上 下
10 / 205
転生編

普段着ゲット。しかも大量

しおりを挟む
『同棲中……? 浮気……? え? ってことは、そういうこと、だよね…?』

今彼女の目の前で行われているやり取りは、ウブな女子中学生のユウカには少々刺激の強い言葉だった。

『しかも女性同士で? キマシってこと……?』

そういうことがあるというのは知識としては知ってたしアニメとかならそれこそよくあることなのだろうが、実際に目の前にすると戸惑わずにはいられなかった。

『私、今、キリオっていう人にモーションかけられたんだよね? だからヌラッカさんっていう人が『浮気、ダメ!』って怒ったんだよね……?』

頭の中がグルグルと回ってしまう感覚。けれど、ただの冗談とも思えなかった。

これは別の意味で不安にならざるを得なかった。

それでもキリオは、

「じゃあ、お近付きのしるしに、この服をあげるよ。サイズもそんなに違わないと思うから上手くアレンジしたら着られるんじゃないかな。ヌラッカにプレゼントしたものだけど、彼女、服が嫌いでほとんど着てくれないから。大丈夫。これは袖も通してないやつだから」

と、抱えるのも少し大変なくらいに気前よく服をくれた。

『こんなたくさん……?』

戸惑うユウカにキリオはウインクしながら、

「ボクはモデルだから服は安く手に入るんだ。まだたくさんあるよ。もらってくれた方が助かる」

『ああ、そういうことなんだ……!』

そう言われれば気が楽になる。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

何度も頭を下げて、二人に見送られながら一端、自分の部屋へと戻った。さすがにこれを持ったままで次の部屋には行けない。

『可愛い……そっか、あのヌラッカさんって人が着る為のなんだから可愛くて当然か。

私にはちょっと可愛すぎるかもだけど、着れなくはないかな。サイズ的にも』

備え付けのクローゼットは決して大きなものではなかったがとにかくそこに服を掛けていく。

ふと見ると、電源を入れた冷蔵庫が微かに音を立てている。

『あ……部屋って感じする……』

クローゼットに掛けられた服と合わせ、少しずつ人が住んでいる部屋になっていく感じがした。

「まあまあ順調かな。このアパートだけじゃ十分には揃わなくても、近所も回ればたぶん一通り揃うよ。もし揃わなくても無料のリサイクル品が指定の場所に行けば手に入るから大丈夫。とにかく、生活基盤を整えるまではみんなが助けてくれるから。そこから先は自分次第だけどね。みんなと関わっていくもよし、昔の私やメジェレナ、今のポルネリッカみたいに自分の世界に閉じこもるもよし。それはあなたの自由」

アーシェスは穏やかにそう言ってくれた。その言葉に、

『なんか……少しホッとした気がする……』

と、ユウカも素直に感じられるようになってきた。

「じゃ、次は二号室だね」

「あ、はい…!」

アーシェスに促され、ユウカは再び一階へと降りたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

世界で一番ママが好き! パパは二番目!

京衛武百十
ライト文芸
ママは、私が小学校に上がる前に亡くなった。ガンだった。 当時の私はまだそれがよく分かってなかったと思う。ひどく泣いたり寂しがった覚えはない。 だけど、それ以降、治らないものがある。 一つはおねしょ。 もう一つは、夜、一人でいられないこと。お風呂も一人で入れない。 でも、今はおおむね幸せかな。 だって、お父さんがいてくれるから!。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

狐の声劇台本置場

小狐門(ごんぎつねもん)
ファンタジー
 小狐門の書いた台本一覧となります。もし良ければ演じてみてね!( *´꒳`* )  非商用であれば基本的に連絡は不要となります。しかし、配信の際に演じる場合に教えて頂ければ、ニッコニコで聞きに行きます!あと、出来れば『台本タイトルと作者名』を記入していただければ幸いです。

追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~

まいめろ
ファンタジー
錬金術師のウィンリー・トレートは宮廷錬金術師として仕えていたが、王子の婚約者が錬金術師として大成したので、必要ないとして解雇されてしまった。孤児出身であるウィンリーとしては悲しい結末である。 しかし、隣国の王太子殿下によりウィンリーは救済されることになる。以前からウィンリーの実力を知っていた 王太子殿下の計らいで隣国へと招かれ、彼女はその能力を存分に振るうのだった。 そして、その成果はやがて王太子殿下との婚約話にまで発展することに。 さて、ウィンリーを解雇した王国はどうなったかというと……彼女の抜けた穴はとても補填出来ていなかった。 だからといって、戻って来てくれと言われてももう遅い……覆水盆にかえらず。

不思議森の妖精ご飯

音爽(ネソウ)
ファンタジー
名前を忘れた妖精は森の中で隠れて暮らしている。 奇妙な材料で作る妖精のご飯はとても美味しい。 花蜜パンケーキにお豆のコロッケ、タンポポのお茶。 けれども一緒に食べてくれる仲間がいない。 時々訪ねてくるのは虫や森の獣ばかり。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...