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転生編

切ない話も当然あります

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このニシキオトカミカヌラ地区だけでもその広さは地球の表面積よりも大きく、そこにランダムで転送されるのだから、親子であってもすぐ近くに転送されるとは限らない。

しかも、ここと同じ環境でかつヒューマノイド型の人間達が暮らす地域は他にも多数あり、よほどの幸運でもない限り再会などできるものではなかった。

だが、極稀にそういう幸運に恵まれる者もいる。元々の惑星ほしで死に別れた者同士がここに転送され巡り合うということがあるのだ。

アイアンブルーム亭のネルアーキとニレアラフタスの二人がそうである。どうやら、強い因果律で結ばれた者同士はそういう傾向にあるらしい。逆に、同じようにここに転送されたとしても、どちらかが強く再会を拒んでいるとおよそ巡り合えるような状況は生まれないという傾向もあるようだった。

先の、娘を探す母親の場合、娘が果たしてここに転送されたかどうかも分からないし、もし転送されていたとしても自分を追い詰めて死に至らしめてしまった母親との再会を望んでいるかと言えばやはり厳しいと言わざるを得ず、そうなれば再会の可能性は限りなくゼロに近いと言えるだろう。

ここは決して現世での過ちを償うための場所ではない。あくまで本質は単なるデータベースでしかない。そのデータを基にほぼ現実と区別がつかない高度なシミュレーションが行われているだけの世界でしかないというのが実体なのだ。だからそういう苦しみも存在する。それをどう捉えるかは、個々人次第ということか。

娘を探して旅に出た母親がまだ娘を探し続けているのか、それともどこかで踏ん切りをつけて腰を落ち着けて暮らしているのかは分からない。

とは言え、旅に出てからまだ十年そこそこらしいから、それで諦めがつく程度の想いなら二千年もメジェレナの面倒を見たりはしないだろうが。千年、二千年と娘を探して旅を続けるのかも知れない。それもまた、一つの生き方だった。

ユウカはまだ、そこまで思いを馳せることができるほどここのことを理解はしていない。メジェレナも具体的なことについては実感がないだろう。しかしアーシェスは違っていた。その母親のことを想い、一人そっと涙を拭った。

「アーシェスさん…?」

アーシェスの様子に気付いたユウカがそう声を掛けたが、彼女は、

「あ、ごめん、ちょっと昔のことを思い出してね。でも大丈夫だよ」

微笑わらう。

ちょうどその時、ユウカが洗濯物を乾燥させるために使っていた乾燥機が運転を終了した。それを取り出したユウカだったが、その後もメジェレナの洗濯が終わるまで三人で談笑することになったのだった。

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