に帰ればしっかりと癒されて、心機一転、学校に臨むことができる。
これは、社会人となった洸も同じ。
仕事で嫌なことがあっても家に帰ればリセットされるから翌日まで引きずることがない。
学校や会社で嫌なことがあって、それで家に帰ってからもまた嫌な思いをして、それで果たして精神はもちこたえられるだろうか?
実際、それで持ち堪えられなくなって事件に至ったり、事件にまでは至らずとも家族関係が破綻したり、そこまででなくても家庭の愚痴をこぼしたり、憂さ晴らしとして他人に八つ当たりしたりという事例は数限りなくあるのではないのか?
だとすれば、家庭が安心し心癒される場所でないというのは、社会的にもリスクになるのではないのか?
ミハエルは実際に数多くの事例を見てきているからこそ、心穏やかに過ごせる場所であることを心掛けている。
他人に理解されるかどうかは関係ない。実際に自分達が幸せを実感できるかどうかが重要なのだから。
そして確かに幸せなのだから、これが蒼井家の<正解>なのである。
しかも、意図的に自分達から誰かを傷付けようともしない。
家族の中に誰かを傷付けようとする者がいれば、この幸せは成立しないだろう。
たとえば、安和が運営するレビューサイトで誰かを罵っていれば、そんな彼女の不幸を願う者がそれだけ増えるに違いない。
今でさえ、彼女を妬んで足を引っ張ろうとする者がいるくらいなのだから、彼女が誰かを罵れば、さらに増えるのは疑う余地もない。
たとえ共感する者が現れたとしても、同時に、疎ましく感じる者も確実に増える。
他人を攻撃するというのは、そういうことだ。
それを何度も何度も確かめる。
だから穏やかでいられるのだ。
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