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転生編
続けてシェルミ555647、副業、ランジェリーショップ経営
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丁寧で優しそうなその物腰に安心していると、
「どうぞ、お入りください」
シェルミにそう言われて、
「…え?」
と少し戸惑いつつユウカはアーシェスを見た。すると彼女は、
「大丈夫よ。遠慮なくどうぞ」
と微笑みかける。
『アーシェスさんがそう言うんだったら大丈夫かな……』
そう思い、
「おじゃまします……」
恐縮しながらも部屋に入った。
「…わあ……!」
思わず声を上げてしまったそこは、まるでランジェリーショップのように様々な女性用下着が三畳ほどのスペースに所狭しと並べられていた。いや、『ランジェリーショップのような』ではなく、実際にランジェリーショップなのだ。
「私は、居住スペースを殆ど必要としません。また、新しく来られた方がまず困るのが替えの下着類の確保ということが分かりましたので、このように部屋の一部をランジェリーショップとさせていただいています。他の部屋の方にもご愛顧いただいています。新しく来られた方には五日分のランジェリーのセットを無料で提供させていただいております」
と、普通のランジェリーショップの店員のように丁寧に案内してくれた。改めて見まわしてみると、非常にコンパクトではあるが日常使いの下着類については十分な品揃えだった。子供用のショーツどころかおむつカバーまであった。
それでいて当のシェルミは機械生命体であり衣服を必要としておらず、かつ生々しさが感じられないからか、この一種異様な空間にも、ユウカはそれほど戸惑わずに済んでいた。もしシェルミが彼女と同じような肉の体を持った有機生命体であったら、何となく引いてしまっていたかも知れない。自分の部屋にランジェリーショップを作るというその発想に、何か別の意図を感じてしまった可能性があったのだ。しかしシェルミからはそういうものが感じられなかった。
おかげで、思った以上に自然に、生理用ショーツを五枚、スポーツブラを五枚、選ぶことができた。実はそろそろ来そうだったのを思い出して、せっかくだからということでそうしたのだった。
シェルミはそれを見て、
「では、こちらも私からのギフトとしてお付けいたします」
と、生理用ナプキンを棚から取り出し、一緒に袋に入れてくれた。
「ありがとうございます」
頭を下げつつ、ユウカは思っていた。
『なんか今までお店でナプキンとか買うのも恥ずかしかったのに、不思議。シェルミさんのところだとそんな恥ずかしくない』
それはシェルミが、人間の生理現象を至極当然のものとして受け入れているのが伝わったからかも知れない。
ユウカが生きていた頃には、何故かそれが後ろめたい、やましいことのように受け取る風潮が根強く残っていたのを感じ取っていたのだろう。生身の人間ならあって何ら不思議でも不自然でも不必要でもないことを、まるで忌まわしいことのように捉える悪習が残っていたからだと思われたのだった。
最後に、見た目はともかく一番の常識人で丁寧なシェルミを紹介してもらえたおかげで、ユウカは自分が落ち着くのを感じていた。
『何とかやっていけそうかな…』
とも思った。
そんな彼女を、アーシェスも穏やかな笑顔で見守ってくれていた。
「じゃあ取り敢えず一度部屋に戻ろうか」
そう言われて、マニにもらったサンダルとシェルミにもらった下着を手に、二人で八号室へと戻ったのだった。
「どうぞ、お入りください」
シェルミにそう言われて、
「…え?」
と少し戸惑いつつユウカはアーシェスを見た。すると彼女は、
「大丈夫よ。遠慮なくどうぞ」
と微笑みかける。
『アーシェスさんがそう言うんだったら大丈夫かな……』
そう思い、
「おじゃまします……」
恐縮しながらも部屋に入った。
「…わあ……!」
思わず声を上げてしまったそこは、まるでランジェリーショップのように様々な女性用下着が三畳ほどのスペースに所狭しと並べられていた。いや、『ランジェリーショップのような』ではなく、実際にランジェリーショップなのだ。
「私は、居住スペースを殆ど必要としません。また、新しく来られた方がまず困るのが替えの下着類の確保ということが分かりましたので、このように部屋の一部をランジェリーショップとさせていただいています。他の部屋の方にもご愛顧いただいています。新しく来られた方には五日分のランジェリーのセットを無料で提供させていただいております」
と、普通のランジェリーショップの店員のように丁寧に案内してくれた。改めて見まわしてみると、非常にコンパクトではあるが日常使いの下着類については十分な品揃えだった。子供用のショーツどころかおむつカバーまであった。
それでいて当のシェルミは機械生命体であり衣服を必要としておらず、かつ生々しさが感じられないからか、この一種異様な空間にも、ユウカはそれほど戸惑わずに済んでいた。もしシェルミが彼女と同じような肉の体を持った有機生命体であったら、何となく引いてしまっていたかも知れない。自分の部屋にランジェリーショップを作るというその発想に、何か別の意図を感じてしまった可能性があったのだ。しかしシェルミからはそういうものが感じられなかった。
おかげで、思った以上に自然に、生理用ショーツを五枚、スポーツブラを五枚、選ぶことができた。実はそろそろ来そうだったのを思い出して、せっかくだからということでそうしたのだった。
シェルミはそれを見て、
「では、こちらも私からのギフトとしてお付けいたします」
と、生理用ナプキンを棚から取り出し、一緒に袋に入れてくれた。
「ありがとうございます」
頭を下げつつ、ユウカは思っていた。
『なんか今までお店でナプキンとか買うのも恥ずかしかったのに、不思議。シェルミさんのところだとそんな恥ずかしくない』
それはシェルミが、人間の生理現象を至極当然のものとして受け入れているのが伝わったからかも知れない。
ユウカが生きていた頃には、何故かそれが後ろめたい、やましいことのように受け取る風潮が根強く残っていたのを感じ取っていたのだろう。生身の人間ならあって何ら不思議でも不自然でも不必要でもないことを、まるで忌まわしいことのように捉える悪習が残っていたからだと思われたのだった。
最後に、見た目はともかく一番の常識人で丁寧なシェルミを紹介してもらえたおかげで、ユウカは自分が落ち着くのを感じていた。
『何とかやっていけそうかな…』
とも思った。
そんな彼女を、アーシェスも穏やかな笑顔で見守ってくれていた。
「じゃあ取り敢えず一度部屋に戻ろうか」
そう言われて、マニにもらったサンダルとシェルミにもらった下着を手に、二人で八号室へと戻ったのだった。
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