80 / 205
転生編
なんだかよく分からないけどピンチかもしれません
しおりを挟む
人間であるユウカにとっては異様さしか感じられないその佇まいは、やはり恐怖を覚えさせるものだった。
とは言え、これは邪神としての力を発揮できないことをカハ=レルゼルブゥアなりに受け入れた結果なので、その見た目の異様さに反して実はものすごく落ち着いているのである。
クォ=ヨ=ムイが眠そうな気怠そうな雰囲気を発しているのと同じことなのだ。
カハ=レルゼルブゥアは炎を司るその性質故か、本来はものすごく気性が激しい邪神であった。ちょっとしたことで激高し、何もかもを炎熱で溶かし焼き払うような。それを抑えつけたらこうなってしまったという感じだろうか。
それでも、自分の力を発揮できるステージの中でなら本来の姿に戻り、岩石すら一瞬で蒸気になるほどの熱量を放ち惑星を丸ごと焼き尽くす程度の戦いはしてみせるのだが。
ちなみに、現在、ステージで戦っている二柱は、邪神の中でも特に破壊を司る存在なので、どちらかと言えば<破壊神>と称した方がいいかも知れない。
それに対してクォ=ヨ=ムイやカハ=レルゼルブゥアは再生や創造も担っているので、若干、性質が違うのだった。
「ヘルメットを思わせる頭をしている方がンプ=レデォタ=ゲルナヌゥグェレ。アルマジロみたいなのがクヌゥデショルゥテヘェコァね。
邪神としてはどっちもかなり若い方かな、若輩クラスって感じ?」
クォ=ヨ=ムイがそう説明してくれる。
一方、ユウカはと言えば、
「は……はぁ……」
と、辛うじて聞いてはいたものの、邪神にはそれなりに興味もあったものの、自分が思い描いていたものとあまりに違い過ぎて、正直なところ戸惑うしかできないでいたのだった。もちろん殺されたりしないのは良かったのだが、同時に気が抜けたと言うか。
『でも、こんなところに私がいていいのかな……』
ここでは年齢はさほど重視されないのでユウカがバーにいても追い出されたりはしないものの、ユウカ自身が酒には興味が無かったこともありこの場にいる意味がなく、
「お邪魔しました」
と頭を下げて店を出た。
階段を上がり地上に出たところで、
「ふう…」
などと胸を撫で下ろしながら大きく深呼吸すると、ようやく人心地つけた気がした。
自分が想像していたものとは違ってもやはり邪神が集う場所というのは人間には精神的な負担が大きかったようだ。ある意味ではSAN値が下がったかも知れない。だが正気は保っている。
『あ…買い物行かなきゃ』
気を取り直し、改めて当初の目的であるストレージを買うために歩き出そうとした時、
「……え?」
と、彼女は思わず振り向いていた。何かの気配を感じてしまったからだ。
「!?」
瞬間、彼女の背筋が凍りつく。その視線の先には、黒尽くめで長身長髪の、無機質な白い顔に赤い目をした姿が映っていたのだから。
とは言え、これは邪神としての力を発揮できないことをカハ=レルゼルブゥアなりに受け入れた結果なので、その見た目の異様さに反して実はものすごく落ち着いているのである。
クォ=ヨ=ムイが眠そうな気怠そうな雰囲気を発しているのと同じことなのだ。
カハ=レルゼルブゥアは炎を司るその性質故か、本来はものすごく気性が激しい邪神であった。ちょっとしたことで激高し、何もかもを炎熱で溶かし焼き払うような。それを抑えつけたらこうなってしまったという感じだろうか。
それでも、自分の力を発揮できるステージの中でなら本来の姿に戻り、岩石すら一瞬で蒸気になるほどの熱量を放ち惑星を丸ごと焼き尽くす程度の戦いはしてみせるのだが。
ちなみに、現在、ステージで戦っている二柱は、邪神の中でも特に破壊を司る存在なので、どちらかと言えば<破壊神>と称した方がいいかも知れない。
それに対してクォ=ヨ=ムイやカハ=レルゼルブゥアは再生や創造も担っているので、若干、性質が違うのだった。
「ヘルメットを思わせる頭をしている方がンプ=レデォタ=ゲルナヌゥグェレ。アルマジロみたいなのがクヌゥデショルゥテヘェコァね。
邪神としてはどっちもかなり若い方かな、若輩クラスって感じ?」
クォ=ヨ=ムイがそう説明してくれる。
一方、ユウカはと言えば、
「は……はぁ……」
と、辛うじて聞いてはいたものの、邪神にはそれなりに興味もあったものの、自分が思い描いていたものとあまりに違い過ぎて、正直なところ戸惑うしかできないでいたのだった。もちろん殺されたりしないのは良かったのだが、同時に気が抜けたと言うか。
『でも、こんなところに私がいていいのかな……』
ここでは年齢はさほど重視されないのでユウカがバーにいても追い出されたりはしないものの、ユウカ自身が酒には興味が無かったこともありこの場にいる意味がなく、
「お邪魔しました」
と頭を下げて店を出た。
階段を上がり地上に出たところで、
「ふう…」
などと胸を撫で下ろしながら大きく深呼吸すると、ようやく人心地つけた気がした。
自分が想像していたものとは違ってもやはり邪神が集う場所というのは人間には精神的な負担が大きかったようだ。ある意味ではSAN値が下がったかも知れない。だが正気は保っている。
『あ…買い物行かなきゃ』
気を取り直し、改めて当初の目的であるストレージを買うために歩き出そうとした時、
「……え?」
と、彼女は思わず振り向いていた。何かの気配を感じてしまったからだ。
「!?」
瞬間、彼女の背筋が凍りつく。その視線の先には、黒尽くめで長身長髪の、無機質な白い顔に赤い目をした姿が映っていたのだから。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる