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日常編

根絶やしの合理性

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「は? 何故分かるかって!? そりゃ実際に見てきたからよ!!」

『結果が出てもいないうちからどうして分かるのか?』というシェルミの問い掛けに対して、ガゼは噛み付かんばかりの勢いで反論した。

だが、シェルミはやはり静かに問う。

「あなたの生まれた世界は、争いの絶えない世界だったと聞いています。その中であなたは確かに凄惨な事例をたくさん見てきたのでしょう。

でもあなたは、幼いうちに命を落としてここに来た筈です。なのにどうして、あなたが見た事例だけがすべてだと言えるのですか?」

「…え? あ、それは……!」

「私は、ここに来るまでの間にも数百年の時間を自らの世界で過ごしました。ですが、敵対する相手を容赦なく殲滅し根絶やしにするという方法をとっていた国や組織がずっと栄えたという事例を見たことがありません。十二万七千六百五十七例の事例を見てきましたが、一つとして成功例がないのです。

また、私のパートナーだったヴァイパーが最も多く戦った相手も、自分達の言いなりにならない相手、敵対する相手はその血族もろとも根絶やしにするという行為を行ってきた海賊ギルドでした。それによりヴァイパーの親友が殺され、結果としてヴァイパーと敵対することとなり、組織は壊滅したのです。

敵対するものを情け容赦なく倒すというのは、戦闘時には確かに必要なことでしょう。ですが、戦意を失って逃げようとする者、捕虜となった者まで滅殺するという行為を、あなたの世界は本当に推奨していたのですか? 捕虜の処遇についての取り決めなどはなかったのですか?」

「…あった…けど……」

「そうですか。ではなぜ、そのような取り決めがあったのですか? 敵は容赦なく皆殺しにすればいいという価値観であったのなら、捕虜も拷問にかけて情報を引き出した後は殺せばよかったのではないですか? あなたの世界では、捕虜に対してそのような扱いをしていましたか?」

「…してない……」

「ということは、あなたの世界ですら、敵は容赦なく滅殺し根絶やしにすれば良いとは考えていなかったということですよね。あなたはそれについてどのようにお考えですか?」

「…でも、逃がしたら仲間が危険に……」

「ですがそれは、相手もそう思っているのではないのですか?」

「…!?」

「あなたの仲間が敵に捕えられて、抵抗の意思を見せず投降してもそれを認められずに殺されたとなれば、あなたはどう思うでしょう? 『どうして殺した!?』とは思いませんか?」

「……」

「ガゼ。争いというものは常に相手があって起こるものなのです。そして自分が考えていることは相手も考えているかもしれない。

それを忘れてはいけません」

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