上 下
4 / 571

レクリエーション

しおりを挟む
女流ラノベ作家<蒼井霧雨あおいきりさめ>。

本名<桐佐目葵きりさめあおい>。年齢は内緒。

デビュー作<陰キャ少年のアラサーハーレム無双>が異例のヒットを飛ばしたことで同人作家からプロ作家へと転身した。

ただし、彼女が書くラノベは非常にクセが強く、読者を選ぶため、必ずしもメジャーとは言い切れない作家だった。しかし同時に、熱心な読者もついており確実な売り上げが見込まれることから、出版社にとってはありがたい存在でもある。

とは言え、作家としての蒼井霧雨も大変にクセが強くて扱いが難しいことで、編集部も対応に苦慮していることも事実だった。

しかし、現在彼女を担当している編集者がついてからは、その担当編集が実に巧く手綱を握ってくれており、正直言って丸投げする形ではあるものの安定しているのも事実である。

が、

「お前ら出版社は、<創作>というものの本質を理解しておらん!」

「先生の<創作論>はあくまでアマチュアのそれです! 先生は仮にも<プロ>なんですから、ただの自己満足ではなくて<商品になる作品>を仕上げてください!」

と、今日も喧々諤々意見をぶつけ合っていたのだった。

そして最後に、

「とにかく今回の原稿はすべてボツです! <売り物>になるものを見せてください! 分かりましたね!?」

担当編集である<月城つきしろさくら>はそう捨て台詞を残して編集部へと帰っていった。

こうして、

「ミハエル~、慰めて~!」

へと繋がるのである。

女流ラノベ作家<蒼井霧雨>として他人の前に出る時には彼女は、

<扱いの難しい作家先生キャラ>

が前面に出て、編集者を戸惑わせるのだ。

けれど、現在の担当者である月城さくらだけは、そんな彼女を前にしても一歩も下がることなく、真っ向から渡り合って見せた。

そんな二人がやり合ってる気配を、悠里ゆうり安和あんな椿つばきはいつも感じているものの、すでに慣れっこなのか、

「またやってる」

「よく飽きないよね~」

「ホントは仲良しのクセにね」

などと呆れたように言葉を交わしていた。

そう。三人が言うとおり、仕事の上では遠慮なくぶつかりあったりするものの、実は作家<蒼井霧雨>と担当編集<月城さくら>はそれだけ息の合ったパートナーでもあった。

二人は互いに信頼しあっているからこそ、本音でぶつかることもできるのである。二人のそれは、ある意味、<レクリエーション>でもあった。だから子供達も怖がったりしない。

しかも、

『そんな風にぶつかり合えるのは信頼しあってるからこそ』

というのを、蒼井霧雨も月城さくらもちゃんと子供達に伝えていたのだった。

そして二人のフォローは、蒼井霧雨の夫であり、子供達の父親である、ミハエルの役目でもあった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

フリー声劇台本〜モーリスハウスシリーズ〜

摩訶子
キャラ文芸
声劇アプリ「ボイコネ」で公開していた台本の中から、寄宿学校のとある学生寮『モーリスハウス』を舞台にした作品群をこちらにまとめます。 どなたでも自由にご使用OKですが、初めに「シナリオのご使用について」を必ずお読みくださいm(*_ _)m

禁色たちの怪異奇譚 ~ようこそ、怪異相談事務所へ。怪異の困りごと、解決します~

出口もぐら
キャラ文芸
【毎日更新中!】冴えないおっさんによる、怪異によって引き起こされる事件・事故を調査解決していくお話。そして、怪異のお悩み解決譚。(※人怖、ダーク要素強め)怪異のお姉さんとの恋愛要素もあります。 【あらすじ】  大学構内掲示板に貼られていたアルバイト募集の紙。平凡な大学生、久保は時給のよさに惹かれてそのアルバイトを始める。  雇い主であるくたびれた中年、見藤(けんどう)と、頻繁に遊びに訪れる長身美人の霧子。この二人の関係性に疑問を抱きつつも、平凡なアルバイト生活を送っていた。  ところがある日、いつものようにアルバイト先である見藤の事務所へ向かう途中、久保は迷い家と呼ばれる場所に迷い込んでしまう ――――。そして、それを助けたのは雇い主である見藤だった。 「こういう怪異を相手に専門で仕事をしているものでね」 そう言って彼は困ったように笑ったのだ。  久保が訪れたアルバイト先、それは怪異によって引き起こされる事件や事故の調査・解決、そして怪異からの依頼を請け負う、そんな世にも奇妙な事務所だったのだ。  久保はそんな事務所の主――見藤の人生の一幕を垣間見る。 お気に入り🔖登録して頂けると励みになります! ▼この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。

後宮の偽物~冷遇妃は皇宮の秘密を暴く~

山咲黒
キャラ文芸
偽物妃×偽物皇帝 大切な人のため、最強の二人が後宮で華麗に暗躍する! 「娘娘(でんか)! どうかお許しください!」 今日もまた、苑祺宮(えんきぐう)で女官の懇願の声が響いた。 苑祺宮の主人の名は、貴妃・高良嫣。皇帝の寵愛を失いながらも皇宮から畏れられる彼女には、何に代えても守りたい存在と一つの秘密があった。 守りたい存在は、息子である第二皇子啓轅だ。 そして秘密とは、本物の貴妃は既に亡くなっている、ということ。 ある時彼女は、忘れ去られた宮で一人の男に遭遇する。目を見張るほど美しい顔立ちを持ったその男は、傲慢なまでの強引さで、後宮に渦巻く陰謀の中に貴妃を引き摺り込もうとする——。 「この二年間、私は啓轅を守る盾でした」 「お前という剣を、俺が、折れて砕けて鉄屑になるまで使い倒してやろう」 3月4日まで随時に3章まで更新、それ以降は毎日8時と18時に更新します。

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。 なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。 普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。 それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。 そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。

初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁
キャラ文芸
【第四部開始】  高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。  眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。  転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?  ◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!  第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

処理中です...