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転生編
お仕事を長く続けるためには
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そんな風に戸惑うこともあったりしながらも、ユウカは自分に与えられた仕事をこなしていった。リルは慣れているのか鼻歌まじりでユウカと同じ作業していたが、それをタミネルに、
「作業に集中してください。ミスの素です」
と注意されたりもしていた。
しかし、
「は~い」
と応えたリルはさほど堪えた様子もなく、しばらくするとまた鼻歌を歌い始めたりする。
『また怒られるんじゃないかな…』
と緊張していたユウカも、しばらくして慣れてきて冷静にタミネルの様子を窺っているとなんとなく分かってきた気がした。
『そうか。タミネルさんはただ仕事でミスしないようにと注意を促してくれてるだけなんだ。でも、あまり上手に人と関われないからきつい感じの言い方になるんだ…』
そうやって、怯えながら他人の顔色を窺わなくても大丈夫ということをユウカは肌で学び始めていた。それが彼女の心に余裕を生み、リラックスして仕事ができるようになっていく。
だからつい、
「♪~」
と、リルと同じように鼻歌が漏れてしまっていた自分に気付き、ハッとなってタミネルの方を見た。注意されると思ってしまったからだ。
だが、非常に小さな鼻歌で聞こえなかったのか、タミネルは自分の作業に集中していただけだった。
『よかった……』
ほっと胸を撫で下ろしていると、何かの気配に気付いてそちらの方に何気なく視線を向けてしまった。するとそこには、親指をぐっと立てたリルの姿があった。
「リラックスしていこうぜ」
などと、辛うじてユウカに聞こえる程度の小さな声を掛けてきてくれた。それを見てユウカも、なんだか励まされたような気がしていた。
だが実はこの時、タミネルにはユウカの鼻歌が聞こえていたのだった。だが彼女はあえて聞こえないふりをしてくれたのだ。
『彼女自身が自ら気付いて改めてくれるならそれに越したことはありませんからね……』
と考えたからだ。冷淡で堅物にも見えるタミネルだが、その程度の気遣いはできる人物でもあった。
人にはいろんな一面がある。そんな当たり前のことが、ここではちゃんと当たり前として認識されていた。一見不真面目そうに見えるリルも、これで実はけっこう生真面目なのだ。だからこそ、ユウカが仕事しやすいようにリラックスできるように気を遣ってくれてるのである。
やるべきことはきっちりとこなし、しかし無駄に力は入れ過ぎずリラックスして仕事をこなす。長く仕事を続けるコツがそこにはあった。まさにそれが体現されていたと言えるだろう。
昼、順番に休憩を取る為、ユウカがまず休憩に入るように指示された。バックヤードのさらに奥、従業員用のロッカーが並ぶ部屋の隣が休憩室だった。そこにハルマがいた。
「ご苦労様です」
そう声を掛られて恐縮しながら、ユウカは部屋に入ったのだった。
「作業に集中してください。ミスの素です」
と注意されたりもしていた。
しかし、
「は~い」
と応えたリルはさほど堪えた様子もなく、しばらくするとまた鼻歌を歌い始めたりする。
『また怒られるんじゃないかな…』
と緊張していたユウカも、しばらくして慣れてきて冷静にタミネルの様子を窺っているとなんとなく分かってきた気がした。
『そうか。タミネルさんはただ仕事でミスしないようにと注意を促してくれてるだけなんだ。でも、あまり上手に人と関われないからきつい感じの言い方になるんだ…』
そうやって、怯えながら他人の顔色を窺わなくても大丈夫ということをユウカは肌で学び始めていた。それが彼女の心に余裕を生み、リラックスして仕事ができるようになっていく。
だからつい、
「♪~」
と、リルと同じように鼻歌が漏れてしまっていた自分に気付き、ハッとなってタミネルの方を見た。注意されると思ってしまったからだ。
だが、非常に小さな鼻歌で聞こえなかったのか、タミネルは自分の作業に集中していただけだった。
『よかった……』
ほっと胸を撫で下ろしていると、何かの気配に気付いてそちらの方に何気なく視線を向けてしまった。するとそこには、親指をぐっと立てたリルの姿があった。
「リラックスしていこうぜ」
などと、辛うじてユウカに聞こえる程度の小さな声を掛けてきてくれた。それを見てユウカも、なんだか励まされたような気がしていた。
だが実はこの時、タミネルにはユウカの鼻歌が聞こえていたのだった。だが彼女はあえて聞こえないふりをしてくれたのだ。
『彼女自身が自ら気付いて改めてくれるならそれに越したことはありませんからね……』
と考えたからだ。冷淡で堅物にも見えるタミネルだが、その程度の気遣いはできる人物でもあった。
人にはいろんな一面がある。そんな当たり前のことが、ここではちゃんと当たり前として認識されていた。一見不真面目そうに見えるリルも、これで実はけっこう生真面目なのだ。だからこそ、ユウカが仕事しやすいようにリラックスできるように気を遣ってくれてるのである。
やるべきことはきっちりとこなし、しかし無駄に力は入れ過ぎずリラックスして仕事をこなす。長く仕事を続けるコツがそこにはあった。まさにそれが体現されていたと言えるだろう。
昼、順番に休憩を取る為、ユウカがまず休憩に入るように指示された。バックヤードのさらに奥、従業員用のロッカーが並ぶ部屋の隣が休憩室だった。そこにハルマがいた。
「ご苦労様です」
そう声を掛られて恐縮しながら、ユウカは部屋に入ったのだった。
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