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第二幕
安和の日常 その6
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実はここまで、蒼井家では、
<子供達だけで留守番>
ということを行ってこなかった。アオは家にいることが多いとはいえ、『彼女が寝ている時に子供達だけが起きている』というのも極力避けてきた。
しかしこれは決して、
<過保護>
だからではない。
『責任の所在を明確にする』
という、大人としての当然のことをしているだけだ。
管理監督者である大人が家にいない状態で何らかの<事故>が発生した時、果たして誰が責任を負うのか?
親が見ていないところで子供が拳銃で遊んで暴発し、本人や兄弟が亡くなるという事例は現に発生している。
拳銃とまではいかなくても、刃物で遊んだり火遊びをしたり水を張った浴槽で遊んで溺れたということが実際に起こっているのだ。
子供だけで留守番をさせていてそういう事故が起こった時、果たして誰が責任を負うのか?
子供か? 親か?
子供に責任を負わせてしまえるのなら、何のために<親>がいるのか。
ミハエルもアオもそう考えるからこそ、子供特有の<視野狭窄>が十分に解消されたことを確信できるまでは、子供達だけで留守番はさせなかった。
親として大人として、自分に責任があるということを明確にするために。
子供はどうしても、自分が興味のあることに意識が集中してしまい、それ以外のことについては疎かになる傾向がある。刃物や火といった扱いに注意が必要な危険なものであっても、
『触ってみたい! 使ってみたい! 遊んでみたい!』
と意識が集中してしまうと、それが危険なものであるという部分に考えが至らない、見えない、という状態になってしまうことがあるのだ。
これは、注意力が散漫とか真面目不真面目とかそういう問題ではない。
『子供の好奇心と集中力というのは元来そういうもの』
というだけの話なのだ。
それがあらかじめ分かっているのに親や大人の方がその事実を軽んじて疎かにして、結果、事故が起こる。
<子供というものに対する理解と具体的な対処を怠った大人の責任>
以外の何者でもない。
この事実から目を背けて自分の責任と向き合うことのできない親の姿を見て育った子供が、果たして、
<自分の責任と向き合える人間>
に育つだろうか?
『過保護だから子供に留守番をさせない』
のではない。
『大人として当たり前の責任と向き合っている』
からこそ、現実を見て対処してきただけだ。
それが今、アオは家にいるとはいえ就寝中で、事実上、十四歳の悠里と十三歳の安和の二人きりでの留守番。
けれど悠里はもちろん安和も、刃物や火気に興味を持つ時期は完全に過ぎていた。好奇心が先に立って危険なことをしたりということもない。
だから二人に任せてミハエルは出掛けていたのだった。
<子供達だけで留守番>
ということを行ってこなかった。アオは家にいることが多いとはいえ、『彼女が寝ている時に子供達だけが起きている』というのも極力避けてきた。
しかしこれは決して、
<過保護>
だからではない。
『責任の所在を明確にする』
という、大人としての当然のことをしているだけだ。
管理監督者である大人が家にいない状態で何らかの<事故>が発生した時、果たして誰が責任を負うのか?
親が見ていないところで子供が拳銃で遊んで暴発し、本人や兄弟が亡くなるという事例は現に発生している。
拳銃とまではいかなくても、刃物で遊んだり火遊びをしたり水を張った浴槽で遊んで溺れたということが実際に起こっているのだ。
子供だけで留守番をさせていてそういう事故が起こった時、果たして誰が責任を負うのか?
子供か? 親か?
子供に責任を負わせてしまえるのなら、何のために<親>がいるのか。
ミハエルもアオもそう考えるからこそ、子供特有の<視野狭窄>が十分に解消されたことを確信できるまでは、子供達だけで留守番はさせなかった。
親として大人として、自分に責任があるということを明確にするために。
子供はどうしても、自分が興味のあることに意識が集中してしまい、それ以外のことについては疎かになる傾向がある。刃物や火といった扱いに注意が必要な危険なものであっても、
『触ってみたい! 使ってみたい! 遊んでみたい!』
と意識が集中してしまうと、それが危険なものであるという部分に考えが至らない、見えない、という状態になってしまうことがあるのだ。
これは、注意力が散漫とか真面目不真面目とかそういう問題ではない。
『子供の好奇心と集中力というのは元来そういうもの』
というだけの話なのだ。
それがあらかじめ分かっているのに親や大人の方がその事実を軽んじて疎かにして、結果、事故が起こる。
<子供というものに対する理解と具体的な対処を怠った大人の責任>
以外の何者でもない。
この事実から目を背けて自分の責任と向き合うことのできない親の姿を見て育った子供が、果たして、
<自分の責任と向き合える人間>
に育つだろうか?
『過保護だから子供に留守番をさせない』
のではない。
『大人として当たり前の責任と向き合っている』
からこそ、現実を見て対処してきただけだ。
それが今、アオは家にいるとはいえ就寝中で、事実上、十四歳の悠里と十三歳の安和の二人きりでの留守番。
けれど悠里はもちろん安和も、刃物や火気に興味を持つ時期は完全に過ぎていた。好奇心が先に立って危険なことをしたりということもない。
だから二人に任せてミハエルは出掛けていたのだった。
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