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違っているのが当然

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人間と吸血鬼とダンピール。それぞれ<種>として大きな差異を持つはずの家族なのに、蒼井家はとてもまとまっていた。

それはたぶん、

『互いに違っているのが当然』

ということが大前提だからだろう。その前提があるから、生活サイクルが違っていても、むしろ違っているからこそ重なり合っている部分を大切にしていた。こうして一緒にすごす時間を大切にしていた。

最大限、子供達に甘えてもらった。

すると、違っていることで我慢してもらわなければいけない部分も、無理なく我慢してもらえた。

悠里ユーリ安和アンナは、他の子と自由に遊べないことを、

椿つばきは、悠里と安和を『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』と呼べないことを、

そして何より、年の半分を別々に過ごすことになるのを、我慢してもらえていた。

と言うのも、ミハエルや悠里や安和のことは、

『仕事で世界中を飛び回っている知人の子を預かっている』

という話にしているので、その辻褄合わせに、ミハエルは、年の半分を、悠里と安和を連れて世界中を旅して歩いているのである。

アオは言う。

「こう言うと必ず『可哀想』と言う人がいるけれども、そんなことを言ってたら、実際に子供をシッターなどに任せて忙しく仕事をしている人達の子供はみんな『可哀想』ということになってしまうじゃないか。そんなことを言う人はどれだけ完璧な<親>をできてるって言うんだよ?」

もっとも、それを言っているアオ自身が、最初、ミハエルがそれを提案した時には寂しさと心配で泣いたりしていたのだけれど。

もちろん、悠里や安和のことが心配なのも含め、一番は愛するミハエルと離れ離れになるのが寂しくて仕方ないというのがあった。

でも、

「大丈夫だよ、アオ。僕の心はいつでも君の傍にいる。それに毎日必ず、ビデオ通話で顔を見られるようにするから。だから、ブロードバンド環境の整っているところにしか行かないよ」

と言われて、何とか納得させられたりもした。

だけど最初は、三日間だけウラジオストクに滞在するなどして少しずつ慣らしていった。もちろん、約束通りホテルのWi-Fiなどを通じてビデオ通話で毎日必ず顔を合わせ、寝る時もアオと椿つばきが寝付くまでビデオ通話を繋いだままにしてくれた。

もちろん、悠里と安和についても、ミハエルは完璧に守ってくれた。母親がいなくても寂しがらないように常に傍にいて、二人の顔を見て話してくれた。

一方、母親と二人きりになった椿の方も、ミハエルの代わりにアオがちゃんと一緒に寝ることで寝かしつけた。それから仕事をして、もし椿が夜泣きをすれば飛んでいって、

「大丈夫だよ、ママはここにいるよ」

と語りかけて、安心して眠るまで傍にいてあげた。

そしてそれは、考えたくはないけれど、万が一、ミハエルにもしものことがあった時にアオが子供達を守っていけるようにという、予行演習でもあったのだった。

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