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第二幕

誰にも批難される謂れがないことであるとなれば

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エンディミオンが現在、復讐を思いとどまっているのは、

『復讐は認められない』

という現実があり、もしそれでも強引に復讐を行えば、さくらや子供達が間違いなく不幸になることが分かっているからである。

それがないとなれば、復讐が正当な行為であり誰にも批難される謂れがないことであるとなれば、エンディミオンは躊躇うことなく復讐を再開するだろう。

なにしろ<正当な行為>なのだから。

まずは手近にいる吸血鬼であるミハエルとその郎党からだ。

吸血鬼に与する人間であるアオと、自分と同じダンピールでありながら人間に尻尾を振る<裏切り者>である悠里ユーリ安和アンナ、そして、ダンピールではなくても吸血鬼の血を引き、隔世遺伝などで吸血鬼を生む可能性のある椿つばきを殺す。

とは言え、ミハエルは強敵なので後回しだ。順番としては、アオと椿、そして悠里と安和を殺し、その死体をミハエルの前に晒して動揺を誘い、殺す。

これが、エンディミオンが思い描いている手順である。

しかし、それをするには、あくまで、

『実行に移したとしてもさくらやあきら恵莉花えりか秋生あきおが悲しむことも苦しむこともない』

ことが大前提となる。

復讐が正当な行為であるなら悲しんだり苦しんだりするはずがないので、何の憂いもなく実行に移すことができる。

が、現実はそうじゃない。

復讐は認められておらず、もしそれを実行すれば、さくらも洸も恵莉花も秋生も、悲しみ、苦しむだろう。もしかすると自ら命を絶つ者も出るかもしれない。

それが分かるから、エンディミオンは復讐を思いとどまることができている。

これが現実。

にも拘らず軽々しく、

『復讐は認められるべき』

など、言語道断。

実際には認められるはずのないことを口にする者を、エンディミオン自身、苦々しく思っている。

『できもしないことを口走ってるんじゃない! 殺すぞ! ニンゲン!!』

とも、表情には出さないが内心では思っていたりもする。

まあ、今ではエンディミオン自身、『殺すぞ』と思いながらも実行には移せないので、口には出さないようにしているが。

つまり、こういうことである。

復讐を正当なものと認めれば、それまで思いとどまっていた者達も、自身の復讐を遂げるべく動き出すだろう。それが何をもたらすのか、まともな想像力を持つ者なら思い描くこともできるのではないか?

もし、

<正当な復讐>

と、

<正当ではない復讐>

などという形で区別しようとすれば、今度は、自身の復讐を『正当ではない』と断じられた者達の不満が募り、暴走する可能性もある。

『泣き寝入りしろと言うのか!?』

と言うかもしれない。

復讐の正当性を論ずるのであれば、最低限、この程度のことは自らの中で検証するべきだろう。

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