上 下
32 / 106

<まともな親>なのかねえ……

しおりを挟む
 このクルマに乗ってると、笑われるのなんざしょっちゅうだ。だから笑われること自体は別に構わねえ。それは覚悟の上だしよ。ただ、自分の子供が、誰かが大事にしてるものをバカにするような人間に育って平気なツラしてられる親ってのが<まともな親>なのかねえ……とは思う。
 まあ俺自身、自分がまともな親とは思わねえから離婚にも応じたし、長女から冷たい目を向けられても別に気にならなかった。
 ただ、前妻も、
『口先じゃ謝ってる風なことは言ってても腹ん中じゃ』
 ってタイプでもあったから、長女もそう育つんだろうなと思うと、複雑な気分にはなる。もっとも、だからって俺が育てたらまともに育つかと言うと、そもそも長女に対する愛情が欠片も湧いてこねえから、それはそれで歪な人間に育ちそうだって予感はある。親の愛に飢えて依存心が強かったり承認欲求を拗らせたりした厄介なのに育ちそうだな。っていう。
 ま、俺と前妻の間に生まれちまったのが不幸ってこった。申し訳ない。
 でもなあ、親の影響があるってのは、俺自身が仮にも親だったからそれは間違いなくあるとは感じるんだが、『親の所為にするな!』みてえなことを口にする奴らも多いけどよ、じゃあ、『口先じゃ謝ってる風なことは言ってても腹ん中じゃ』ってえ親に育てられたからって自分もそういう人間でいることを良しとするってのは、『親の所為にしてる』としか思わねえな。『親の所為にするな!』とか言いながら他所様を口汚く罵ってる奴なんざ、
『そうやって他所様を口汚く罵る自分を改めることもできない』
 ってだけじゃねえか。それが親の影響だったんなら、『親の所為にしてる』以外の何だってんだ。親がどうだろうが自分は他所様を口汚く罵るような礼儀知らずのままでいるのはやめたらどうなんだ? 『親の所為にするな!』って言うんならよ。

 なんてことを考えながら俺は、荷物を後席に積んで、それをシートベルトで固定する。ドアらしいドアがねえから、しっかり固定してねえと吹っ飛んじまったりするからな。
 そうして荷物がしっかり固定できてるのを確認して、俺は運転席に座って大虎を待つ。たぶん、多目的トイレってところで着替えてるはずだ。ついでに用足しもしながらな。
 ションベンしたそうにしてたし。
 ちなみに俺は、当然のこととしてがっちり防寒対策をしてある。
 と、店の出入り口に、ダウンコートを着てマフラーを巻いた大虎の姿が見えたところで、俺はエンジンを掛けた。
「おまたへ~」
 言いながら乗り込んでくる大虎に、キャップヘルとゴーグルと使い捨てカイロを渡しつつ、
「カイロは腹と腰と首の根元の背中側にでも貼っとけ。それでだいぶマシになると思う」
 って告げたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

美少女TSおやぢ×武人系美少女×美女TS青年のイチャイチャ記録 科学×ファンタジー世界with緊急自動車やミリタリーの趣味添え

EPIC
ファンタジー
タイトルにあらかた全てを詰め込みました。 科学とファンタジーが入り混じり、TS・性転換体質が当たり前のオリジナル世界観を舞台背景に、オリジナルキャラがTSしてイチャイチャドタバタします。 登場キャラがメインからモブまで、容赦なくTSします。 趣味とフェチズムを詰め込みまくり、オリジナル設定てんこ盛りの話です。 性転換が当たり前の世界観設定なので、性転換に伴う心の変化とかそういった要素は少ないです。 ※表紙画像が主人公のTSおやぢの美少女モードです。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...