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憐れな奴がそれだけこの世には

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 俺は羅美とこうやってたくさん話す。『話す』ってのはな、なにも上から目線で一方的に説教することを言うんじゃないだろ? 相手の話も聞かなきゃそれは<会話>じゃないだろ。<コミュニケーション>じゃないだろ。
『子供が話を聞かない!』
 とか言う親は多いだろうけどよ。そりゃお前が一方的にしゃべろうとしてるだけじゃないのかよ? 会社で自分の話を聞こうともせずに一方的にガミガミ言ってくるだけの上司なんかとまともに話をしたいとか思えんのかよ?
 自分が子供に対してやってるのはそういうことじゃないのかよ?
 コミュニケーションってのは一方通行じゃ成立しないんだよ。相手の話をちゃんと聞かなきゃコミュニケーションじゃないんだっていい加減に気付いたらどうなんだ?
 俺が話を聞く姿勢を見せてるから羅美も話せるし、俺が話を聞いてるから羅美も俺の話を聞いてくれるんだよ。
 こうやってちゃんと自分の話に耳を傾けてくれる相手がいれば、割とまあそこでいろいろ発散できるはずだけどな。
 家でそうやって話ができれば、学校でできなくたって我慢できるんじゃないのか?
 家でも無視されて、学校でも無視されて、それじゃ確かにどこにも逃げ場はないよな。ネットとかで一方的に誰かを罵るくらいしかできなくなるよな。
 ああ、学校だけじゃないな。職場でもそうか。家にも職場にも居場所がない。
 そんな憐れな奴がそれだけこの世には多いってことか。
 俺も、職場じゃ上司からは見放されてるが、牧島まきしまみたいな話ができる奴がいてくれるのと、<別にスピードなんか出さなくても最高にバカになれる愛車>があるから何とかなってたんだろうな。

 翌日は、
「ウチ、ホントに子供産んでやってけんのかなあ……」
 とか言うから、
「ま、無理だろうな」
 と、はっきり言ってやった。すると羅美は、
「なんだよ! そこは『そんなことない! お前ならできる!』とか言うとこだろ!?」
 なんて噛み付いてくる。でもな。
「あのなあ。まともに子供育てられるような奴がパパ活なんかするか。自分自身のことさえまともに考えられないからそんなことするんだろうが。そんな奴がなんで子供のことまでまともに考えられるとか思うよ?」
 きっぱり言うと、
「ぐ……!」
 羅美は不満げな表情かおで俺を睨み付ける。俺の言ったことは嘘偽りない正直な俺の印象だ。だが。
「だけどな。できないならできないでいいんだよ。そのために俺がいるんだ。子供はできちまった。その事実は変えられない。今の羅美にはまともに子供は育てられない。そんなことは百も承知だ。でも俺は、羅美のことも羅美の子供のことも見捨てたくない。だったらどうするか? 俺が育てるしかないだろ。これは俺がやりたいことだ。羅美はそれを利用すればいい」

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