152 / 205
日常編
キヨターキ
しおりを挟む
キヨターキは、キヨーと呼ばれる滝を中心とした、風光明媚なエリアだった。ピクニックやキャンプ目当てに訪れる者も多い、人気のレジャースポットの一つである。
「でもなんでキヨー?」
ユウカが素直な疑問を口にするが、ガゼは「さあ?」と首をかしげるだけだった。そこにマニが、
「どこかの惑星の言葉で、『清廉な』という意味の言葉が語源になってるそうよ」
と説明してくれた。それを聞いてユウカは、
『清、ってことかな…? まさかね』
などと思ったがそれは口には出さなかった。
特に目立った特徴のないユウカはともかく、青い髪とオッドアイのガゼ、褐色の肌にピンクの髪を逆立てたメジェレナ、透明な体にマントを羽織っただけのヌラッカ、筋肉の壁のようなマニ、腰まで届く漆黒のサラサラヘアに長身痩躯で真っ黒な服装に真っ赤な瞳のレルゼーの六人で歩いていると目立ちそうなものだが、ここではその程度の特徴はさほど珍しくもなく、ユウカ達と同じように憩いに来てるのであろう人間達も誰も気にしていなかった。
ただ時折、
「レルゼーさんですよね! サイン、お願いしてもいいですか!?」
などと、さすがにレルゼーだけは有名人でもあるのでサインを求められたりもした。
そんなこともありながらも、
『あ~、なんか癒される気がする……』
何とも言えないのんびりとした空気が漂うそこを歩いているだけでもそう思えてくる。
「ここにも、こういうところがあるんだね」
ユウカの言葉に、マニが応える。
「もちろんよ。他にもいろんなリゾート地があるわ。海、山、砂漠のオアシスみたいなのもあるし、逆にカジノや遊興施設がびっしりっていうところもあるのよ」
「海なら私も行ったことがある。いろんな海があるんだよ。今度海にも行ってみようよ!」
ガゼが興奮気味に言うと、メジェレナも興味深そうに声を上げた。
「私も海に行ってみたいな。まだ行ったことないんだ」
と、褐色の肌をしているのに意外なとも思うかもしれないが、それは彼女の種族の特徴なだけなので、彼女は海を見たことさえ殆どなかった。境遇的にその機会がなかったというのもあるだろう。書庫に来てからは二千年以上引きこもり、数十年前からようやく普通の生活ができてはいたが、ユウカと同じで決まったルーチンを繰り返すだけだったからだ。
それがユウカやガゼと一緒ならという気にはなれてきたらしい。
そして一時間ほど歩いて、目的のキヨーの滝が見える場所までやってきた。
「わあ、キレイ……」
思わず呟いたユウカに、ガゼは「でしょ?でしょ?」と嬉しそうに笑いかける。この場所を選んだ自分が褒められているような気がしたからなのだった。
「でもなんでキヨー?」
ユウカが素直な疑問を口にするが、ガゼは「さあ?」と首をかしげるだけだった。そこにマニが、
「どこかの惑星の言葉で、『清廉な』という意味の言葉が語源になってるそうよ」
と説明してくれた。それを聞いてユウカは、
『清、ってことかな…? まさかね』
などと思ったがそれは口には出さなかった。
特に目立った特徴のないユウカはともかく、青い髪とオッドアイのガゼ、褐色の肌にピンクの髪を逆立てたメジェレナ、透明な体にマントを羽織っただけのヌラッカ、筋肉の壁のようなマニ、腰まで届く漆黒のサラサラヘアに長身痩躯で真っ黒な服装に真っ赤な瞳のレルゼーの六人で歩いていると目立ちそうなものだが、ここではその程度の特徴はさほど珍しくもなく、ユウカ達と同じように憩いに来てるのであろう人間達も誰も気にしていなかった。
ただ時折、
「レルゼーさんですよね! サイン、お願いしてもいいですか!?」
などと、さすがにレルゼーだけは有名人でもあるのでサインを求められたりもした。
そんなこともありながらも、
『あ~、なんか癒される気がする……』
何とも言えないのんびりとした空気が漂うそこを歩いているだけでもそう思えてくる。
「ここにも、こういうところがあるんだね」
ユウカの言葉に、マニが応える。
「もちろんよ。他にもいろんなリゾート地があるわ。海、山、砂漠のオアシスみたいなのもあるし、逆にカジノや遊興施設がびっしりっていうところもあるのよ」
「海なら私も行ったことがある。いろんな海があるんだよ。今度海にも行ってみようよ!」
ガゼが興奮気味に言うと、メジェレナも興味深そうに声を上げた。
「私も海に行ってみたいな。まだ行ったことないんだ」
と、褐色の肌をしているのに意外なとも思うかもしれないが、それは彼女の種族の特徴なだけなので、彼女は海を見たことさえ殆どなかった。境遇的にその機会がなかったというのもあるだろう。書庫に来てからは二千年以上引きこもり、数十年前からようやく普通の生活ができてはいたが、ユウカと同じで決まったルーチンを繰り返すだけだったからだ。
それがユウカやガゼと一緒ならという気にはなれてきたらしい。
そして一時間ほど歩いて、目的のキヨーの滝が見える場所までやってきた。
「わあ、キレイ……」
思わず呟いたユウカに、ガゼは「でしょ?でしょ?」と嬉しそうに笑いかける。この場所を選んだ自分が褒められているような気がしたからなのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる